JLLリポート、コールドチェーン市場は年平均12%成長と展望
JLL(ジョーンズ ラング ラサール)は9月21日、アジア太平洋地域の冷蔵倉庫市場に関するリポートを公表した。
中産所得層の急激な増加、食品のECやオンライン配送サービスの成長などを背景に需要が拡大していると分析。今後10年で冷蔵倉庫への投資額は40億~50億米ドル(約5800億~7300億円)と現状の5倍に拡大すると予想している。
既存ストックの2倍以上が必要
リポートは冷蔵倉庫に関し、クレジットイベント(市場・経済に悪影響を及ぼす社会的事象)に強い不動産投資セクターとして、新型コロナウイルス禍以降、急速に存在感を高めていると解説。「より魅力的な利回りを求めて一部の先進的なグローバル投資家は冷凍倉庫に着目している」と指摘している。
温度変化によって劣化する新型コロナワクチンの供給・保存先としての存在に加え、目下の食糧不足への対応など、世界的な課題に対し大規模かつ信頼性の高い冷蔵倉庫の重要性が高まっていると説明。特に、急激な中産所得層の増加と消費意欲の高まりを受けるアジア太平洋地域では、コロナ禍を受けてオンライン注文による食品や料理の配送サービスなど爆発的に利用者が増えていることに言及した。
(JLLリポートより引用)
冷蔵倉庫への急激な需要拡大によって、「アジア太平洋地域では既に深刻な供給不足に陥っている」と強調。単純計算で既存ストックの2倍以上に相当する5億平方メートル程度の新規供給が必要との見方を示した。さらに、膨大な電力消費を伴うため、既存施設には高度な環境対策が求められており、「今後は既存施設の建て替えなど、新規供給が加速する」との見通しを明らかにした。
その結果、アジア太平洋地域の冷蔵倉庫市場の投資は今後10年で5倍増、少なくとも40億~50億米ドルに達する可能性があり、同地域のコールドチェーン市場は2021~28年にかけて年平均成長率(CAGR)12%の成長が見込まれると推計。「これは控えめな予測で終わる可能性もある」と前向きな見方を表明した。
JLLが2021年に実施した「Future of Global Logistics Real Estate」調査によると、「アジア太平洋地域の冷蔵倉庫需要は今後3年で20%以上増加するか」との問いに対して「同意する」「強く同意する」が計91%に上った。リポートは「冷蔵倉庫セクターがグローバルなサプライチェーンに不可欠な存在として広く認知されていることから、今後は独立したアセットクラスとして、投資家にとっては相応のポートフォリオ配分が必要になるだろう」と総括している。
(藤原秀行)