【独自取材】清水建設、マルチテナント・BTS両タイプの物流施設開発に注力

【独自取材】清水建設、マルチテナント・BTS両タイプの物流施設開発に注力

埼玉・新座で混在の3棟が全て満床、今後もバランス良く展開目指す

清水建設は、自社で手掛けている物流施設開発に関し、近年ニーズが高まっているマルチテナント型に加え、BTS型にも注力していく方針だ。

埼玉県新座市で同一エリアに総延べ床面積が約19万平方メートルの物流施設3棟を集中的に開発する「S・LOGI(エスロジ)新座プロジェクト」がこのほど足かけ約8年で完了。このうち2棟はBTS型として建設してきたが、いずれも満床となった。

汎用的な設計となるマルチテナント型に比べて入居企業のニーズをより的確につかみ、施設の計画に反映させていくことが求められるBTS型でも実績を重ね、両方のタイプをバランス良く展開して多様な企業の需要を獲得していきたい考えだ。


「S・LOGI新座プロジェクト」3棟(清水建設プレスリリースより引用)

クリーンルームを5室開設

清水建設は大手ゼネコンとして物流施設などの建築を請け負うのに加え、自社で投資枠を設定し、国内外で不動産の投資開発事業を展開。オフィスビルやホテル、マンションに加えて近年は物流施設にも注力しており、新座のプロジェクトを含めて首都圏で7棟、総延べ床面積約30万平方メートルの実績を積み重ねてきた。開発に際しては建築の豊富な経験と高い技術力を生かせる上、広範な業界の企業とつながりがあることもテナントリーシングを進める上で強みとなっている。

新座のプロジェクトは市の土地区画整理事業に参画、総投資額約400億円で約9万平方メートルの敷地内に3棟が集まる形で建設してきた。このうち、20年1月に竣工した2棟目の「S・LOGI新座East1」(延べ床面積約4万平方メートル)は着工時にテナント企業と賃貸借契約を締結。今年6月末に完成した3棟目の「S・LOGI新座East2」(約2万平方メートル)もSBSホールディングス傘下のSBSスタッフ子会社で人材紹介などを手掛けるジョブライトが1棟借りし、地元の物流企業エムティエスに転貸、100%稼働が確定した。

「S・LOGI新座East1」は1階部分を冷蔵倉庫対応可能にするなど、BTS型ならではの工夫を施している。同じく「S・LOGI新座East2」も2階のフロアに空気中のちりやほこりが極めて少ない環境を保つクリーンルームを5室配備。クラス100000と相当な高レベルの清浄度を提供できるものも備えている。清水建設は化粧品や医薬部外品の充填作業などに使えるため、様々な物流ニーズに応えられると見込む。


「S・LOGI新座East2」の外観


3棟の配置(奥の建物はマルチテナント型の「S・LOGI新座West」)


「S・LOGI新座East2」内のクリーンルーム


「S・LOGI新座East2」の倉庫スペース

清水建設はこれまで開発の中心となってきた首都圏に加えて、今後は中部や関西、九州の都市圏でもプロジェクトを手掛ける準備を進めている。同社の鷲見晴彦執行役員投資開発本部長は「新座で大規模なマルチテナント型と入居企業のニーズに沿ったBTS型の両方を開発し、100%稼働させることができた。地権者の取りまとめから土地の造成、設計・施工、竣工後の運営管理まで当社の建築・土木・投資開発など関係する部門が一体となって取り組んだことが奏功した。当社としても非常に意味のあるプロジェクトとなった。新座で培ったノウハウを生かし、今後もマルチテナント型とBTS型の両方にチャレンジしていきたい」と意気込みを見せる。

6月には九州地方で初案件となる福岡市の物流施設「S・LOGI福岡空港」の開発を発表。これも西日本鉄道向けのBTS型施設となることが決定している。福岡空港に至近な立地などを生かし、輸出入貨物の主要拠点として運営する計画だ。九州産の生花や生鮮食品などの取り扱いを伸ばしたいとの西日本鉄道国際物流事業本部の意向を踏まえ、一部フロアに冷蔵倉庫スペースを設ける予定だ。

新座のプロジェクトでは、敷地内でさまざまな生物が共生できる多様性に配慮した環境を整備したり、AIを使って火災を早期に検知する独自システムを配備したりと、大手ゼネコンならではの技術力を生かした取り組みも進めてきた。清水建設は今後のBTS型開発案件でも、環境配慮といった面で独自性を発揮していく構えだ。

(藤原秀行)

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