国交省・平澤自動運転戦略官「実現に向けた大きな第一歩」と評価
豊田通商は1月22日、国内初となる後続車無人システムを使用したトラック隊列走行の公道実証を静岡県内の新東名高速道で実施した。
経済産業省、国土交通省による「高度な自動走行システムの社会実装に向けた研究開発・実証事業」の一環で、豊通は2016~18年度まで同実証を受託。後続車無人システムの開発とテストコースでの検証を進めてきた。今後は2月28日まで複数回にわたって公道実証を行い、実際の走行環境における機能作動やトラック隊列の被視認性・印象および周辺走行車両への影響などを検証する。同日は浜松SA~遠州森町PA間で2台のトラックが本線走行する様子をマスコミに現地公開した。
後続車無人システムによるトラック隊列走行の様子
実験車両は先頭車と後続車の距離・速度を通信で一定に保つCACC制御、車線の維持・変更で先頭車に追従するトラッキング制御、先頭車の運転支援として後続車の後方認識・警報などをミリ波レーダー表示する機能、道路に設置されているLED情報板を活用したインフラ合流支援システムを主要技術として搭載。実験条件は最大3台の隊列で時速70キロメートル走行時の車間距離10メートル、車間時間0.5秒に設定している。ただ安全確保の観点から後続車も含めた全ての車両にテストコースで経験を積んだドライバーが乗り込む。
実証実験で使用されるトラック
当日は経産省製造産業局自動車課の垣見直彦ITS・自動走行推進室長、国交省自動車局技術政策課の平澤崇裕自動運転戦略官が実証実験の概要、自動運転ベンチャーで制御システムを手掛ける先進モビリティ(東京)の青木啓二社長が実験車両および各技術についてそれぞれ解説した。
垣見氏は「政府目標である20年に新東名道での後続車無人隊列走行の実現、22年の商業化を目指して安全第一で今実証実験に取り組んでいきたい。今日は初回ということもあり車両は2台だが順調なら台数・範囲とも今後広がっていくだろう」と展望。平澤氏は「国交省としても自動運転の環境整備、技術開発、普及促進、実証実験、社会実装について関係省庁と連携して全省的に取り組んでいるところ。本日開催される実証実験は20年に新東名道での実現に向けた本当に大きな一歩」とプロジェクトの着実な進展・成果に期待感を示した。
経産省の垣見直彦ITS・自動走行推進室長
国交省の平澤崇裕自動運転戦略官
質疑応答で青木氏は実証実験のポイントに「ハード面では高速道路という環境下で通信が正確に機能するかどうか、運用面については他の一般車両とうまく許容できてお互いが安全に走行できるか」を挙げた。また課題として「最も大きいのは信頼性の問題。無人化となれば何かトラブルが起きたときに救い手がない。トラブルが起きないように安全対策の多重化をさらに進めていく必要がある」と指摘。その上で「現在搭載している個々の技術を組み合せれば基本的に後続無人化は実現できると考えている。引き続き今持っている技術をそのまま積み上げていく」と展望した。
先進モビリティの青木啓二社長
次年度以降の取り組みと見通しに関して垣見氏は「後続無人走行では信頼性が非常に重要。来年度はこのシステムあるいはさらに高度化したシステムによって、後続無人走行が可能な状態に持っていくことが一番大きなテーマになる。隊列走行はまだ世の中にはないものなので、これを皆さんにご理解いただき許容されるような社会性向上の取り組みも行っていく」と言及。
法整備とガイドラインの公表タイミングについて平澤氏は「今回の無人隊列走行は通信による電子牽引の概念が導入されている。昨年4月に決められた制度整備大綱に基づいて電子牽引の検証を行い商業化の前にガイドラインを策定・整備する」とした。
(鳥羽俊一)