開発に加え施設の管理運営に注力、投資ファンドも組成へ
シーアールイー(CRE)が、トランクルームやレンタル収納スペースなど、“個人向け倉庫”ともいえる「セルフストレージ事業」強化に乗り出している。東証マザーズ上場のパルマと組み、「Keep It(キーピット)」ブランドのセルフストレージを順次開発。パルマとの合弁で設立したセルフストレージ専業のプロパティマネジメント(PM)会社、日本パーソナルストレージ(JPS、東京)がその施設管理を担うとのスキームだ。
将来は投資家からの資金を募る受け皿としてファンドの設立も予定している。セルフストレージは都市部で今後も一定の需要が見込めるとみて、物流施設の管理運営で培ったノウハウを生かそうと試行錯誤を続けていく。
キーピットのセルフストレージ(CRE決算説明資料より)
「投資資金流入と管理会社整備が市場拡大の鍵」
セルフストレージは海外で先行して普及しており、業界団体の日本セルフストレージ協会(東京)によると、米国では5万カ所、1700万室以上が展開され、10世帯に1世帯が利用しているという。
キーピットは屋内型のトランクルームとして東京、神奈川、埼玉の首都圏1都2県で展開。24時間利用可能なことや、空調・駐車場を完備していることなどがユーザーに受け入れられ、直近では24施設、2800室を超えている。
CREでセルフストレージ事業を担う後藤信秀取締役執行役員(不動産管理セグメントリーダー)は「米国では3・5兆~4兆円に上る巨大市場に成長している。一方で日本は首都圏でもビルインのトランクルームの普及率が1桁にも達しておらず、まだまだこれからの分野。現状は市場規模が600億円程度とみられるが、今後複数のプレーヤーがファンドを組成して投資商品としての流動性が高まることにより、機関投資家の資金流入増加も期待され、施設供給の加速が見込まれる。将来的なポテンシャルは大きい」と予想。
「セルフストレージは1施設当たりのアセットサイズがそれほど大きくないだけに、ファンド組成に際しては他のオペレーターとの連合も視野に入れている。当社の中核のBtoBに加え、BtoCの領域にも事業を広げていきたい」と思いを語る。
キーピットの開発に加え、JPSを設けた狙いについて、CREの亀山忠秀社長は「セルフストレージを投資商品としても魅力あるものに高めていくには、きちんとしたサードバーティーの管理会社が絶対必要になってくる」と指摘する。
輸配送など物流の要素とセルフストレージの“掛け算”も
CREは今年9月、投資対象をセルフストレージに特化したファンドを組成する構想を発表した。キーピットの施設をポートフォリオに組み入れ、グループ会社で不動産証券化などを手掛けるストラテジック・パートナーズ(東京)がアセットマネジメントを担当する。物流施設と同じく、開発~運営という上流から下流までをカバーした事業体制をアピールし、金融商品として提供していきたい考えだ。3年後の組成を目指している。
亀山社長は「日本でも物流施設に加え、病院やホテルといった新たなアセットも投資対象と認識されてきている。セルフストレージに関しても有望な金融商品の可能性を持っている」と持論を説く。
現状は普及促進の段階のため、ユーザーにとってはいかに身近にあるかという距離が最も大きな選択要素となっているが、今後セルフストレージの数が増えれば、設備の機能などで差別化が求められそうだ。後藤取締役は「輸配送・保管といった物流の要素と何か掛け算ができるのではないか」との見方を示す。ストレージからの荷物の発送といった付加価値を生み出すサービスを組み合わせることも検討課題となりそうだ。
CREの亀山社長(右)と後藤取締役
(藤原秀行)