注目集まる福岡圏の賃貸物流施設、「需給バランスは安定して推移」と予想

注目集まる福岡圏の賃貸物流施設、「需給バランスは安定して推移」と予想

CBREリポート、今後の成長に強い期待

シービーアールイー(CBRE)は4月6日、福岡圏の賃貸物流施設市場に関するリポートを公表した。

CBREリサーチの高橋和寿子シニアディレクターは、大規模なマルチテナント型物流施設(LMT、延べ床面積5000坪以上)の竣工が今後増えていくと分析。その背景に大手企業が広大な倉庫スペースを必要としていることを挙げ、賃料の急上昇もあって「デベロッパーが投資しやすい環境が整ってきた」と注目が集まっている状況を指摘した。

今後の展望についても、新規に完成する物件のプレリーシングが総じて順調に進んでいるのを踏まえ「需給バランスは安定して推移する」との見通しを示し、今後の市場成長持続に強い期待をのぞかせた。

「市場にはいまだ拡大余地あり」

リポートは、LMTのストック増加率が2015~20年が年平均で7%ほどなのに対し、21~23年は2倍以上の18%程度まで高まると解説。旺盛な需要を背景にLMTの空室率が17年第3四半期は15・2%だったのに対し、19年第2四半期から20年第4四半期まで0%が続いており、20年第3四半期に竣工した1棟も満室稼働だったと強調した。

21年に竣工する予定の3棟も満床となる見込みで、中小型の既存施設にもほぼまとまった空室が見られない状況にあるという。

併せて、全国に拠点を持つ大型企業からの需要が福岡などの地方都市で増えている点にも触れ、1社当たりの契約面積が大型化していると説明。14~19年は平均3800坪だったのが20~21年の内定状況では1万坪を上回る見通しになっていると紹介した。


需給バランスの推移(CBREリポートより引用)

その結果、賃料も上昇しており、LMTの実質賃料は福岡では近畿圏や中部圏の水準から2割程度下回っていたが、20年第4四半期時点での1坪当たり賃料は3150円と、19年第2四半期から10%近く上昇したことを報告。「足元ではテナントの内定ペースも早まっているため、数年先の開発計画も検討されるようになっている」と開発が促進されている状況を確認した。

今後について、福岡県の経済規模などを考慮し「LMT市場にはいまだ拡大余地があると考えられる」と展望。その理由として、福岡県の人口1000人当たりのLMT面積が首都圏の3分の1、県内総生産10億円当たりでは2分の1にとどまっていることなどを挙げた。


空室率と実質賃料指数の推移(CBREリポートより引用)

21年以降の開発計画に関し「大規模な土地造成を利用した新興立地へダイナミックに広がる。福岡ICを中心とする半径30キロメートル圏内に広く分布し、佐賀・鳥栖まで1つの商圏とするような広がりである」と言明。「既に複数の物件で内定が進んでいることから、今後の需給バランスが大きく崩れることはないだろう。これまで物流施設を借りることに抵抗があった地元企業の間でも、先進的物流施設の利用が定着していくと考えられる」と前向きな見方を示した。

空室率は22年第4四半期に3・7%で、20年第4四半期からわずかに上昇するものの依然低水準にとどまり、同期間の1坪当たり実質賃料指数は3380円から7・3%アップの3380円になると試算している。

(藤原秀行)

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