改善基準告示改正、トラックドライバーの1カ月当たり拘束時間上限などでまだ意見固まらず

改善基準告示改正、トラックドライバーの1カ月当たり拘束時間上限などでまだ意見固まらず

厚労省審議会の作業部会が方向性案提示、1日は「最大13時間」維持

厚生労働省は8月18日、東京・霞ヶ関の同省内で、労働政策審議会労働条件分科会自動車運転者労働時間等専門委員会のトラック作業部会を開き、ドライバーの労働時間などを規制する「改善基準告示」の改正に関する方向性の案を提示した。

1カ月当たりの拘束時間は「『274~284時間』を超えないものとする」と設定した上で、労使協定を結んでいる場合は1年のうち6カ月までは「1年間の拘束時間が『3300~3408時間』を超えない範囲で、『294~310時間』まで延長できる」と特例を表記。併せて、特例の上限を294時間より長い水準に設定する場合は「294時間を超える月が3カ月を超えて連続しない」ことも定めている。

現状の1カ月当たり拘束時間293時間、労使協定締結時は6カ月まで年間拘束時間3516時間を超えない範囲内で月320時間まで延長可能との規制から強化。ただ、経営側と労働側で意見の対立が解消されていない現状を踏まえ、拘束時間上限は現時点で確定させず、幅を持たせた表現となっている。


トラック作業部会の会合

1日の拘束時間や休息期間に関しては、「勤務終了後に継続して11時間以上の休息期間を与えるよう努めることを基本とし、継続9時間を下回らない」と設定。1日当たりの拘束時間は13時間を超えないものとし、延長する場合も最大15時間と規制。この場合、1日当たり14時間を超える回数をできるだけ少なくするよう努めることを盛り込んでおり、厚労省は具体的な目安として「1週間に3回以内」を通達で示す案を打ち出している。

現状は1日当たりの拘束時間について、13時間を超えないと定め、延長する場合も16時間と上限を設定。1日当たり15時間を超える回数は1週間当たり2回以内と定めている。また、勤務終了後は継続8時間以上の休息を与えると義務づけている。

運転時間の規制については「2日を平均して1日当たり9時間、2週間を平均して1週間当たり44時間をそれぞれ超えないようにする」との現状の内容を維持することを示した。

連続運転時間に関しては、現在は「1回が連続10分以上で、かつ合計が30分以上の運転の中断をすることなく連続して運転する時間」が4時間を超えないよう定めているのに対し、改正案は「1回が連続10分以上で、かつ合計が『30~45分以上』の原則休憩をすることなく連続して運転する時間」が4時間を超えないようにすると提示。高速道路のSAやPAに駐車できない場合は、4時間半まで延長できることを新設している。原則休憩の長さをめぐって委員の間で意見が分かれているのを受け、拘束時間規制と同じく幅を持たせている。

1台に2人以上乗務する場合の特例は、新たに長さが1.98メートル、幅が80センチメートル以上など一定の条件を満たす車両内ベッドを備えている場合、最大拘束時間を20時間から24時間まで延長できるほか、当該ベッドを使って8時間以上仮眠する場合は拘束時間を28時間まで延ばせるようにすることも提案。その際は、勤務終了後に継続11時間以上の休息期間を与えることも示している。

他にも、事故や故障、災害など「予期し得ない事象」に遭遇し、一定の遅れが生じた場合、「客観的な記録が認められる場合に限り、1日の拘束時間、運転時間(2日平均)、連続運転時間の規制適用に当たっては、その対応に要した時間を除くことができる」との特例も提案。勤務が終わった後は、通常通りの休息時間を与えると設定している。

この日の会合では、経営側の委員が拘束時間の規制について、長距離運行で不測の事態に備えて1カ月当たりで特例の320時間を残すよう要望したのに対し、労働側の委員は1カ月当たりの拘束時間上限は274時間との従来主張を繰り返し、特例の場合も320時間は「議論の遡上に乗らない」と拒否するなど、意見の対立が依然目立った。

厚労省は今年夏をめどに改善基準告示の見直し内容を決定したい考え。経営側と労働側の主張の隔たりはまだ解消されておらず、意見調整作業の加速が求められている。

(藤原秀行)

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