【独自】上場物流企業、2割強が2四半期連続の業績予想上方修正

【独自】上場物流企業、2割強が2四半期連続の業績予想上方修正

需要増で海運業中心に、日本郵船と商船三井は今期4回目

ロジビズ・オンラインは東京証券取引所などに上場している主要物流企業のうち、決算期を3月に設定している73社の2022年3月期第3四半期決算(一部を除いて連結ベース)を集計した。

通期の業績予想に関し、売上高と本業のもうけを示す営業利益のいずれか、または両方の数値を上方修正した企業は30.1%の22社に上った。

21年9月中間決算時点も4割程度が上方修正しており、新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けた経済活動が国内外で再開され、荷物の取扱量が戻っていることなどが引き続き、物流企業の収益を押し上げていることをうかがわせた。

24社のうち、中間決算(4~9月)から2四半期で業績予想を引き上げたのは全体の26.0%に相当する19社だった。

国際物流需要伸び市況好調

73社を証券取引所の業種区分に従い、「陸運業」31社、「海運業」11社、「倉庫・運輸関連業」31社の3つに分けると、売上高と営業利益のいずれか、または両方の通期予想を上方修正したのは海運業が8社で最も割合が大きく、倉庫・運輸関連業が10社、陸運業が4社だった。

海運業は大手3社や川崎近海汽船、飯野海運など、倉庫・運輸関連業は近鉄エクスプレスや三菱倉庫、三井倉庫ホールディングス、住友倉庫、日新、日本トランスシティ、東陽倉庫など、陸運業はSGホールディングスや鴻池運輸などだった。

海運業はコロナ禍からの経済回復に伴う国際物流の需給ひっ迫で海運市況が好調なことが引き続き、追い風になっている。日本郵船と商船三井は22年3月期に入って4回目、川崎汽船も3回目の上方修正(売上高と営業利益のいずれか、もしくは両方)となった。

2四半期続けて売上高、営業利益のいずれか、もしくは両方を上方修正したのは海運業が8社、倉庫・運輸関連業が9社、陸運業が2社だった。ここでも海運業に追い風が吹いていることが示された。

邦船大手3社は共同出資して設立したコンテナ船事業会社「オーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE)」の業績が好調なほか、スポット輸送などの市況が伸びていることもプラス。日本郵船は22年3月期の期初予想に比べると連結売上高が7600億円から約2.9倍の2兆2000億円、営業利益は360億円から約7.4倍の2650億円に大きく上振れしている。

陸運業や倉庫・運輸関連業も国際物流を手掛けている企業は業績予想引き上げが相次いだ。近鉄エクスプレスは「コロナ禍で影響を受けた世界経済回復に伴う旺盛な輸送需要と、航空・海上輸送スペースの供給不足を背景とした運賃原価・販売原価の上昇で営業収入や営業利益の増加基調が継続した」と説明。三菱倉庫も貨物取扱量の回復や国際運送取扱事業における海上・航空運賃単価上昇などが業績に寄与していると解説している。

日新は「21年10月以降も想定以上に活発な荷動きが継続し、コンテナ不足や運賃高騰の状況にも変化は見られなかった。2月以降も旺盛な需要は当面継続するものと思われる」と展望。三井倉庫ホールディングスは「メーカー各社の海外を含む生産拠点での原材料・部品在庫の一時的積み増しなどへの対応により、フォワーディングや保管・運送業務の取り扱いが想定を上回って推移した」ことなどを業績予想修正の理由に挙げている。

ウクライナ情勢緊迫化が懸念材料に

ただ、ここに来て、ウクライナ情勢をめぐりロシアと欧米諸国などとの関係が緊迫化していることが懸念材料に浮上している。ロシアがウクライナに侵攻した場合、欧米諸国によるロシアへの経済制裁の影響でエネルギー価格の上昇や国際物流の混乱につながる公算が大きいためだ。

2月21日の東京株式市場では、ウクライナ情勢緊迫化を受け、多くの銘柄に売り注文が集まり、日経平均株価が一時は前日から500円以上の下落幅を見せ、海運株もあおりを受けた。米ロ間で衝突回避へ首脳会談を模索する動きが伝わった後は相場の下げ幅が縮小したものの、ウクライナ情勢への関心度の高さを示した。中国経済の成長減速懸念も浮上しており、物流企業としても今後はより慎重な経営のかじ取りが必要とされそうだ。

(藤原秀行)

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