【独自取材】大和ハウス工業、デジタル技術活用した物流の課題解決支援強化で専任組織新設

【独自取材】大和ハウス工業、デジタル技術活用した物流の課題解決支援強化で専任組織新設

自動化や感染症対策など、幅広い領域でDX実現目指す

大和ハウス工業は、デジタル技術を活用した物流の課題解決支援を強化するため、専任組織として物流施設などの開発を担う建築事業本部内に「物流DX推進グループ」を今年7月に設置した。

同組織が中心となり、大和ハウスグループのフレームワークスやダイワロジテック、さまざまなスタートアップ企業などと連携しながら、物流施設におけるロボット活用促進や感染症予防などのソリューションを考案。物流業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)に貢献していくことを目指す。庫内作業にとどまらず、その前後の輸配送などの工程についても対象にしていく考えだ。

環境負荷低減策にもタッチへ

物流DX推進グループは、建築事業本部で物流施設開発を手掛けているDプロジェクト推進室の中に設置。現在は4人が所属している。Dプロジェクト推進室にはほかに開発を推進するグループ、テナントリーシングを担うグループも存在しており、3つのグループが相互に協力して開発事業を進めていくイメージだ。

物流DX推進グループが本格的に手掛けた案件の1つが、今年8月に公表した、物流施設で熱中症やインフルエンザ感染のリスク度合いを可視化する「倉庫環境監視IoTソリューション」だ。NTTコミュニケーションズと連携し、大和ハウスが静岡県富士市で開発したマルチテナント型の「DPL新富士Ⅱ」で運用を開始した。

センサーで温度や湿度などを観測し、施設内にリスクの高さを随時表示することで従業員に注意を呼び掛け、対策を講じるよう促す。大和ハウスはソリューションを今後開発する新たなマルチテナント型物流施設へ展開していくことを目指している。

物流DX推進グループの石川一郎担当部長は「デジタル化したデータを活用し、いろいろな革新を進めていきたい。自動化や省人化、感染症対策といった多様なニーズに応えていきたい」と狙いを説明する。


インフルエンザ感染発生リスクのモニター表示例(以下、いずれも大和ハウス工業提供)

今年9月に発表した、大和ハウスとイオングローバルSCM、花王、日立物流、豊田自動織機の5社がタッグを組んで実施するAIを搭載した自動運転フォークリフトを活用した商品の積み卸ろし自動化を図る共同実証事業も、同グループが参加企業間の調整など旗振り役を担っている。自動運転フォークリフトのほか、荷台と車体を分離できるスワップボディコンテナ車なども活用。実際にイオングローバルSCMと花王が使っている物流施設で実験を続け、作業の効率化でトラックの待機時間削減などの成果を得たい考えだ。

この実験では、トラックが発荷主側のセンターをいつごろ出荷し、着荷主側のセンターにいつごろ到着するかといったデータを関係者間で共有し、フォークリフトの効率的な作業計画を立てられるようにするなど、自動化だけにとどまらずサプライチェーンの幅広い領域をDX化しようと試みる。情報連携させるためのシステム構築などでフレームワークやダイワロジテック、協力しているスタートアップ企業とも協力していくことを検討している。

案件によっては、共同実証事業と同様に、他の企業と手を組んでいく可能性もある。物流DX推進グループの菅野寿威グループ長は「全てのステークホルダーに対してより良いものを提供していくことを理想としている。技術は日進月歩の世界なのでどんどん新しいことにチャレンジしていかないといけない」と意気込んでいる。

DX化に関しては、物流施設で単純に物流ロボットを導入するだけでなく、物流ロボットが能力を最大限発揮できるようなオペレーションの構築や建物の設計といったところまで踏み込むことを想定。ハードとソフトの両面を活用する方針だ。さらに、温室効果ガスの排出量を実質的にゼロとする「カーボンニュートラル」実現への貢献を産業界全体で強く求められていることも踏まえ、物流DX推進グループが物流施設の環境負荷低減策に関してもタッチしていく見通しだ。


AIを搭載した豊田自動織機製の自動フォークリフトによる積み卸ろし自動化の模様

(藤原秀行)

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