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【独自取材・物流施設デベロッパーのキーパーソンに聞く】オリックス不動産 投資開発事業本部 久保田勲副本部長(前編)

【独自取材・物流施設デベロッパーのキーパーソンに聞く】オリックス不動産 投資開発事業本部 久保田勲副本部長(前編)

「再生可能エネルギー利用などESG配慮の物件提供を重視」

オリックスグループで物流施設開発を担っているオリックス不動産の久保田勲投資開発事業本部副本部長はこのほど、ロジビズ・オンラインの単独インタビューに応じた。

久保田氏は、新型コロナウイルスの感染拡大下でも先進的な物流施設のニーズは引き続き期待できると指摘。順調に用地取得が進んでいるのに伴い、2021年度は例年より多い8カ所で物流施設開発を順次本格化させていくことを明らかにした。同時に、やみくもに数を追わず物流適地に絞り込んでプロジェクトを推進する従来姿勢に変化がないことも強調した。

併せて、不動産開発の領域でも持続可能な社会の実現に貢献するためにESG(環境・社会・企業統治)の視点が重視されている流れを踏まえ、環境負荷軽減などに配慮した物流施設を提供していく姿勢を示した。久保田氏の主な発言を2回に分けて紹介する。


久保田氏(オリックス提供)

好立地の案件は長期保有も選択肢に

――2020年の物流施設開発事業の総括と21年の方向性についてお聞かせください。
「20年に建築着工したのは、実は大阪府箕面市の1件のみでした。当社としては非常に開発用地の仕込みに注力した1年となりましたね。そして、比較的順調に仕込みができた20年度だったと考えています。21年度以降は着工が相次ぎ、われわれの仕事も忙しくなると思います」

――仕込みが順調だったとのことですが、20年に仕込むことができた物流施設用地は具体的にどれくらいですか。
「既に引き渡し済みなのが3カ所、近く引き渡しを受ける予定のものが他に5カ所ほどあります。これはいずれも3大都市圏です。当社としては過去に例のない大規模な物件も含まれる予定です」

――新型コロナウイルス感染拡大の影響はありましたか。
「開発に関しては、これまで当社が物流施設用地を仕込む際、相対取引の機会が圧倒的に多かったのですが、昨年に関してはコロナで各企業の業績が厳しかった影響も少しあるかもしれないのですが、全体的に大型の物件が動き始めてきたと感じています。用地の情報も多く出てくるようになっています。企業が収益を確保するため、以前よりも積極的に工場などを売却しようと動かれているのかもしれません」

――そうした状況では、御社をはじめCRE(企業保有不動産)の有効活用支援の経験が豊富なデベロッパーはチャンスと言えるのでは?
「世界的な低金利政策の影響でなかなか高リターンの投資先に恵まれず、投資資金が余っている状態が続く中で、現状は日本の不動産でも特に物流施設へ投資資金が国内外から集中してきている状況にあります。おっしゃる通り、確かに事業機会を広げるチャンスではありますが、開発を担うプレーヤーもここ数年、1本調子で増えてきました。竣工した物流施設はたくさん供給されていますが、その前段となる用地の仕込みに関しては、当社も20年はかなり順調には行きましたが、相応に工夫しないと昔よりは厳しくなってきているというのが実感です」

――用地の取得競争が激しいことに関し、今後はどのように対応していきますか。
「これまでは他の不動産アセットと同様、バリューチェーンで物流施設の開発用地を仕込み、テナント企業を確保して安定的なキャッシュフローを生み出せるようにしてから投資家に売却するという一連の流れを回転させていくことをビジネスモデルに据えてきました。物流施設に関しては、今後も場所の良いところであれば永続的にニーズがあると考えていますので、必ずしも満床稼働してから早期に売却を視野に入れるのではなく、長期で物件を保有していくことも考え始めています」

――物流施設は長期保有するものと売却を視野に入れるものの両建てで開発を進めていくということでしょうか。
「その通りです。物流の拠点として将来にわたり価値が劣化しない場所はあると思いますので、そうした場所に立地する物流施設は長期保有の選択肢もあるのではないでしょうか。そうした場所は賃料の下落リスクがないことがポイントになります。仮に空室率が上昇しても、賃料が引きずられて下落していくことがなく、ニーズが強くて供給量が限定的なエリアですね」

――御社としてもかなり大きな戦略の転換では?
「物流業界は今後さまざまな変革期を迎えていくと思っていますので、当社としても賃貸業にとどまらず、オリックスグループのネットワークを使い、デベロッパーとして物流業界全体の業務改善などに貢献していくことを考えなければなりません。単純な不動産賃貸業ではなく、物流業界に対して何か、オリックス不動産を含めたオリックスグループ全体として貢献していくことが必要であり、それは物流全体にとってのビジネスチャンスと捉えていかないといけないと思っています。長期保有することでテナント企業にさまざまな価値を長く提供していくということもあるでしょう」
「物流施設開発に関しては、最低でも年間で5件くらいは手掛けていきたいとの思いはありますが、競合が増えていますし、容易に用地を取得できる環境にはありません。これからも最初に開発物件数ありきではなく、個別の案件ごとに是々非々で判断していこうと考えています」

グループのマンション大手大京と積極的に用地の情報交換

――今後着工する案件について、新しい取り組みはありますか。
「物流施設としてやはり、アフターコロナ、ウィズコロナへの対応は不可欠になるでしょう。設備の除菌やタッチレスでの入室システムといったものを準備していかなければならないと考えています。さらに、ESGが重視すべきキーワードとして残ると思いますね。今後は施設で働かれる方々の安全・安心確保、再生可能エネルギーの利用といったESGへの配慮の度合いが利用する物流施設を選択する上で1つの明確な基準になってくるのではないでしょうか。そうした基準は積極的にクリアしていきたいですね」

――20年にオリックス本体で手掛けてきた物流施設など不動産事業部門の大半をオリックス不動産に移管、集約する再編が行われました。物流施設開発に変化はありましたか。
「それまで不動産開発はオリックスの中の不動産事業本部が担っていましたが、大京がオリックスグループに加わったこともあり、今後オリックス不動産が完全に総合デベロッパーとして一本立ちしていくというメッセージだと受け止めています。事業規模が大きくなってきましたから1つのセグメントとして、より専門性を磨いていこうということです」

――主力分野はマンションで物流施設とは異なりますが、不動産の経験が豊富な大京との連携は物流施設開発にとってもプラスでは?
「ご存じの通り、大京はマンションが主力ですから直接的にどうこうということはないですが、日本全国に多様なネットワークを構築しており、ソーシング、土地の情報量がものすごく多い。当社も日ごろから盛んに情報交換しており、物流施設の開発適地に関する情報も含まれています。そういう意味では間接的にしろ、とても事業のプラスにはなっている。この大京との連携はこれからも大切にしていきたいですね」

――開発は引き続き、ニーズが大きいマルチテナント型が軸になっていくのでしょうか。
「今までの実績を見ると、結果的にBTS型といいますか、シングルテナントでお使いいただくパターンがやや多いですね。これまではどちらかというと賃貸面積が1万~2万坪の中規模物件を多めに手掛けてきましたこともあり、1棟全体を1社でお使いいただけるケースが続いてきました。今は求められている物流施設の規模が大きくなってきているということもありますが、原則は引き続きマルチテナント型で対応していくのが基本になりますね」

(藤原秀行)

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