JUIDA・鈴木理事長、JapanDroneと次世代エアモビリティEXPOの同開催受け
6月21~23日に千葉市の幕張メッセでドローンの国際展示会「JapanDrone2022」と「空飛ぶクルマ」に焦点を絞った初の展示会「次世代エアモビリティEXPO」が同時に開かれる。都市部上空でドローンの目視外飛行が可能な「レベル4」が解禁されるのを年末に控え、今年は物流へのドローン活用に向け、今まで以上に来場者の関心が高まることが予想される。
両展示会を主催する日本UAS産業振興協議会の鈴木真二理事長(東京大学名誉教授)に、今年の展示会の見どころなどを聞いた。
鈴木理事長(JUIDA提供)
市町村の担当者がドローン活用状況について説明
――今年はやはり、「空飛ぶクルマ」に焦点を当てた展示会を初めて開催されることが非常に目新しく、画期的なことだと思います。あらためまして今年のJapanDroneにかける思いをお聞かせください。
「空飛ぶクルマは今までにもJapanDroneの中で展示コーナーを作っていたんですが、おっしゃる通り、今回は特に『次世代エアモビリティEXPO2022』 ということで、 まとまって1つの展示会をJapanDroneと同時開催します。2025年の大阪万博に向けて官民ともに活動が活発になってきていますので、その辺りも見どころにしたいなと考えています。実機の非常に大きなものはなかなか展示が難しいのですが、そうでなければもちろん展示されますし、国際カンファレンスの中で空飛ぶクルマのセッションに関しても同時並行的に独立して時間を作りました。今回そこが大きな話題の1つかなというふうに思います」
「もちろんJapanDroneもご承知のように、12月から(人口密集地上空を目視外飛行する)『レベル4』解禁(の準備が進められている)というところで、それに向けて皆さんの関心も高くなっています。関連のセッションを準備しています。また、いつもながら非常に皆さん、活発に新しいものを展示される予定です。残念ながら海外からの出展はどうしてもまだ新型コロナウイルス感染拡大の影響で制限されますが、国際カンファレンスの方はリモートやビデオで海外の情報も積極的に発信していけるようにいたします。ご期待いただきたいと思います」
――ここにきて、空飛ぶクルマが国際展示会の1つの大きなテーマになるぐらい注目を浴びている背景にはどのようなことがあると分析されますか。
「もちろん海外で機体開発が非常に活発になってきているということもあるのですが、わが国として見ると、やはり2025年の大阪万博で空飛ぶクルマを実際に飛ばそうという官民挙げての活動がありますので、官民協議会が開かれた4月に、そのあたりの方向性がはっきり出てきたというところもあります。そういう意味では(展示会開催は)ちょうどいいタイミングかなと思いますね」
――大阪万博は空飛ぶクルマについて、人を運ぶというところにかなりフォーカスされている印象ですが、物流への活用についてはどうご覧になりますか。
「どうしても人を乗せるところがフィーチャーされますが、当然物流用途がそれ(旅客輸送)より先行して進むだろうというところで、官民協議会のロードマップでも人を乗せることは大阪万博を契機に利用が本格化するとの想定になっているんですが、物を運ぶことはその前から始めていく姿を描いています。具体的に使われるようになるのは、そちら(物流)の方が最初だというのは間違いないでしょう」
昨年のJapanDroneの「国際カンファレンス」会場
――ドローンはかなり今、社会実装というところまで組み込もうとされている中で、今回のJapanDroneはいわゆるドローン活用のエコシステムを作る足掛かりとして、昨年まで以上にかなり強く期待される部分があると思いますが、いかがでしょうか。
「そうですね。昨年のJapanDroneで(ドローンを荷物配送などに利用しようとする自治体の担当者が出席した)『自治体フォーラム』を開催しましたが、レベル4が解禁されるとはいえ、まだ大都市圏内ですぐにドローンが飛べる状況にはありません。やはり各自治体で、飛べるところで有効にドローンを使っていくというところからスタートしていくのだと思います」
「昨年は5つの道県からご担当の方々が参加され、それぞれの取り組みをご紹介していただいたのですが、今年はもっと現場に近い市町村のご担当の方々に、自治体フォーラム ということで同じように参加いただき、それぞれが抱えておられる社会的な課題とそれにドローンがどう応え、どのように動いていくことを期待されているのか、これから社会実装していく上での課題は何か、といったところでより具体的な話をしていただける機会を作りました」
「ドローンを物流などで活用していくためのエコシステムはやはり、最初は自治体が住民サービスや災害の対応などを確実に進めていくところから始まると私は思っています。物流に関しても、やはり過疎地で個別配送で、各事業者さんが頑張ってらっしゃるというところで、自治体が力を貸してドローンで最後の個別配送の部分を手掛けるといったような試みが今、何カ所かで実際に始まっています。そこがやはり(ドローン物流の)最初のきっかけになるのではないか。今回、その具体的なお話が聞けるのは非常に(意義が)大きいんじゃないかと思います」
――ドローンを物流や災害の領域に使おうという機運は市町村のレベルまで浸透し、盛り上がっているとお感じになりますか。
「それは非常に大きいと思いますね。この間も山梨県の早川町に伺ったんですが、そこは町が中学校の廃校を宿泊型研修施設に生まれ変わらせて、ドローンスクールを設置されたんです。そういった旧施設を利用してドローン スクールを開校することで、町外の方がそこへ来て技能を習得していただくだけではなく、町にお住まいの方々もそういうところでドローンが使えるようにしてもらう。特に若い方々にドローンへ興味を持っていただくことで町を活性化するきっかけの1つにしたいと町長もおっしゃっておられます」
「本当にそういう新しい動きを、過疎地の中でもちゃんと花開かせることができれば、若い人が興味を持ち、地元に残られて活躍されるということもあり得ますし、外部から人に来ていただくことも期待できます。ドローンが非常に地域性にもマッチして、いいのではないかと思います。それはいろんな自治体で今そういう取り組みがあり、特に過疎と言われているようなところの中に、そういう(物流などに応用しようとする)動きが活発なところがあったりとか、同じ山梨県でも違うところで、もっと村の単位でやっておられるところもあったりするとお聞きしています」
「物流事業者の方も、今はそこへ行って自分たちでドローンを飛ばしたりしているのですが、だんだんと地元の方がドローンを実際に使えるようにすれば いろんな自治体で採用されるようになってくるんじゃないか、とおっしゃっていました。自治体間で横の連携をきちんと取れる体制も必要なんじゃないかということで、JapanDroneが1つのきっかけになると思っています」
――自治体の方は一般的に、なかなか先進的な技術を取り入れることにはどうしても慎重というイメージがあります。自治体の方々が率先して実用化に取り組まれているということは、人口減少による物流の停滞などへの危機感が相当強いことの裏返しではないかと感じます。
「そうでしょうね。そういう危機感を皆さん持っておられるのと、それから逆に、過疎だからこそ、 本当に(物流などへのドローン応用を)やらなければいけないみたいなことがあります。リモート教育も、街の中よりも、自宅と学校が離れていて子供たちが移動するのも一苦労だからリモートで学習できるようにするという取り組みは、新型コロナウイルス感染拡大の前から始まっていました。そういう意味では、ドローンも必要とするところから利用が広がっていくのは間違いないと思います」
――JapanDroneは7回目の開催ですが、先ほどお話があった「レベル4」解禁を控えていることもあり、例年以上にやはり、ドローンの社会実装を進めるというところで大きな意味を持ちそうですね。
「そうですね。私もJUIDAの2022年新年のあいさつで、今年は『ドローン社会実装元年』にしたいとお話ししたのですが、まさに今までの実証からどんどん実装へ移っていく、ちょうど今年はそのタイミングになるんじゃないかなと 期待しています。特にレベル4解禁で、今まで許可・申請がなければ飛ばせなかった都市部のDID(人口集中地区)上空も、今後はドローンの機体認証と操縦ライセンスがあれば、街の中でも自由に飛ばせるようになってきます。そうなると、建物の外壁点検など都市部でドローンを必要とされているところからまずは使われるようになってくると思います。なかなか目視外では、街中で飛ばすというのがまだちょっと難しいんですけども、 できるところから広がっていくという意味では、社会実装が本格化するちょうどそのタイミングじゃないかなと思いますね」
――最後に、JapanDroneや次世代エアモビリティEXPOへ来場される方、来場を検討されている方へのメッセージをお願いします。
「ドローンの社会実装を進めるには、やはり先ほどエコシステムという話が出ましたけれども、ステークホルダーの方々との連携が必要になっていきます。自治体だったり、自分で飛ばさなくてもドローンのサービスを提供する方に依頼してやるといったように、いろんな関わりが出てきます。展示会会場にお越しいただくことがそういったネットワークを築くきっかけになってほしいと思っています。なかなか今、リモートの会議だけで新たなネットワークを構築するのは難しいですから、実際のイベントで人と触れ合い、ネットワークを生み出す場としてご利用いただければ幸いです。JapanDroneはBtoBの展示会ということで定着してきました。ますますドローン普及の加速に向けて重要な存在になってくるのではないでしょうか」
(藤原秀行)