欧州委員会に意見提出、「業界の脱炭素化技術への投資意欲阻害恐れ」などと主張
国土交通省は6月7日、欧州委員会が地球温暖化対策の一環として、域内の各国間で温室効果ガスの排出量を取引する「EU(欧州連合)域内排出量取引制度(EU-ETS)」を国際海運の領域に拡大することを検討しているのに対し、反対意見を提出したと発表した。同4日に国交省の大坪信一郎海事局長名義で、欧州委員会宛てに意見書を送付した。
国交省はその理由として、国際海運の気候変動対策は世界各国が集まるIMO(国際海事機関)を通じたグローバルな枠組みで実施すべきだと主張。EU-ETSのような独自の地域規制では、効果的な温室効果ガス削減につながらず、海運業界の脱炭素化技術への投資意欲を阻害する恐れがあることなどを挙げている。
EU-ETSは2005年1月に開始。発電所や石油精製プラント、製鉄所などエネルギーを大量に消費する施設1万超を対象に、温室効果ガスを排出可能な上限の「排出枠」を設定し、企業は省エネ推進や再生可能エネルギーの利用で実際の排出量を排出枠内に収めることを求められる。排出量が上限を超えた場合は、他の企業から余っている排出枠を購入して補う必要がある。一方、上限内に排出量を収められれば、余った分を他の企業に売却できる。
市場取引のメカニズムを活用することで、企業が排出量の上限を守りやすくするのが狙い。欧州委員会はEU-ETSによる規制対象を国際航空や海運などの領域へ広げ、地球温暖化対策を強化することを検討している。
一方、EU-ETSに関しては、日本の経済界などから「排出枠の設定が合理的でない」「取引がマネーゲームになっている」といった批判が多く出されている。国交省はこれまでにも、欧州委がEU-ETSの国際海運領域への拡大検討に際して意見募集したのに対し、2回反対を表明している。
(藤原秀行)