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【独自取材】スクロール、茨城・つくばみらいの最先端物流センター「バーチャル見学」にVR採用

【独自取材】スクロール、茨城・つくばみらいの最先端物流センター「バーチャル見学」にVR採用

コロナ禍でも対応可能に、従業員の成長・技術獲得支援への活用も

アパレルや雑貨などの通信販売とEC・通販事業者向けソリューション事業を手掛けるスクロールは新たな試みとして、2020年5月に茨城県つくばみらい市で稼働を始めた同社の最新物流施設「スクロールロジスティクスセンターみらい(SLCみらい)」の見学にVR(仮想現実)を採用した。

同社のソリューション事業は外部のEC・通販事業者の物流代行業務を受託している。新型コロナウイルスの感染拡大が続いている現状を踏まえ、サービス利用を検討している企業が現地を訪れなくても物流施設の概要を画像でつかむことができるよう配慮した。

スクロールはVRを用いることで、一般的な写真や動画より施設の特徴や物流代行業務の内容などをよりきめ細かく伝えられるため、見学者に理解してもらいやすくなり、商談の進行も早いと営業面のメリットを説明。他の物流施設への採用を検討しているほか、物流以外のサービス提案にもVRを生かせると見込む。

さらに、VR活用のノウハウを蓄積し、物流施設で働く同社従業員の教育・研修にも投入、成長や技術獲得に生かしていくことを念頭に置いている。


「SLCみらい」の全景(スクロール提供・クリックで拡大)

「屋根が大きく雨でも荷物が濡れない」などポイントでコメント表示

SLCみらいはスクロールの関東方面初の物流センターで、地上5階建て、延べ床面積は約3万平方メートル。約60億円を投資した。

保管効率を最大限高めたストックエリア、配送のリードタイムを最短にするための当日入出荷用クロスドックエリアなどを設置。同社が新たな機軸として打ち出している、マーケティングやBPO(ビジネスプロセスの外部委託)、商品決済など物流の周辺機能も融合し包括的にサービス提供して付加価値を高めた「次世代CRM物流」を実現する象徴的センターと位置付けている。

VRはパソコンやスマートフォンから視聴可能。施設内の1階から5階の各フロアで倉庫エリアなどをくまなくカバーしており、まるで自分が歩きまわっているかのような感覚で画像を360度にわたって見ることができる。

同時に「1Fの有効天井高は梁下6・4メートル」「最大12台が接岸できる大型バース。屋根は11メートルと大きなサイズ。雨の日でも商品が濡れる心配がありません」など、ポイントごとにコメントがポップアップで表示される。より深く施設の特徴を理解できるよう配慮しており、通用口から従業員がどのようにして施設内を通るかといったところまで紹介する念の入れようだ。


VRによるセンター内の映像(スクロールウェブサイトより引用・クリックで拡大)

スクロールがVR活用に着目した契機は、同社が本拠を置く静岡県で19年7月、先進的な技術やサービスを持つスタートアップ企業と同県内の企業をマッチングすることを目的に、県や静岡銀行などが初めて共同開催したイベント「TECH BEAT Shizuoka(テックビート静岡)」だ。その場で研修・教育に使えそうな技術がないか探していたスクロールが出会ったのが、クラウドベースでVRの動画を編集・制作可能なソフトを提供しているスペースリー(東京都渋谷区渋谷)だった。

スクロールの山崎正之取締役は「(人材育成などの)事業の課題をどうすれば解決できるかと考えていた時に、たまたまスペースリーさんのプレゼンテーションを見て、これなら使えるとひらめいた」と振り返る。

スクロールの物流代行業務は個々のEC・通販事業者のニーズに応じてコスト削減や即日出荷など細かく対応する「おもてなし物流」を全面に打ち出している。それだけに、ギフトラッピングなど従業員の手作業が必要とされる場面も多々ある。

山崎取締役らは新たに採用された従業員が「おもてなし物流」の真意を迅速に理解し、全体のサービス品質を維持する上で臨場感あふれる体験が可能なVRシステムは経験のない新人や中途入社の社員への教育に有効活用できる可能性があると感じたという。現在はまず新センターの営業という側面でVRの力を大きく発揮できている格好だ。

「SLCみらい」のバーチャル見学体験はコチラから(グループのスクロール360 専用ウェブサイト)

同社が研修・教育をかねて重視しているのは、19年に物流施設の貴重な労働力としてベトナムから技能実習生の受け入れを始めたことも大きい。海外からの人材受け入れは、当然ながら言葉の問題が大きなハードルとなる。スペースリーではファミリーレストランの店員研修用にVRを提供している事例があると聞き、スクロールでもVRを使えば、通訳を確保した上で担当者が付きっきりでフォローするという従来のやり方を大きく変えられるのではないかと思い至ったという。作業の流れをVRの動画で確認することにより、臨場感あふれる体験が可能になる点も重視した。

山崎取締役は「自分で考えながらどうするのが正しいのか知識を身に付けられる。作業を属人化せず全体のレベルを上げていくことが可能になるのではないか。働きやすい環境の整備にもつながる」との見方を示す。実際の現場で行っているオペレーションの内容をVRで紹介することで、スタッフが短期間で効果的に必要な技能を習得できるようにすることを思い描きながら、VR活用の検討を進めている。

マッチングイベントが物流領域への新技術導入に貢献

マッチングイベントに携わっている静岡銀行の地方創生部地方創生グループ で推進役を務めている井出雄大氏は「偶発的な出会いが、その技術を使うことを想定していなかった分野で実は使えるという化学反応を起こし、新たなビジネスにつながっていった。こうしたことが全産業で起こってほしい」とスクロールの事例を歓迎する。

19年7月開催のテックビートでは、スクロールとスペースリーのケースをはじめ、会期の2日間で440の商談が生まれ、成約に至ったのが25件。スクロールの案件以外にも、県内の新聞販売店の配達ルート適正化やECサイト構築サポートといった、物流に関係しそうなマッチングが実現したという。井出氏は「静岡は製造業が盛んで物流を含めて多彩な産業が動いている。物流に関しても、新しいビジネスにつながるような先進的事例を生み出すお手伝いをしていきたい」と意欲を示している。

テックビートの開催支援をはじめ、地方創生を実現するためのプラットフォームを手掛けるテイラーワークス(東京都渋谷区渋谷)の難波弘匡社長CEO(最高経営責任者)はスクロールのマッチング成立に貢献できたことに関し「コミュニケーションを取ることを支えるのがプラットフォームの持つ存在意義。コロナで厳しい状況の中でも、物流の領域を含め、ビジネスの活路を作り上げられるようお手伝いさせていただきたい」と力説。井出氏らとも連携しながら、オンラインを活用して新技術活用に継続して貢献していくことを誓っている。

(藤原秀行)

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