【独自取材】大和ハウス工業、新たにシンガポールで物流施設開発へ

【独自取材】大和ハウス工業、新たにシンガポールで物流施設開発へ

海外展開加速、米中両国も進出を準備

 大和ハウス工業が物流施設事業で海外展開を加速している。既にベトナム、インドネシア、タイ、マレーシアのアジア4カ国でプロジェクトを展開しているほか、新たにシンガポールでも開発を計画。さらに巨大市場を抱える米国と中国へ進出する準備を進めている。


ベトナム・ホーチミン近郊で新たに建設をスタートしたマルチテナント型物流施設の完成イメージ(大和ハウス工業提供)

 日本国内ではeコマース市場の成長などを追い風にして都市部、地方エリアの両方で積極的に物流施設を建設。同社独自の開発案件「Dプロジェクト」の累計では全国181カ所、総延べ床面積約558万平方メートルに上る(今年3月末時点、施工中のものを含む)。

 日本の製造業の海外展開が続き、グローバルサプライチェーンの高機能化・効率化が常に課題となっているほか、官民による後押しで農産品の輸出入がさらに拡大すると予想されることなどから、同社は海外でも日本水準の高品質な物流施設は需要が確実に見込めると判断。

 冷凍・冷蔵設備を備えた施設にも注力していく構えだ。日系企業に加え、現地企業やグローバル企業からの需要獲得に取り組んでいく方針だ。

 同社で物流施設開発の陣頭指揮を執る浦川竜哉取締役常務執行役員(建築事業推進部長)は「日本のものづくりの姿が大きく変わり、海外生産比率は年々高まっている。日本の物流と海外の生産・物流をワンストップでつなげる必要がある。冷凍・冷蔵設備に関してもわれわれは国内で細かな温度管理のノウハウを積み重ねており、海外でもお客さまのコールドチェーン整備に貢献していきたい」と強調している。

需要好調で中国系企業からの引き合いも

 同社は現行の第5次中期経営計画で、将来の成長に向けた布石を打つため、米国やオーストラリア、ASEANを中心に海外展開を加速させる方向性を 明記。17年度に連結売上高の約2割を占める物流施設などの「事業施設」もその一環として、経済成長が続くアジアでの展開に本腰を入れている。

 ベトナムは北部のハイフォンと南部のホーチミンでそれぞれ工業団地を手掛けており、その関連でレンタル倉庫なども提供。インドネシアも同じくジャカルタの大規模な工業団地でレンタル倉庫の開発・運営を担っており、中国系企業からの引き合いもあった。

 一方、タイは現地企業と組み、物流施設単独での開発を推進しており、同国最大の基幹港、レムチャバン港の近くに立地。この3カ国に関しては「需要が好調。さらに施設を増やしていくことを検討している」(浦川氏)という。

 今年に入って、マレーシアのクアラルンプール郊外でマルチテナント型の施設開発に本格着手した。平屋建てで賃貸面積は約1万6500平方メートル。19年11月の完成を予定している。既に冷凍・冷蔵機能を備えた半分強のスペースで日本の食品系企業と賃貸借契約を締結。クアラルンプール国際空港や主要港に近い地の利を十分に生かそうとしている。

ベトナムで同社初のマルチテナント型施設

 併せて、進出済みのベトナムでも今年10月、ホーチミン郊外の工業団地内で大和ハウスとしては同国初となるマルチテナント型施設2棟の開発を本格的にスタートした。総賃貸面積は6万2000平方メートルを計画。最大12テナントの入居に対応可能とし、ベトナム国内外の物流企業などに幅広く利用を売り込む。

 4カ国の次に照準を合わせたシンガポールは、マレーシアと同じ日本の食品系企業向けに物流施設を建てる予定だ。19年前半にもプロジェクトを本格的にスタートさせる見込みで、冷凍・冷蔵設備をそろえることを考えているもようだ。

 米国、中国に関しては19年の後半にも事業化のめどを付け、20年から本格的に展開することを想定している。両国とも日系企業に限らず、現地企業やグローバル企業へも積極的に売り込んでいく方向だ。米国は産業の需要が見込める東海岸、西海岸の双方を開発候補と捉えている。

 浦川氏は「日本の人口がこれからも減少の一途をたどると予測されている中、今の形の物流施設が将来もずっと必要とされ続ける保証はない。きっちりと腰を据えて国内外で生き残っていける物流施設を今から造り込んでいくことが重要だ」との問題意識を明らかにする。グループで保有する物流施設の資産規模の1割程度は海外で展開することを視野に入れている。

(藤原秀行)

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