空解がeVTOLを独自開発、早期の量産・実用化目指す
ドローン開発などを手掛ける空解(くうかい、東京都町田市)は7月17日、独自開発のeVTOL(電動垂直離発着型機)固定翼ドローン「FUSION(フュージョン)」による災害時の救援物資輸送を想定した実証実験をメディアに公開した。
ドローンは同日午前10時ごろ、千葉県銚子市の学校給食センターを離陸した後、操縦者らの目が届かない目視外の自動飛行で利根川上空を飛び、河川敷にあるゴールの茨城県河内町の研究施設「ドローンフィールドKAWACHI」へ午前11時前に無事着陸した。飛行時間は1時間程度だった。飛行ルートはトータルで約62キロメートルと、国内初の長距離に達した。
ドローンにはマスクや消毒用アルコール、モバイルバッテリーなどを搭載、問題なく運ぶことができた。同社の森田直樹代表取締役CMO(最高マーケティング責任者)は実験終了後、現地で取材に応じ「機体は運ぶ荷物の重量や用途などに応じてさまざまなカスタマイズが可能。今回の実験で長距離飛行の実証を果たせたと考えており、実装の段階に進みたい。自治体や病院などと組み、ソリューションとしてきちんと提供できるようにしていきたい」と説明。長距離の物流や遠隔医療時の医薬品配送、被災地への救援物資輸送や被害状況確認などへの応用に強い意欲を見せた。
到着したFUSION(空解提供)
飛行を終えて着陸するFUSION(空解提供)
飛行ルート(空解提供)
この日の実証実験はFUSION2機を使う予定で、もう1機はワクチンのダミーを保冷しながら輸送する計画だったが、通信トラブルが発生したためフライトを断念した。森田氏は保冷輸送についてもあらためて実証実験したいとの意向を示した。
FUSIONは滑走路を使わずどこでも離着陸できるのが特徴。全長1・475メートル、全幅2・1メートル、貨物の最大積載量は2・5キログラム。最大航続距離120キロメートル、最高速度は時速120キロメートルと設計している。機体の重量が2・5キログラム、最大容量の動力バッテリーを積むと4キログラムと軽量化を実現した。
この日の実験はTeam ArduPilot Japanとアイ・ロボティクスが協力。飛行にはLTE(携帯電話用高速通信回線)を用いて現在位置をリアルタイムで確認した。NTTドコモが通信機器を提供した。
政府は2022年度をめどに、人口が多い市街地上空で目視外の自律飛行「レベル4」を解禁する方向で準備を進めている。空解はレベル4実現をにらみ、非接触・低炭素排出の新たな輸送手段を確立したい考えだ。
森田氏は、既存ドローンメーカーによる同種のeVTOLより価格を半額程度に抑え、量産化を果たして早期普及を目指す考えを明らかにした。
着陸場所の河川敷
実験に投入したFUSION。奥は以前に製造したパイロットモデル
FUSIONに搭載した携帯電話で機体から撮影
実験後の取材に応じる森田氏
機体からマスクなどを取り出す(空解提供)
(藤原秀行)