JLLリポート、旺盛な需要で供給に過剰感なしと指摘
JLL(ジョーンズ ラング ラサール)は9月15日、九州の不動産市場に関するリポートを公表した。
この中でロジスティクス(大型物流施設)について「福岡圏は旺盛な需要に対して供給不足で需給のひっ迫が続いている」と指摘。2021年以降はまとまった量の新規施設が完成する予定のため、さらなる成長を遂げるとの前向きな見方を示した。
22年は過去最多の竣工面積見通し
リポートは、福岡圏で大規模な物流施設が本格的に建設されたのは、首都圏や関西圏に遅れて2012年ごろからだったと回顧。ただ、マルチユースの物件が建てられても、マーケットが成熟していなかったためリーシングに時間を要し、10年代後半はマルチユース物件の供給の勢いが沈静化、BTS型主体に移っていったと指摘した。
そのため、eコマースが成長して物流施設の需要が大きく伸びた18年以降、受け皿となる物件が不足し、「物流拠点としては高いポテンシャルを持ちながらも首都圏や関西圏のような活況な波に乗り遅れる結果となった」と解説した。
供給不足により、福岡圏は足元で大型だけでなく、中小型の物流施設にもほぼ空きがなく、21年に入って新規供給は増えるものの、供給予定の全施設が満室で竣工する見通しという。
22年には25万平方メートル超と過去最多の供給量が見込まれ、23年も15万平方メートル近い供給がある見通しだが「旺盛な需要に対して供給に過剰感はない」と分析。供給の増加とともに全国で事業展開する大手事業者の進出が相次いでいることに言及した。
併せて、供給不足に伴う賃料の顕著な上昇も、開発に慎重だった事業者の背中を押しているとの見方を明らかにした。「今後、福岡圏のロジスティクスセクターは供給増加とともにさらなる成長を遂げるだろう」と結論付けた。
また、従来は福岡圏の物流適地として、博多港や福岡空港にも近い福岡市内近郊と、複数の高速道を結ぶ鳥栖JCTや鳥栖ICがある佐賀県鳥栖市が中心だったが、最近は大型案件の開発素地(用地)が少なく、供給があまり進まなかった背景になっていると強調。その対応として他のエリアへの拡大が進んでいるとみており、具体例として福岡市内の九州自動車道の福岡ICから北に10キロメートル程度の古賀IC周辺と、鳥栖ICから北に約10キロメートルの筑紫野IC周辺を列挙。21年以降の新規供給の中心になっていると報告した。
(藤原秀行)