【独自取材】シンガポールの不動産大手キャピタランド、4大都市圏で物流施設開発に意欲

【独自取材】シンガポールの不動産大手キャピタランド、4大都市圏で物流施設開発に意欲

テナント企業にグローバル事業展開の機会提供、差別化図る

シンガポールの不動産大手キャピタランドはこのほど、ロジビズ・オンラインの書面取材に応じた。

同社は昨年12月、三井物産都市開発と協業して日本における物流施設開発に参入したと発表したことに関連し、今後もeコマース利用拡大などで先進的な物流施設のニーズが見込めると指摘。第1号案件の東京圏に続き、今後も4大都市圏でプロジェクトを展開していくことに強い意欲を見せた。

テナント候補の企業に対しては、同社が海外で開発してきた物流施設などを通じて構築している広範なネットワークを生かし、グローバルに事業を展開していく機会を提供することで差別化を図る意向を示した。


キャピタランドのロゴマーク(同社提供)

グローバルで100近い案件、低温物流の需要にも対応

キャピタランドは日本と韓国で20年近くにわたって不動産事業を展開。2020年にはポートフォリオ再構築の一環として、日本のショッピングモール3件と韓国のオフィスビル1件を計4億4870万シンガポールドル(約360億円)で売却した。日本の運用資産はキャピタランドの完全子会社で宿泊事業を手掛けているアスコット社(The Ascott Limited)の物件を含めると38億シンガポールドル(約3000億円)に上る。

21年6月には福岡市でNTT都市開発が手掛けている複合商業施設「福岡・今泉公園前プロジェクト」内にアスコット社が運営する国内初のコリビングホテル(共有キッチンやコワーキングスペースなどを充実させ、ゲスト同士が交流できることをコンセプトにしている)「lyf Tenjin Fukuoka (ライフ天神福岡)」がオープンする予定。アグレッシブな不動産投資の姿勢が目立つ。

キャピタランドは物流施設に関し、15年以上の実績を持ち、グループを通じてシンガポールや中国、オーストラリア、インド、英国などで計100近くの案件を展開していると説明。最先端の温度管理設備を備えて低温物流の需要に対応したり、太陽光発電設備を取り入れたりと多様な取り組みを進めていることをアピールした。

さらに、「倉庫や配送センター、フルフィルメントセンターなどさまざまな要求に応える施設をそろえ、アマゾンやDHL、中国のファーウェイなどの多国籍企業を含む多くの顧客に利用されている」と実績を強調した。

「ロジスティクスセクターの成長勢いは続く」と展望

日本の第1号案件は既に発表した通り、東京都心に近く国道16号線へのアクセスに優れた立地で地上4階建て、延べ床面積約2万4000平方メートルの近代的な物流施設を開発、22年第4四半期(10~12月)に完成すると言及。

その後の展開に関しては、具体的な投資額などには言及していないが「日本のビジネスを熟知する三井物産都市開発との協業によるチャンスを生かし、東京や大阪、名古屋、福岡などの主要都市で物流施設のポートフォリオを構築していく。加えて、日本では他の商業用不動産(オフィス、ホテル)や住宅を中心にポートフォリオの拡大を図る」と方針を解説。積極的に開発していく姿勢をうかがわせた。

新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、物流施設市場をどのように展望するか聞いたのに対し「日本での物流施設投資への参入は、キャピタランドに大きなビジネスチャンスをもたらすと考えている。コロナ禍がeコマースの成長を加速させ、ロジスティクスセクターは大きな恩恵を受けている。首都圏の物流施設の空室率は過去最低の0・4%で、今後もより一層オンライン取引の利用は増加することが予想され、ロジスティクスセクターの成長の勢いは続くものとみている」と前向きな見方を表明した。

(藤原秀行)

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