【独自】サントリーロジスティクス・武藤社長独占インタビュー(後編)

【独自】サントリーロジスティクス・武藤社長独占インタビュー(後編)

「物流DX実現へ“人と協働した自動化”を進めたい」

サントリーグループの物流を担うサントリーロジスティクスの武藤多賀志社長はこのほど、ロジビズ・オンラインの単独インタビューに応じた。

武藤社長は、物流業務の自動化に関し、完全自動化は災害などで機能が停止した場合、オペレーションがストップしてしまう恐れがあるため慎重に検討すべきだと指摘。不測の事態が起きても物流の継続性を担保できるよう、まず“人と協働した自動化”を展開したいとの考えを示した。

また、AIを活用したフォークリフト操作の安全教育など、先進技術を生かした職場環境改善にあらためて強い意欲を表明。4月から若くて有望な人材を積極的に登用できる人事制度改革を始めたことにも触れ、人手不足対応に注力することをアピールした。インタビュー内容の後編を掲載する。


武藤社長

自動化の範囲は「シンプル・イズ・ベスト」

――御社の場合は、ピッキングの自動化は扱っている商品の重量や種類などから見ても、ちょっとなじまないかもしれないような印象を受けましたが、どのようにお考えでしょうか。
「そうですね、当社は重要のある商品をまとめて取り扱うことが多いですから。自動化を考える上では当然、もっと細かなピッキングができるロボットを今後考えていくこともあるかもしれませんが、正直に申し上げて、現状はシンプル・イズ・ベストだと思っています。自動フォークリフト(AGF)が担っている仕事は、われわれの取り扱う商品で言えば、先ほどもお話しましたが、埼玉の浦和美園の配送センターのように、大容量のミネラルウォーターなどに絞り、チェーンコンベヤと組み合わせて入出荷の作業を24時間体制で任せるという非常にシンプルな仕組みにしているんです」

――細かなピッキング作業の自動化は将来の検討課題というイメージでしょうか。
「ロボット自身がピッキングをするのがいいのか、もしくはAGV(自動搬送ロボット)でそれぞれのロケーションから必要な商品をピッキング作業エリアにまとめて持ってくる方がいいのか、といったことは次のステップとしては考えていきたいですね」

――物流領域の自動化の流れとしては、完全自動化を目指す向きと、人との協働を重視する向きとに大別されていると思いますが、御社の場合は後者の方に重きを置かれているのでしょうか。
「私の持論ですが、完全自動化はリスクが大きいと思っています。私が以前、サントリーグループで営業を担当していた時に、かなり自動化を進めていた倉庫が地震の影響でストップしたことがありました。中に人が入れないし、結局復旧するまで数日間、全く出荷ができなくなったんです。そうしたことを経験すると、自然災害がいつ起こるか分からない中で、完全自動化は、普段はとても便利ですけれども、いざという時、非常に不便なことも起こり得る。やはり、有事の際に人が作業を続けられるよう担保をしておくのは、BCPという観点からも重要だと思っています」

「シンプルな部分は自動化でお願いするし、細かなところで人が差配することによって効率的できる部分はしっかりと残しておいた方がいいと思います。浦和美園の配送センターのAGFも、豊田自動織機さんの製品ですが、いざ止まってしまったり、故障したりした時は人が操作するフォークリフトに切り替えて動かせるよう、豊田自動織機さんにもお願いして準備をしています」

――人が関わる作業が残る以上は、その部分の効率化・省力化は、作業の自動化と同じぐらい重要な課題としてあり続けると思いますが、今後どのように取り組まれますか。
「先日公表した沖縄・豊見城の新たな配送センターは自動化の取り組みの1つであるバース予約システムと荷物の積み降ろしをうまく連携させ、荷役作業を2割程度効率化しようという目標を立てています。サントリーグループの中で総合的に業務を管理できるシステムとして統合WMS(倉庫管理システム)を展開しており、われわれのセンターだけでなく、協力会社さんのセンターでもこの統合WMSをお使いいただくよう推奨しています。統合WMSとバース予約システムを連携させ、うまく運用できることをしっかり検証できれば、協力会社さんのセンターにも横展開していきたい。そのためにも、まずはわれわれがバース予約システムのノウハウについてきちんと習得していく必要があります」

「バース予約システム以外にも、AGFやAGVなどと統合WMSをどんどん組み合わせていくことによって、機能性を高めていくというのが今、われわれサントリーロジスティクスが目指しているDX化なのです」


埼玉の浦和美園配送センターに導入したAGF

――AGFは既存の倉庫にも採用していきますか。
「今はまだ、1台当たりの価格が非常に高いですし、おそらく新規の倉庫は導入できると思いますが、既存倉庫にAGFをどんどん入れていくかというと、たぶんコスト面でも、スペースの問題でも、ロケーションの設計でも大変でしょう。比較的、バース予約システムに関しては既存の倉庫にも展開しやすいですが」

――統合WMSは無人受付システムやドライバーのアルコールチェックシステムにもつなげていけそうです。他にも統合WMSと連携させる機能が出てくる可能性はありますか。
「ありますね。業務効率化のために必要な機能が出てくれば、付加価値を高めていくことはしていきたいなと思います」

――先進技術の活用という点では、御社は物流拠点内でフォークリフトのオペレーターが安全に運転できているかどうかを判定、指導する業務でAIを本格的に活用されています。フォークリフトに取り付けたドライブレコーダーで撮影した画像をAIで定期的にチェックし、危険な運転を迅速かつ確実に検出しようとしています。その後、進捗はありますか。
「システムを共同で開発した富士通さんとさらにブラッシュアップをしています。例えば、最初に取り組んで開発したシステムは、指差し呼称という非常に小さな動作が正しく行われているかどうか、AIでは全てのケースを評価しきれていなかったんです。それを肘をはじめ、いろんな体の部位の動きを全部チェックできるようにして、指差し呼称に関する判断の精度を上げることができました。今はもう、システムをわれわれの全拠点で展開しています」

「このシステムは協力会社さんの中でご興味を持っていただいているところが出てきていますので、そこはぜひ展開していきたい。われわれはサントリーグループ全体で安全体制確立のための取り組みには非常に力を入れています。安全のための施策はやってもやってもきりがないんですが、時間をかけすぎても、それはそれで業務が非効率になる部分もありますから、このようなシステムを効率的な安全指導、安全教育のツールとしてうまく使っていただきたいなと期待しています」

――AIが見るポイントは動作のうち、主要な3点に絞り込んで、その3点がきちんとできているかどうかというところからまずスタートしたと聞きました。
「そうですね。1つ目は一旦停止がきちんとできているか、2つ目は“ながら操作”をしていないかどうか、3つ目は指差し呼称ができているかどうか、です。その指差し呼称は先ほどもお話したように、人によっては動きが小さい。本当に手を大きく伸ばして指差しをしてくれればチェックできるのですが、指だけで動かす方もいる。その確認精度を上げないと、当初考えていた3点を完全には分析できないので、富士通さんにもいろいろと考えていただいたんです。そのブラッシュアップの効果として、3点に関するスコアリングの結果がより信頼できるものになってきました」

――他のポイントもAIが判断できるようにする予定はありますか。
「3点に絞ったのは、まずこの3点をしっかりとやることで、安全に対する教育、ポイントの大きな部分を押さえられると思ったんです。われわれが目で見てチェックしている際は確認するポイントが23項目もあるんですが、AIで23項目全部やるというのも実際、ちょっと難しい部分があるので、やはり一番事故が起こらないようにするために大事な要素のトップ3を、AIでしっかりチェックしてもらう、それがうまくできていない乗務員の方には指導のツールとして実際に画像をお示ししています。今は安全の担当者が80分ぐらい、撮影した動画をずっと通して見る必要もなく、問題がある箇所をすぐに映し出せるため、ポイントポイントで動画を示し、ここのところを直してください、ここのところは気を付けてくださいという指導ができるツールになってきています」

――成果は出ていますか。
「全てがAIシステムの効果かどうかは分かりませんが、倉庫内の事故や汚破損はすごく減っていますね」


AIによる危険動作検知の仕組み(サントリーロジスティクス提供)

――現場の意識は相当、AIシステム導入で変わりましたか。
「そうですね、当初はドライブレコーダーを付けて、24時間ずっと監視されていることに対し、乗務員の皆さんから本当に嫌がられました。一挙手一投足を全部チェックされますから、トラックドライバーが最初にドライブレコーダーを車両に導入した際、嫌がったのと同じだと思います。ただ、システムを入れる意味合いを、しっかりと研修などの場でオペレーター1人1人の意識に落とし込んでいくことにより、皆さんが人を傷付けない、自分も怪我をしない、当然事故を起こさないということを実現できればお互いハッピーだと理解してくれるようになりました。今はいいスコアを出さないと、という方に乗務員の皆さんの気持ちが向かっています」

「これはまず、当社の正社員が当然一生懸命取り組まなければいけないことですが、毎年春と秋にフォークリフトのオペレーションの総点検という活動をする中で、委託会社の方々も、正直に申し上げると以前は作業される方によって、安全への意識にばらつきがすごくあったんです。しかし、こういう取り組みをしていくことで、委託会社の方たちもだんだん皆さんがそろって安全への取り組みを強く意識されるようになっています。いろんな研修や勉強会を通じて、委託会社の皆さんの方が熱心に取り組まれている。これは本当に有難いことですね」

――技術が人の意識を変えられるという好循環ですね。
「そうですね。オペレーターの運転の評価は上からS、A、B、C、Dという5つのクラスで設定しているんですが、今はもう最低でもA以上を目指そうという方がすごく多くなりました。実は昔は、CやDのクラスの方が1割程度、必ずいたのですが、今はまず見られません。Aクラスで9割程度を占めています」

――そうした状態をいかに継続していくかも重要ですね。
「安全に関しては終わりはないので、継続しないといけないですね」

QRコードで「安全の真意」を伝える

――他に安全教育で新たな技術を使おうとお考えになっていることはありますか。
「年1回、現場で5S大会を開催してしまして、どんな改善活動をするのか目標を決めて取り組むんですが、その中で、輸送の際にいわゆる養生しなきゃいけない、製品と製品の間に緩衝材やパネルを入れて運ばないといけない場面があるのですが、そうした技法を伝えるための研修や勉強会の場になかなか参加できない協力会社さんがあるんです。サントリーグループが考えている完全な養生とはどういうものか、本来はこういう状態の養生で輸送してほしいということを十分に伝えきれていなかった。そこで、QRコードを読み取ってもらうと、短時間の動画で養生の仕方を説明できるようにする、もしくはSMSを送り、見てもらってから輸送してもらうとか、現場のアイデアとして出てきているんです。これはもっと広めていきたいですね」

――改善のヒントを現場の方が出されるようになっているということ自体が良い傾向ですね。
「そうですね、われわれだけでは考えることにも限界があります。現場にヒントがたくさんあると思いますので、以前から展開していることではありますが、この1~2年、特に若い人から良いアイデアが多く出るようになってきました。QRコードを使うという発想は私自身、なかったですから、みんなで展開しようと取り組んでいます」

――他にも面白いアイデアはありますか。
「フォークリフトオペレーターのリーダークラスの方々を、事務所の同じ倉庫の中だけで研修していたんですが、そこにとどまらず、たすきがけ研修をしようということになりました。Aという倉庫に長く所属している人は研修でBの倉庫に行く、逆にBの倉庫の人はAで研修してもらうといった具合です。別の倉庫へ出張で研修してもらい、今までは自分の担当している倉庫の中だけでしか分からなかったことが、たすきがけで他の倉庫のことも理解できるようにしています。研修でいつもとは違う人の視線で物事に触れられますし、それが逆に共通意識になってくるということも期待できます」

――物流業界は、トラックドライバーの長時間労働規制が強化される「2024年問題」が避けられない課題としてありますが、御社としての対応は順調に進んでいますか。
「順調かどうかは、2024年問題への体制がまだ立ち上がっていないので不安な部分はありますが、逆に言えば、サントリーロジスティクスだけでは全部に対応できませんから、それぞれの協力会社さんとアライアンスを組んでいかないといけないこともいっぱいあります。われわれにとっての荷主であるサントリーホールディングスの物流部とのネットワークや、輸送のエリア需給化をどう推進していくか、長距離化をどれだけ減らしていくのか、場合によってはモーダルシフトの比率をどこまで上げるのか、当然荷主からこれくらいの比率でやってくださいという中で、われわれはスキームを考えていかないといけないので、そういうところを今、具体的にどうするとコストと2024年の労働問題をバランスよく解決できるのか、どういう比率なのか、どのエリアをどうすればいいのかとまさに検討しているところです」

「今、現場としてやらなければいけないのは、やはり乗務員さんの労働時間の問題がありますから、それを改善していくことです。新しいスキームは、今は一般的にスイッチ(中継輸送)がよく言われていますが、スイッチと一言で表してもなかなか容易には行きません。ただ、そういうものも検討はしています。あとはモーダルシフトとして、船(フェリー)や鉄道をどう活用していくかということも必要でしょうし、SDGs絡みでも、サントリーホールディングスとして、GHG(温室効果ガス)排出削減で非常に大きな目標を掲げていますので、それに向けて、われわれ物流サイドでどういうふうに対応していくかということも併せて考えていかないといけません」

――先ほどもお話があったサントリーグループの「エリア内需給」の進捗状況は?
「製造委託工場がどんどん増えている中で、製品のブランドも増えていますから、事業会社とSCMとわれわれ物流現場が一緒になって、うまく取り組んでいかないといけない。関係者が一体感を持っていくことがこれからすごく大事だと思います。例えばAという商品がとてつもなく売れると製造量が増えますので、出荷の部分でどう効率良く運ぶかという問題も生じます。事業会社やSCMとわれわれ本当の実輸送部隊が一体となる体制、情報の共有化を進める上でいかに一気通貫していくか。関係者間の情報共有がすごく重要性を増してきていますので、グループ他社と一緒になって取り組ませてもらっています」

――一般的には、まず特定のエリアで試行して、課題を検証しながら広げていく、というやり方になると思いますが、いかがでしょうか。
「今、実際にも首都圏の中ではかなりエリア内需給が進んでいます。やはり全国で一番大きな消費地ですから、工場も当然、東関東には多く存在しています。その中でいかに作ったものをダイレクトにエリア内の消費者へ持っていき、うまく消費してもらえるか。その取り組みは既にスタートしています。大消費地が一番、アウトプットが出やすいですから、まずは首都圏の北関東エリアのところで優先されると思います」

――完成するタイミングはいつごろを見通していますか。
「具体的にはまだ申し上げにくいのですが、1年単位で改善していくということだと思います。物流費はこれからも高くなっていくことが見込まれる中、その上げ幅をどのようにコントロールするかということだと感じています。(サントリーHDの)物流部がまさに戦略を練って、事業会社と輸送のタイミングのやり取りをしてくれていますので、それを受けてわれわれが効率的に、しっかり運んでいく機能を担います。先ほども申し上げた通り、その一体感が大事です。特にわれわれはメーカーの物流子会社ですから、その一体感をどう醸成していくかが一番のポイントです」

――人手不足への対応はいかがでしょうか。
「大事なのは人を育てることだと思っています。サントリーホールディングスの仕組みも参考にしながら、人事制度改革を今年の4月、2年越しでやっと立ち上げられました。若くてやる気のある有望な社員を積極的に登用、昇進できるようにすることが柱です。昇格するに当たってはそれぞれこういう技術、こういう知識が必要と明示し、その都度習得するために受けてもらう研修や試験のプログラムを全部作りました。もちろん採用で人を増やしていくということも大事ですが、今いる人間1人1人のポテンシャルを上げていくことも重要ですので、並行して取り組んでいこうとしています」

――社内の意識変化は感じていますか。
「そうなってきていますね。この4月に人事精度改革を立ち上げるのに当たり、社内向けの説明会を開催し、まずはエントリーしてくださいと呼び掛けたところ、結構応募が殺到しまして、1人1人のうちの社員のモチベーションの高さに驚いています」

――うまく取り組みを回していければ成果が上がりそうですね。
「そうですね。DXにしても人事制度にしても、この1年、2年かけてやってきたものが今やっとスタートしたところで、本当に今後半年、1年の中でどういうふうにしっかりと進めていくかというのが、われわれにとって一番大事なポイントです」

「これからはパートナーの皆さんにとっても、われわれの輸送にとってもプラスになるような、ウィンウインの関係をしっかりと、われわれの営業部隊や物流現場のメンバーが作り上げていくのがすごく大切であり、全社を挙げて取り組んでいますし、当社としてもう一段次のステージに進められるような仕組みも考えているところです」

(藤原秀行)

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