【独自】船舶や鉄道へのモーダルシフト、製造業の関心高さ裏付け

【独自】船舶や鉄道へのモーダルシフト、製造業の関心高さ裏付け

「ホワイト物流」宣言で選択が4割に

政府が物流事業者や荷主企業と連携してトラックドライバーの就労環境改善などを目指す「ホワイト物流」推進運動の中で、長距離輸送を従来のトラック一辺倒から鉄道貨物やフェリーの活用に切り替えていくモーダルシフトへの注目度が目立っている。

今年9月末時点で同運動に賛同、自主行動宣言を発表し、具体的に取り組む項目を開示している製造業374社のうち、41.4%に相当する155社がモーダルシフトの推進を選択している。運輸・郵便業の19.5%(141社)を大きく上回っており、荷主として製造業が自発的にモーダルシフトを進めようとしている動きがあることがうかがえる。

荷主企業の間でも、トラックドライバーの長時間労働規制が強化される「2024年問題」への対応が急務との意識が高まっているようだ。ただ、ホワイト物流推進運動の自主行動宣言はあくまで「公約ベース」の取り組みのため、実際にモーダルシフトを実行に移し、効率的に稼働できるよう工夫することがあらためて強く求められる。

顔ぶれは多様、「運送内容や費用負担の見直し」に言及も

「船舶や鉄道へのモーダルシフト」を選んだ製造業の顔ぶれを見てみると、自動車や製薬、化学、製紙、食品、精密機器と多岐にわたっている。ランダムにピックアップしてみても、

・長距離輸送について、トラックからフェリー、RORO船や鉄道の利用への転換を行う。この際に、運送内容や費用負担についても必要な見直しを行う。(旭化成)
・モーダルシフトを推進し、新たな輸送手段の確保、ならびに二酸化炭素排出量の削減など環境負荷の軽減に取り組む。(キリンビール)
・現状の環境変化を的確に捉え、RORO船や鉄道輸送への転換を進めている。(日本製鉄)
・船舶や鉄道の輸送を活用することで、長距離トラック輸送の削減や環境負荷低減に努める。(東芝)
・長距離輸送は、トラックからRORO船や鉄道の利用への転換を進めている。(トヨタ自動車)
・長距離トラック輸送の鉄道・船舶へのモーダルシフトを推進し、物流安定化とエネルギー原単位の向上に努める。(三菱ケミカル)
・ドライバーの負荷軽減のため、長距離輸送についてトラックからフェリーや鉄道利用への転換を行う。(明治)

など、ドライバーの負荷軽減や環境への配慮としてモーダルシフトを行うことを明確に打ち出している。

製造業ではこのほか、運送内容の見直し策として「パレット等の活用」(54.3%)、「リードタイムの延長」(29.2%)、「発荷主からの入出荷情報等の事前提供」(24.1%)、「出荷に合わせた生産・荷造り等」(22.5%)、「運転意外の作業部分の分離」(21.4%)といったところが目立った。

最近では、製造業でも新規の運動賛同表明が1カ月当たりで1桁にどとまっており、ホワイト物流の理念が風化しかねない状況となっている。今後は再度、荷主企業を中心としたホワイト物流拡大の機運を盛り上げていくことが、2024年問題を乗り越えていく上でも不可欠だ。

(藤原秀行)

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