港湾運送事業者の4割が「人手不足」、10年後は6割超と予想

港湾運送事業者の4割が「人手不足」、10年後は6割超と予想

国交省調査、自動化・業務効率化や待遇改善が待ったなしの課題に

国土交通省は5月25日、全国の港湾運送事業者を対象に、労働者不足の実態に関する調査結果を公表した。

調査対象となった事業所の約4割が人手不足と回答し、港湾運送への影響が生じていると認めた割合も4割を超えるなど、労働力が足りていない状況が浮き彫りとなった。

事業者からは「若年層の港湾作業離れが深刻なため、機械化や環境改善が急務」「若者は収入より休日を好む傾向にあるため、休日の荷役の在り方も考える必要がある」といった指摘が出た。高齢化や若年層離れを改善するため、自動化や業務効率化、待遇改善が待ったなしの課題になっている。

「平日でも入港隻数が多いと船社の希望日に荷役ができない」が25%

調査は昨年12月から今年1月にかけ、全国1154の事業者(支店を含む)を対象に実施、48・5%の560から回答があった。

常用の港湾労働者の属性を見ると、45~49歳が最も多く15・8%、次いで40~44歳が14・2%、35~39歳と50~54歳が12・3%などとなった。20歳代は15・1%など、全体的に高齢化が目立った。

雇用状況(人手の過不足)を尋ねたところ、回答全体で「不足」と「やや不足」を合わせた割合が2019年度上半期(4~9月)は56%、19年度下半期(10~3月)は55%、20年度上半期は36%だった。20年度に入って新型コロナウイルスの感染拡大の影響で人手不足感が緩和されているものの、調査時点での20年度下期の見通しは40%、5年度(25年ごろ)は63%、10年後(30年ごろ)は63%と、この先人手不足が再び厳しくなるとの見方が大勢を占めていることが如実に示された。

特に不足感が強い職種としては「全体的に不足」が55%、「沿岸荷役作業員」が22%、船内荷役作業員が18%などとなっており、業種を問わず人手が足りないと感じている事業者が過半数に達した。

港湾労働者の不足が港湾運送に影響しているかどうかについては「影響あり」が41%、「影響なし」が45%で拮抗した。影響が生じている場合の具体的な内容としては(複数回答可、影響なしと答えた事業者も含めた割合)、「平日でも入港隻数が多いと船社の希望日に荷役ができない」が25%でトップ。「休日の荷役が困難」が23%、「夜間の荷役が困難」が20%、「二交替・三交替による連続荷役が困難」が18%などと続いた。

荷役能力確保のために取り組んでいることを自由記述で回答してもらったところ、「他の事業者との協業」「効率的な荷役機器の導入」「社内教育(免許・資格取得、多能工化など)」といった声が並んだ。

懸念や課題では「将来の業務量の見通しが不透明なため、採用が困難」「労働環境が厳しいことから、労働者の確保のためには待遇の改善が必要だが、取引先の料金値上げは逆に仕事を失う恐れがあり対応が難しい」「波動性の高い業種であるため、繁忙期に見合った人員を確保することはコスト面でリスクがある」「若者の港湾作業離れが深刻であり、機械化・環境改善が急務」などの声が聞かれた。

(藤原秀行)

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