輸送業から世界経済の先行き不透明感に懸念の声

輸送業から世界経済の先行き不透明感に懸念の声

2018年12月景気ウオッチャー調査、株価下落などが影響

 内閣府が1月11日公表した2018年12月の景気ウオッチャー調査結果は、街角の現状の景況感を表す現状判断指数が3カ月ぶり、2~3カ月先の景況感を占う先行き判断指数も2カ月ぶりに前月から悪化した。米中両国の貿易摩擦や株価下落が影響した。

 内閣府は基調判断を「緩やかな回復基調が続いているものの、一服感がみられる」に引き下げた。判断を下方修正したのは2018年5月以来、7カ月ぶり。

 調査に協力した輸送業の間では景気の現状、先行きともに「変わっていない(変わらない)」との回答が目立った。他業種と同じく株価下落など世界経済の先行き不透明感が心理の重しになっていることが浮き彫りになった。半面、一部には燃料代高騰が一時沈静化の兆しを見せていることや、物流現場の負荷軽減に荷主の協力が得られつつあることを感じさせる回答も見受けられた。

9割が景気の現状は3カ月前と「変わっていない」

 同調査は飲食店経営者やスーパーマーケット担当者、旅行代理店スタッフなど景気の動向に敏感な業種の全国2050人を対象に実施、毎月公表している。輸送業はこのうち41人を占めている。エコノミストなどの間では、より景気の実感に近い「街角景気」を把握できるとして注目度が高い統計だ。

 全国12地域別に輸送業の声を見ると、現状については具体的な回答内容が紹介されている25人のうち、9割の21人が3カ月前と比べて景気が「変わらない」との判断を示している。「やや良くなっている」が2人、「やや悪くなっている」と「悪くなっている」がそれぞれ1人ずつだった。

 最多の「変わっていない」とした事業者からは、「米中貿易摩擦の影響で荷主が輸入量を抑えざるを得ないケースや、極度の品薄から鋼材などの荷動きを先延ばしにするケースが散見される」(北海道・支店長)、「株価の大幅下落が気になる。消費者マインドに与える影響は大きい」(四国・経営者)と内外の経済面で気になる動きの影響を心配する向きがあった。

 恒常化している人手不足に関しては「取扱量の減少、人手不足、諸規定の強化などによる経営悪化の救済策として、荷主より運送料金の値上げが実施されたが、取扱量の減少に依然として歯止めが掛からないため、状況は3カ月前と変わっていない」(南関東・経営者)との指摘があった。

 一方、「働き方改革が荷主各層にも徐々に理解され、 出荷時間や配達時間にも弾力的な対応が可能になりつつある。ただし、人手不足は今後も深刻な問題である」と働き方改革が一定程度進展していることをうかがわせる回答が見られた。

 また、「荷動きが激しい年末繁忙期はここ数年、ドライバー不足や燃料油価格の高騰を背景としたトラック便の不足が目立ち、物流の停滞を招く状態にあったが、今年は臨時便を出して対応しなければならないような激しい荷動きはなかった。荷主に対し集中出荷から分散出荷へ切り替え協力の要請を行っている部分を加味したとしても、取扱物量が例年より減少している」(四国・営業担当)との証言もあった。

 ユニークな回答としては「かかりつけの歯医者から最近定期検診を受ける人と高齢の患者の通院回数が減っているという話を聞く。景気の動きと連動しているかどうかはやや不透明な部分はあるが、自分の歯を治す、自分自身に対する投資が減っているということは、支出を抑えているということになる」との独自分析が聞かれた。

「消費税引き上げ前の駆け込み需要や東京五輪効果」に期待

 先行きに対しては、具体的な回答を紹介された27人のうち、「変わらない」が最多で15人、続いて「やや良くなる」が6人、「やや悪くなる」が3人、「悪くなる」が2人、「良くなる」が1人だった。現状の判断に比べ、強弱感がより明確に分かれた格好となった。

 「変わらない」では、「米中貿易摩擦の影響や鋼材系の極度の品薄などの懸念材料が急に好転するとは考えにくい」(北海道・支店長)、「株価の大幅な下落を懸念している」(東北・従業員)などと、現状と同じく経済環境の下向きな要因に不安を抱いている姿が感じられた。

 「労働力不足と燃料油価格の高止まりについては事業の経営を圧迫する深刻な要因となっている。特に軽油の価格については、ここ数年上昇傾向にあることから、特例的な時限的措置として軽油引取課税の軽減を求める声が多い」(四国・営業担当)との深刻な悩みも見られる。

 「やや良くなる」は、「10連休の影響や高額商品の消費税引き上げ前の駆け込み需要、東京オリンピック効果などが徐々に消費を後押ししている」(九州・総務担当)との前向きな受け止め方を示す回答があった。

 他には「荷主に新製品製造の予定がある。不安要因もあるが、計画どおりに進めば景気は良くなるとみている」(東北・経営者)、「新年度に向けて取扱量の増加が見込まれるため、今月よりは良い状況が期待できる」(南関東・経営者)、「単価が高止まりしており、物量も増えている」(東海・エリア担当)、「電子商取引の需要は高まり、荷物の個数は増加していく」(中国・支店長)などと説明。

 一方、悪くなるとみている回答者からは「人手不足の影響は配送だけでなく倉庫保管業務にも拡大してきている。値上げも人件費高騰をカバーできるところまでには至っていない」(東海・経営者)ことを理由に挙げる声が出ていた。

(藤原秀行)

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