【独自】高性能な中小規模の物流施設に焦点、働く人の「ウェルビーイング」実現目指す

【独自】高性能な中小規模の物流施設に焦点、働く人の「ウェルビーイング」実現目指す

開発に新規参入したクレド・アセットマネジメント 塩田社長単独インタビュー(前編)

新たに物流施設開発に参入した、不動産のアセットマネジメントやコンサルティングを手掛けるクレド・アセットマネジメントの塩田徳隆社長はこのほど、ロジビズ・オンラインの単独インタビューに応じた。

塩田社長は中央信託銀行(現三井住友信託銀行)、プロロジスを経て2009年からGLプロパティーズ(現日本GLP)で大規模物流施設の開発や物流施設を投資対象としたファンドの組成などに携わった経歴を持つ。2021年3月にクレド・アセットマネジメントを立ち上げた。

塩田社長は新会社設立の狙いとして、大規模な案件から中小規模まで幅広いタイプの物流施設開発を進める方針を表明。その一環として、底堅いニーズが見込める高性能な中小規模の物流施設に焦点を当てる意向を示した。

また、延床面積が数千坪の案件でも倉庫エリアの使い勝手改良に加え、事務所スペースの快適性向上などにも取り組み、働く人の心身の健康や幸福を実現する「ウェルビーイング」を重視することで差別化していきたいとの考えを強調した。前後編の2回に分けて発言内容を紹介する。


塩田社長(クレド・アセットマネジメントホームページより引用)

建物の規模が小さいからこそできることもある

――まず、新たに会社を立ち上げた背景からお聞かせください。
「昨今は大規模なマルチテナント型の物流施設が多く開発されていますが、一方で中小規模の物流施設に対するニーズも結構あると思っています。そうしたサイズの物件を1社専用で使いたいとのご要望も根強いですし、小さなものから大きいものまで幅広いニーズに応えていきたいと考え、弊社を設立しました。小規模であっても高機能で高品質な物流施設を提供できるチャンスがあると思っています」

――前職の日本GLP時代からそうしたニーズは感じていましたか。
「そうですね。それに、大規模な物流施設用地の取得競争は激しいですが、中小規模の物流施設であればまだそこまで競争も激しくありません。当社が自社開発の第1号案件として手掛けている埼玉県伊奈町の『CREDO桶川伊奈』のような中小サイズのボックス型に対しても十分ニーズはあるんじゃないかなと感じています」

――第1号案件のある圏央道のエリアはかなり前から着目していましたか。
「前職時代から、圏央道沿線は埼玉の狭山日高や神奈川の相模原、茨城の五霞など幅広いエリアで取り組んできました。今回の桶川伊奈は東北自動車道と結節している久喜白岡JCTに非常に近く、さいたま市中心部にも近接していますし、東京都心にもそんなに遠くはありませんから立地としては非常に面白い場所かなと思っています」

――圏央道は大きな開発候補エリアですか。
「そうですね。都心に近くなると当然、土地代が上昇し、お客様に提供できる賃料も高くせざるを得ません。物流企業の方々にとって魅力的な坪当たり3000円台から4000円台という賃料を実現できるという意味では、圏央道は引き続き面白みがあるのではないでしょうか」

――圏央道の沿線も開発が進んできましたし、物流施設の進出候補地としては圏央道が開通し始めた数年前より意味合いがだいぶ変化してきたと思います。
「4車線化も進んでいますし、だいぶ変わってきましたね。今は交通量もかなり増えました。それだけに、お客様のニーズもかなりあると感じますね。お客様の物流施設のニーズは、やはり2つに大分されると思うんです。月額4000円後半から5000円ぐらいの水準でも都心に近いエリアを選ばれるか、圏央道沿いで3000円から4000円ぐらいの水準を選択されるか。それぞれにニーズはありますから、圏央道エリアはわれわれがメーンの1つに考えている中小規模の物流施設を開発する上でも非常に合っています」

――第1号案件の建設地はどういった場所だったのでしょうか。
「元々は工業団地の中の、古い倉庫がある場所でした。ほとんど有効活用されていなかったので、更地にした上で新たな物流施設を開発することにしました」

――現在のように開発用地の取得が難しくなっている中では既存物件の取得・再開発が1つの有効な手段になりそうですね。
「そうですね、工業団地の跡地ですとか市街化調整区域は引き続き開発候補として重要になってきますし、企業の方々も有効活用されてなかった資産をうまく生かしたいというご要望がありますので、今回のようなパターンには引き続きトライしていきたいですね」

――今回は延床面積が約1万平方メートルですが、これが御社の物流施設開発で1つの大きなモデルとなりそうでしょうか。
「今回の案件が私どもとして一番小さい規模になりそうですね。用地が1500坪から2000坪ぐらい、物流施設が延べ床で3000坪から4000坪ぐらい、というところから幅広く手掛けていきたい。第1号案件くらいのサイズは十分ニーズがあると思っていますので、 ちょうど良い規模ではないでしょうか」

――第1号案件のプレスリリースでは「テナントの将来的なニーズに対応する各種オプションを準備している」と説明していました。具体的にどういったものを想定していますか。
「基本的には普通に使いやすい倉庫にすることを意識していますが、お客様の要望で例えば空調設備を導入したり、非常用発電装置を取り付けたり、あとオフィススペースを拡張できるようにしたりといったことですね。そうしたものをオプションとして取り揃えて、必要なお客様には適宜、追加でご提案していこうと考えています。最初からいっぱい機能を付けてしまうと、やはりどうしても賃料に反映させざるを得ませんので」

――使いやすい倉庫、という点ではどういったことにこだわっていますか。
「1階をブレース(筋交い)のない構造にして空間を確保し、搬出入作業を効率良く進められるようにしました。他にも、最上階は天井高を通常の5.5メートルから6.8メートルくらいまで高くし、荷物の保管効率を向上させています。もちろん、今主流の大規模なマルチテナント型物流施設では既に当たり前の機能だと思いますが、これぐらいの中小規模の物流施設ではまだまだ一般的ではありません」

「さらに、エントランスやオフィスエリアには木目調の落ち着いたデザインを採用するなど、働く方々のウェルビーイングを強く意識していきます。現在は最上階に太陽光発電パネルを設置し、庫内の電力を賄うことも検討しています。このあたりの取り組みも大規模な案件とは異なり、3000~4000坪規模の物流施設ではまだまだ十分ではないと思いますので、われわれが率先して実現してきたいですね」

――最近需要が高まっている冷凍・冷蔵設備も対応可能ですか。
「可能ですが、当然ながら冷凍・冷蔵設備を入れると天井高が低くなってしまいますので、まずは通常のドライを基本に考えています」

――中小規模の物流施設でスペックを高めていくのは1つの大きな差別化のポイントになりそうですね。
「先ほどもお話したのですが、やはり小規模なものは当然ながら、まだ大規模な案件ほどはスペックが高くありません。倉庫部分もそうなんですが、オフィススペースや共用部分についても十分ではないと思います。全体の倉庫面積からすると、オフィススペースが占める面積は2~3%しかありませんが、その部分にもう少しお金をかけて、働く方々の快適性を高めていくことが必要だと感じています。天井高をちょっと上げるだけでも開放感がだいぶ変わります。中小規模の物件であっても、そうしたところのグレード感を高めてウェルビーイングを追求していくという姿勢は、おそらく同業他社の方々とちょっと違う部分ではないでしょうか」

――ウェルビーイングという点で新しく考えていることはありますか。
「詳しくはまだ申し上げられないんですが、今われわれはシェアオフィスを使っているのですが、こうしたところからも学ぶことは多いですね。働かれる人が気持ち良く仕事できるような工夫がされています。シェアオフィスで仕事をする中でいいなと感じて、物流施設に取り入れたいと思うようなことも結構多くあります。例えば、非接触の自動ドアのようなものですね。仮に新しいものを採用したとしても、大規模な物流施設とは違って、数をたくさん入れる必要はないですから、そこまで費用は掛かりません。建物の規模が小さいからこそできることもあります」


「CREDO桶川伊奈」の竣工イメージ(クレド・アセットマネジメント提供)

保有不動産の有効活用提案にも意欲

――今後の開発の展開は?
「既に複数の開発用地を取得したり、取得に向けて交渉を進めたりしています。関東と関西の両エリアで積極的に事業展開を図っていきます。案件についても、中小規模のものに加えて、もう少し大きなサイズのものにもトライしていきます」

――関西エリアでも中小規模のサイズはニーズがありそうですか。
「そう思っています。1社で使いたいというご要望もありますね」

――中長期的に目標とされていることはありますか。
「最初にも申し上げた通り、むやみに規模を追うことなく、小規模なものから大きなものまで幅広くお客様のニーズに応えていきたいですね。われわれは独立系ですので、1社単独で事業を進めるのが基本ではありますが、他のデベロッパーの方ですとか、保有不動産の有効活用という観点から企業の方々と一緒にプロジェクトを進める共同投資も積極的に手掛けていきたいと思います。保有する土地の有効活用のコンサルティングといった形でも参画させていただけます」

――CRE(企業不動産)のコンサルティングもニーズは見込めますか。
「ありますね。私は元々、銀行員だった時に、そうした遊休資産を有効活用するためのご提案の仕事をずっと長くやってきました。私自身、そうした仕事をやりたいと昔からずっと思っていましたので、今後もぜひそうした形でお役に立ちたいですね」

後編に続く)

(藤原秀行)

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