【現地取材・動画】プロに見せたい物流拠点⑨オルビス・東日本流通センター★訂正

【現地取材・動画】プロに見せたい物流拠点⑨オルビス・東日本流通センター★訂正

小型AGVに続き、AMR16台がピッキングの生産性を上げる

※本文中、
「従来は作業スタッフが自分でカートを押してピッキングエリアを回っていた。その処理スピードを維持したまま、作業負荷を大幅に減らす省力化に成功した。」を、
「従来は出荷頻度に応じて、カートピッキングとDPSを組み合わせた“ハイブリッド”な出荷ラインを展開していた。AGVの導入に加えて自動封緘機も採用したことなどで処理能力は向上させた一方、作業負荷を大幅に減らすことに成功した。」に訂正いたします。ご迷惑をお掛けしたことを深くおわび申し上げます。

課題山積の物流業界でピンチをチャンスに変えようと、省力化や生産性向上などに果敢に取り組む物流施設を紹介するロジビズ・オンライン独自リポート。第9回はポーラ・オルビスホールディングス傘下で化粧品や健康食品、ボディウエアなどを手掛けるオルビスが埼玉県加須市で展開している物流拠点「オルビス東日本流通センター」を取り上げる。

同センターは先に小型AGV(自動搬送ロボット)を330台投入し、通販向け商品の出荷工程を自動化したのに続き、直営店舗やBtoBの卸向け出荷ラインにAMR(協働型自律搬送ロボット)を16台採用した。2016年の「宅配クライシス」を契機として、持続可能な物流の構築に注力し続けるオルビスの新たな挑戦が本格的に始まっている。


「オルビス東日本流通センター」が入る建物

重量計を搭載し作業ミス回避

オルビスはスキンケア製品や健康食品などを通販と直営店舗の両方のチャネルで販売しているほか、BtoBの卸向けにも出荷している。業績は堅調で、今後は特にBtoBの卸向けの出荷が伸びることが見込まれているため、安定した製品出荷体制の確立が課題となっていた。

オルビスの東日本エリアの物流は、アルプス物流の子会社で生活協同組合の個人宅配など幅広い物流を手掛ける流通サービスが埼玉県加須市に構える「騎西物流センター」内の「オルビス東日本流通センター」が担っている。オルビスは庫内のオペレーションで流通サービスの協力を得ているほか、マテハン設備の選定などは椿本チエイングループと連携している。同センターでは流通サービスや椿本チエイングループの力を借りながら、デジタルピッキングシステム(DPS)の採用をはじめ、以前から省力化に注力してきた経緯がある。

2020年には、通販の出荷業務を自動化するため、中国のロボットメーカーZhejiang LiBiao Robotics(浙江立鏢機器人)製の小型AGV(無人搬送車)330台を導入した。1つの出荷オーダーに1台のAGVを割り当て、集荷から検品梱包のラインまで商品を届ける一連の工程を完遂するという世界でも珍しい独自のオペレーションを構築した。

作業スタッフがDPSでピッキングした商品をAGVのコンテナに収めると、AGVがセンター内を周回して検品梱包ラインにコンテナを運ぶ。従来は出荷頻度に応じて、カートピッキングとDPSを組み合わせた“ハイブリッド”な出荷ラインを展開していた。AGVの導入に加えて自動封緘機も採用したことなどで処理能力は向上させた一方、作業負荷を大幅に減らすことに成功した。

第2弾の取り組みとして、同センターで今年2月、直営店舗や卸事業者向けのBtoBの出荷ラインの自動化に着手した。通販と同様、従来のオペレーションのままではいずれ出荷作業を円滑に進められなくなる恐れがあると判断。オルビスによれば、これまで使用してきた重量計付きの手押しカートが老朽化してきたことも設備の更新に踏み切った要因の一つだったという。


直営店舗や卸事業者向けのBtoBの出荷ラインのフロア

新たに中国系ロボットメーカーForwardX Robotics(フォワードエックスロボティクス)製のAMR(協働型自律搬送ロボット)16台を採用した。ロボットに精度の高い寺岡精工の重量計を装備して、ピッキング工程に投入した。

AMRの採用に併せて、直営店舗やBtoBの卸向けの商品を扱うフロアの構成を見直した。商品保管のフロアを複数のゾーンに分割して、ゾーンごとに作業スタッフを配置。オーダーが入ると、AMRが最適なルートを自動で割り出し、人や物にぶつからないように当該の商品が収められているエリアを順番に回る流れにしている。特定のエリアにAMRが集中して渋滞を起こさないよう、1つのゾーンに入ることができるAMRは3台までと設定、4台目以降は次のゾーンを先にピックで回るよう制御している。


投入しているForwardX RoboticsのAMR

作業スタッフはウェアラブル端末を装着。自分が受け持っているゾーンにAMRが入ると、ウェアラブル端末に表示されたピッキングする商品の種類と棚の位置を基に、適切な商品をピッキングして到着したAMRのカートに収める。

ピッキングの際、指示通りにカートに商品が投入されたかどうかをAMRに装備した重量計でチェック。商品の投入が完了するとAMRは自律的に次のゾーンに移り、全ての商品がカートに入ったら出荷ゾーンへカートを搬送する。AMR16台が日々、この作業を繰り返している。


装備している重量計


指示が表示されるウエアラブル端末

従来のオペレーションは重量計付きカートを作業スタッフが押してピッキングエリアを巡回していた。現在と同様、AMR導入前も1回の作業で4拠点分のオーダーを処理していたが、これではどうしても作業スタッフが庫内を広く歩き回らざるを得ない。今後、取扱量が増えれば必然的に作業スタッフの負荷も増していく。そうした事態を回避するため、1日当たりの歩行距離を短縮できる自動化に踏み切った。

新システムでは作業スタッフの移動が自分の担当するゾーン内に限られる。歩行距離は劇的に減った。これまで同作業には20人を投入していたが、15人に減らせる見込みだ。5人には別の業務を担当してもらう。その結果、売り上げに対する出荷作業費の比率を約10%抑制できると試算している。


カートに商品を投入


庫内の地図を自動作成

物流事業者やマテハンメーカーと緊密連携

オルビスSCM部ロジスティクス管理グループの柳田和宏グループマネジャーは「われわれが物流現場の自動化・省人化を図っている背景には、2017年の『宅配クライシス』があった。このままでは荷物を届けられなくなるのではないかと強い危機感を覚えた。商品をお客さまに使っていただくためにはやはり安定的な出荷体制を構築することが必要になってくる」と説明する。

そのために物流パートナーの流通サービス、マテハンメーカーの椿本チエイングループと手を結び、3者で連携して庫内作業の自動化を進めていく体制を整えた。通販向けのAGVに続いて、今回も3者が協力してプロジェクトを進めた。


オルビス・柳田氏

当初はこれまでの経験を生かし、直営店舗や BtoB の卸向けラインにも AGV を取り入れることを検討した。しかし、直営店舗や BtoB の卸向けラインは出荷先 1 カ所当たり同一の商品を数十個ピッキングする必要があるなど、通販向けのラインとはオペレーションが異なるため、同じ形で回るのは難しいと判断。人と協働してピッキングを進める AMR を利用することにした。

設備の選定に携わった椿本チエイン傘下の椿本マシナリーの北村隆之SE部長は「いろんな方法を比較検討し、一番効率が良いと見込まれるものを選んだ。歩く距離を大幅に減らすことで働いている方々の労働環境向上にもつなげられる」とAMRの利点を説明する。


椿本マシナリー・北村氏

流通サービスのソリューション統括部でITグループのマネージャーを務める佐藤正晃氏は「複数のAMRを検討したが、重量計付きカートを搭載するカスタマイズに対応してくれるということでフォワードエックスの評価が高かった。まだまだAMRは国内で活用事例が少ないが、オペレーションの効率化につなげられると期待している」と語る。

流通サービス・佐藤氏

現在もオルビス、流通サービス、椿本マシナリーの3者の担当者で毎週、定期的にミーティングを行い、作業のパフォーマンスを確認して改善策について話し合っている。オルビスの柳田グループマネジャーは「この3者で緊密に連携していることが自動化・省力化を図る上で非常に重要だと考えている。それぞれが気づいた点を円滑にフィードバックできる。AMRのオペレーションが早期に安定するよう、今後も連携を継続していきたい」と意気込んでいる。関係者の“三位一体”の体制が自動化・省力化を後押ししており、他の物流事業者らにとっても参考になるケーススタディーと言えそうだ。

(藤原秀行)

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