日立のKyotoRobotics買収「物流センター自動機器の遠隔監視や予兆保全も」

日立のKyotoRobotics買収「物流センター自動機器の遠隔監視や予兆保全も」

両社幹部オンライン会見概要(その2・完)

日立製作所は4月8日、産業用ロボット関連の技術開発を手掛けるスタートアップ企業のKyotoRobotics(滋賀県草津市)を同1日付で買収したと発表した。両社などが4月8日に開催したオンライン記者会見の後半部分の概要を掲載する。

大きな相乗効果が期待できる

【質疑応答】(物流に関係する部分のみ抜粋)

――KyotoRoboticsの技術を、日立製作所が進める「Lumada(ルマーダ)」構想にどう活用するのか。
KyotoRobotics・徐剛社長
「当社は昨年、JILS(日本ロジスティクスシステム協会)のロジスティクス大賞を受賞したが、その時にはロボットだけでなく、ロボットをピッキングすると同時に荷物のデータを生成し、WMS(倉庫管理システム)に蓄積されて、倉庫全体の最適化につながっているところが評価された。3次元ビジョンはピッキングのコントロールに使うが、それ以上にある種のビッグデータを作り出すものだというところもLumadaの要素にもつながる」

――具体的な買収額は。KyotoRoboticsは創業から20年だが、なぜ今のタイミングで買収提案を受けたのか。日立はジグソーパズルのピースとしてKyotoRoboticsがグループに入ったと説明があったが、ロボットアームを取り扱う企業を買収する考えはないのか。
日立製作所・森田和信 執行役常務 産業・流通ビジネスユニットCEO(最高経営責任者)
「買収金額は公表していない。直近の業績など、専門家の助言もいただきながら適切な価格で取得したと考えている。おっしゃる通り、アームはロボットの非常に重要なピースになっている。KyotoRoboticsも実はアームのところも結構、自社で研究されているので、まずはそこでしっかりシナジーを出して行くということで、現時点ではアームの部分の技術を持つ企業のM&Aは予定に入れていない」

KyotoRobotics・徐社長
「どちらかというと直近までは上場を目指してやってきた。今回、日立さんによる買収になったが、他にも選択肢はあったが、その中で日立さんにお願いしたのは、3つの大きな理由がある。1つ目は私たちを高く評価いただいた点。2つ目は非常に大きな事業を構想されて、一緒になることで大きな舞台に立つことができる、大きな相乗効果が期待できるという点。3つ目はやはり非常に真摯にご対応いただいたこと、そしてKyotoRoboticsの社員も大切にしていただける姿勢になる」


KyotoRoboticsの知能ロボットシステム(日立製作所プレスリリースより引用)

3年弱前に互いの話が始まった

――日立にとってベンチャー企業の買収はいつ以来か。いつごろ買収の構想が始まったのか。KyotoRoboticsが日立グループに入ることで、具体的に競合企業にはない何が手に入るのか。
日立・森田氏
「インダストリーセクターとしては初めてになる。グループ全体では、海外のマレーシアのAI(人工知能)系の企業を買収するなどの事例がある。近々では2~3件ほど」
「われわれとしては、やはりお客様に対して物を届けるというよりも、お客様全体にどうやって価値を届けるかという視点で事業を行っている。ロジスティクスでも、例えば物流センターのお客様は、部分的にロボットを導入するところが価値ではなく、センター全体の出荷のスループット、SKU(商品の最小管理単位)をどう上げるかといったところが、最終的な価値になる。そのためには1つ1つのミッシングピース、自動化技術、全体をつないで、かつそれを全体最適化しないといけない。フィジカルレイヤーで非常に有利な技術を組み合わせてやっていかないといけないということで、KyotoRobotics買収に踏み切った」
「徐さんとお会いして、お話を始めたのが3年弱くらい前。昨年はコロナで市場が停滞するなど、いろんなことがあったが、その間も緊密に連絡を取り合っていた」

――AIに5G(次世代高速通信)を組み合わせて作業現場ロボットを制御するなど、ロジスティクスのIoT(モノのインターネット)化で新たな展開を考えているか。
日立製作所・神田充啓ロジスティクス事業推進本部長
「具体的な構想はこれからだが、AIプラス5Gで遠隔操作とか、われわれもやはり、物流センターはどちらかというと、遠隔のところにあるので、またロボットが入ることで24時間動き続けるという特徴が出てくると思う。そういう技術を使って、まず遠隔の保守をやっていく、またデジタルデータを加工して、予兆保全につなげていくということで適応していきたい」

日立・森田氏
「おっしゃったように、5Gでいろいろ現場環境、デジタル環境が変わろうとしていると認識している。これまではオンプレミスで、現場にサーバーを立てて現場で操作して、現場で作業するというところから、今後はある程度、クラウド上からいろんな操作ができて、監視ができて、1つの製造現場だけでなく、例えば本社サイドから複数の拠点を一気に操作、監視できる世界が近いうちにたぶん来るのではないか。日立には200数十名の研究者がいるし、当然5Gの研究も進めているので、KyotoRoboticsの技術と日立の5Gネットワーク研究の技術を組み合わせることで将来の製造業、物流センターの絵がこれから具体化していくと考えている」

――今回の買収でLumadaとシナジー効果発揮の成果がある?
日立・森田氏
「現在、日立からはLumada事業で数字を発表させていただいているが、当然、KyotoRoboticsさんとデジタルでつながったところはLumada事業に貢献があると考えている」

(藤原秀行)

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