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プロに見せたい物流拠点⑤ASKUL LOGIST・大阪EC物流センター

プロに見せたい物流拠点⑤ASKUL LOGIST・大阪EC物流センター

スタートアップと組み、勤怠管理や業務の生産性把握の効率化に挑む

未曾有の人手不足など課題山積の物流業界でピンチをチャンスに変えようと、省力化や生産性向上などに果敢に取り組む物流施設を紹介するロジビズ・オンライン独自リポート。第5回は、アスクルの100%子会社で物流機能を担うASKUL LOGIST(アスクルロジスト)が大阪府吹田市に構えている「大阪EC物流センター」にスポットを当てる。

複数の荷主企業の業務を請け負う多忙な日々を送る中、スタートアップ企業と組み、従業員の勤怠管理や業務の生産性把握の効率化へ新たな取り組みを進めている。


大阪EC物流センターが入るアスクルの「ASKUL Value Center関西」

クラウドに就業データ集積、確認や分析が容易に

アスクルロジストが大阪EC物流センターでタッグを組むのが、情報システム開発やIT領域のコンサルティングなどを手掛けるベンチャー企業のイノベーティブ・ソリューションズ(横浜市)だ。同社が開発した、庫内の作業状況などを容易に把握できる「タスクトラッキングシステム」(TTS)を導入。その第1段階として従業員の手間を増やすことなく、実際の就業日数や時間をより正確に確認できるようになった。

既存のWMS(倉庫管理システム)を大幅に改修するといった手間を要さないのもメリットだ。今後は各従業員が庫内作業に当たった総時間や担った工数をより細かくつかめるよう、TTSの機能を改修、人時生産性の実態把握と改善に活用できるようにすることを目指している。

アスクルロジストの大阪EC物流センターは、親会社のアスクルが2017年、日本GLPが開発した地上4階建ての物流施設内に設けた「ASKUL Value Center関西」(AVC関西、延べ床面積16万5235平方メートル)の中に入居している。アスクルロジストはアスクルのECで培った高品質な物流サービスを外販しており、現在は荷主企業として大手食品メーカーや小売事業者など4社から業務を受託している。

この4社向けの業務で働いている従業員は直近のトータルで約250人に上る。個々の勤怠管理はこれまで紙ベースで行ってきたため、業務が煩雑になっていた。そこで20年秋、複数のシステム候補の中から、イノベーティブ・ソリューションズのTTSを選択、本格的に利用を始めた。

TTSはスマートフォンやタブレット端末のアプリ画面上で従業員の個人IDを入力した後、実施する作業を選択し、作業の開始や終了を画面上でタッチすれば就業内容と就業の時刻を自動的に記録、クラウド上で収集する。管理担当者がクラウドにアクセスすれば、従業員ごとの就業時間などを容易に確認・分析することが可能になる。


タブレット端末のアプリ画面。まずIDを入力する


従業員ごとに業務内容を入力しやすいよう配慮。個々の荷主企業ごとに作業状況を管理できる


各作業エリアの入り口付近にタブレット端末を配置している

アプリは1カ所の物流拠点で取り扱っている複数の荷主向け業務を一元的に管理できるため、個々の荷主ごとにシステムを用意するといった手間も省ける。アスクルロジストの松尾香織大阪ECセンター副センター長は「従来は朝から夕方まで勤怠管理の作業に追われている感じだったが、非常に容易となり、管理スタッフ1人分くらいの業務負荷を削減することができた。その分、スタッフを別の業務へ最適配置できるようになった」と評価する。

現在は各荷主企業向け作業エリアの入口に専用のタブレット端末を配置し、当日働く従業員が操作する仕組みとなっており、作業開始前と終了後にアプリを確実に操作しやすいよう配慮している。導入から1年程度が経ち、従業員の間にも定着した。

荷主企業の中には化粧品メーカーが含まれ、新商品のサンプルなど販促物を取り扱っている。新商品が出る時期などは取扱量が跳ね上がるため、波動対応として4荷主企業の現場間で従業員を融通し合ったり、別のアスクルロジストセンターから応援を頼んだりして、しのいでいるという。1つのシステムで複数荷主の担当従業員の勤怠を一元的に管理できる点が、波動対応でも強みになっている。

他のセンターへの横展開も視野

アスクルロジストの大阪EC物流センターでは導入当初より、TTSをまず勤怠管理の効率化に充てるフェーズ1、その次に実際の作業生産性分析に活用するフェーズ2と段階を分けて機能を発揮していくことを想定している。

アスクルロジスト大阪EC物流センターの田原光喜副センター長は「フェーズ1に関しては従業員の間でも勤務した時間の認識の間違いがなくなるなど、着実に成果が挙がった。今後はフェーズ2を推進していきたい」と意気込む。アプリの使い勝手をさらに良くして従業員のチェック漏れを解消するため、当初はIDをタブレット端末などの画面上で入力していたが、従業員の入館証に印刷しているバーコードをスキャンすれば済むよう改良を進めている。


名札に付いたバーコードを読み取ればすぐに入力できる

TTSはピッキングや梱包、入荷検品といった個々の工程の開始時と終了時にタブレット端末などのアプリ画面上でタップすれば、従業員がその日、どういった作業に従事し、どの程度の時間を費やしたのかをクラウド上に自動保存する機能も備えている。WMSの作業実績などの情報と連携させれば、各従業員の人事生産性を割り出すことも可能だ。アスクルロジストはイノベーティブ・ソリューションズと連携し、現状活用しているTTSの機能を一部見直すなどして、第2フェーズを着実に実行していけるようにしたい考えだ。

アスクルロジストが各地に構える物流拠点では現在、勤怠管理に用いているシステムがばらばらで拠点間の互換性がなく、アスクル社内でもシステム統一の必要性を認識しているという。松尾氏は「TTSは大規模なWMS改修などを施さなくてもいいのがメリット。うちのセンターでも2カ月くらいで軌道に乗った。そのスピード感が素晴らしい」と実感しており、各センターに横展開していく候補として、採用を働き掛けていくことを念頭に置いている。

コロナ禍でECの利用が伸びているため、荷主企業の商品取扱量増加に伴い、現場の従業員の数も近く、さらに拡大する見通しで、300人を超えるという。それだけに、勤怠管理や生産性向上のためにTTSを駆使する重要性がさらに高まっている。松尾氏と田原氏は「なぜTTSを入れて人事生産性を管理していくのか、そもそもの目的、狙いをしっかりと従業員や管理担当スタッフの皆さんに理解していただき、TTSを活用して成果を出していきたい」と語る。

大阪EC物流センターでは、松尾氏と田原氏らが中心となり、デザインに凝った明るいイメージの制服に刷新するなど、従業員が働きやすい環境の整備に努めている。昨今の人手不足の傾向は同センターでも無視できない状況になっているため、TTSの活用で人員の最適配置も促進して、ソフト面でさらに労働環境の改善を推し進めていく構えだ。


田原氏と松尾氏


制服のTシャツ。「ASUKUL LOGIST」の文字を袖などに散りばめる独自のデザイン


センター内は自動化機器を導入、出荷の効率化に努めている


事故防止を呼び掛ける分かりやすい表示が随所に

(藤原秀行)

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