国交省の有識者対策検討委員会が中間取りまとめ
国土交通省は12月12日、有識者による「全国主要空港における大規模自然災害対策に関する検討委員会」(委員長・家田仁政策研究大学院大教授)が進めてきた議論の中間取りまとめを公表した。
9月の台風21号で関西国際空港の滑走路が冠水して機能不全に陥るなど、各地の空港が災害の被害を受けるケースが相次いでいるのを踏まえ、緊急に着手すべき課題を列挙。護岸のかさ上げや排水施設の整備などと併せ、「迅速な意思決定を可能とする一元的意思決定体制の構築」や電源喪失時の対応計画策定など、ソフトとハードの両面で取り組みを急ぐよう要望した。
委員会は数回の議論を経て、2018年度末をめどに「最終取りまとめ」を決定。国交省は各空港の運営管理者らに対策を講じるよう求めていく。関空のケースは空港という重要インフラのBCP(事業継続計画)にほころびがあることを如実に示したといえるだけに、国交省や空港関係者には早急な対応が求められる。
中間取りまとめは、考慮すべき現状として、自然災害の多発や被害の激甚化・多様化だけでなく、冷暖房需要増大や冷蔵倉庫の増加などに伴う電力依存度拡大、空港運営への民間参入による旅客以外の空港施設利用者増加といった環境変化、国際化進展を受けた来日外国者数拡大を挙げた。
その上で、あらゆる空港利用者の安全・安心を確保するとともに、避難してくる周辺住民への支援や航空ネットワークの維持も必要になると指摘。今後の大規模自然災害への対策の基本的在り方として、
①さまざまな自然災害に対する適応力の強化
②災害時に備えた空港運営体制の構築
③適切なリスク管理
④非常時のサービス提供の在り方の抜本的改善
⑤非常時における強力なアクセス交通マネジメント体制の確立
⑥インフラとしての機能の保持
⑦電力の確保
――を明記した。
「関係者の基本的役割分担明確化を」
緊急に着手すべき課題は、ソフト面で各空港のBCP再構築に言及。その際に留意すべき必要な視点として、
・空港全体を統括する総合対策本部の設置
・空港関係者(管制、旅客・貨物運送事業者、グランドハンドリング事業者、隣接する宿泊施設の運営主体など)の基本的役割分担の明確化
・自衛隊や国交省の地方運輸局・地方整備局、海上保安庁、警察、消防、地方自治体など各機関との調整機能の明確化
・迅速な意思決定を可能とする一元的意思決定体制の構築
・空港における災害発生時の旅客避難や滞留者移送、電源や上下水道、通信の各機能喪失時の対応計画策定
――などを説明した。
ハード面で想定し得る対策としては、
・浸水対策
…電源施設への水密性扉の設置、護岸のかさ上げ、航空機地上支援車両(GSE)の避難場所確保など
・排水対策
…排水・貯留施設の整備、ポンプ車の配備など
・耐震対策
…滑走路の液状化対策推進、旅客ターミナルビルの耐震対策など
・電源の確保
…災害時に空港の基幹的施設へ供給可能な発電設備など
――を記している。
(藤原秀行)