【独自取材】三菱UFJリース、物流施設分野に注力

【独自取材】三菱UFJリース、物流施設分野に注力

CPDと連携、三大都市圏中心に先進案件の掘り起こし目指す

 三菱UFJリースが、物流施設への取り組みに注力している。以前より不動産を重要分野と捉え、デベロッパー向けのノンリコースローン(対象の不動産から生み出されるキャッシュフローや処分した際の価値を返済原資に充てる融資)やエクイティ出資などを通じて優良物件の開発・再生を支援。

 その中でも物流施設はeコマースの成長などで引き続き安定した収益が見込めるアセットと期待、ノンバンクとして適切なファイナンス手法を柔軟に活用するなど、積極的にデベロッパーら関係者をサポートしていく路線を鮮明にしている。

 昨年10月には物流施設の開発・運用に特化した投資助言会社のセンターポイント・ディベロップメント(CPD)に33%出資、持ち分法適用関連会社としたことを発表した。CPDとタッグを組み、三大都市圏を主軸に優良な投資案件の掘り起こしを図るのが狙いだ。

 物流関連ではコールドチェーンへの需要も今後さらに伸びてくるとみており、これまでリースで培ってきた優良設備導入支援のノウハウを生かせると意気込んでいる。

“開発型エクイティ投資”を展開

 三菱UFJリースは三菱グループ系のリース大手として、情報関連機器や産業工作機械、車両、医療機器など多様な分野で事業を展開。不動産分野については、地主から用地を借り受けてテナント企業が望む仕様の建物を開発、貸し出す「不動産リース」、デベロッパーへの「ノンリコースローン」、テナント企業が店舗やオフィスビルなどを借り受ける際の「入居保証金流動化」といったサービスを幅広く手掛けている。

 併せて、築年数が経過したオフィスビルなどをリニューアルし、不動産としての収益力を高める「不動産再生投資」にも注力。ファイナンス手法などに関するノウハウを蓄積してきた。

 17~19年度を対象とする現行の中期経営計画「Breakthrough for the Next Decade」は重点産業分野の一角に不動産を位置付けており、その中でも「大型物流施設の開発ステージへのファイナンス」といった取り組みを強化する方針を鮮明に打ち出している。ファイナンスを通じてパートナーと事業のリスクをシェアする手法を同社は“開発型エクイティ投資”と称している。

 中計は最終年度の19年度(20年3月期)に連結純利益を16年度(17年3月期)から約100億円積み増した630億円以上にすることを計数目標に掲げている。このうち不動産全体では連結純利益で20億円伸ばすシナリオを描いており、需要が伸び続けている物流施設も増益に寄与できると見込む。

 同社はこれまでにも、17年から不動産大手の東急不動産が初めて手掛ける物流施設「(仮称)春日部物流センター」(埼玉県春日部市)の開発にケネディクスとともに名を連ねたり、18年には三菱地所やラサール不動産投資顧問と共同で進めてきた物流施設「ロジポート大阪大正」(大阪市)の完成にこぎ着けたりと、着々と実績を重ねてきている。


「ロジポート大阪大正」の外観(ラサール不動産投資顧問など提供)

 三菱UFJリースの田中秀和執行役員不動産事業部長は「ノンバンクならではの柔軟性と、アセットに関する専門性を発揮できるのが当社の強み。物流施設に関してはさまざまなデベロッパーの方々などと組むことで、当社としても知見を吸収することができる」と開発に参画している成果を強調する。


物流施設への取り組みを語る田中執行役員

「ひと手間もふた手間も惜しまない」路線を後押し

 そうした流れの中で、CPDとは11年の設立以来、開発案件への投融資などを通じて密接に物流施設開発プロジェクトへ携わってきている。18年には千葉県松戸市でCPDや東急不動産とともに開発してきた「CPD松戸Ⅰ物流センター」が完成、段ボール大手のレンゴーが新たな物流拠点として利用することを決めた。松戸市では同じ顔触れで既に「(仮称)CPD松戸Ⅱ物流センター」の開発計画にも着手、今月末ごろの完成を見込む。


「CPD松戸Ⅱ」の完成予想図(同社など提供)

 CPDは用地を取得して施設を建てるという一般的な開発手法に固執せず、既存の工場を物流施設に改修するなど、投資家のニーズや開発対象エリアの特性などを踏まえ、柔軟にスキームを構築する「ひと手間もふた手間も惜しまずに費やす開発」をモットーとしている。三菱UFJリースがファイナンスなどの面で、CPDの独自路線を支え続けてきた格好だ。

 三菱UFJリースがCPDの第三者割当増資を引き受けたのも、同社の姿勢を評価した結果だ。両社が組成した投資ファンドには海外の著名な機関投資家も参加。三大都市圏と福岡県をメーンの対象に据え、1件当たり30億円以上をめどとした投資を目指している。物件の資産規模は今後3年間で1000億円を想定、物流施設以外の有望な産業用施設にも機会があればトライする構えだ。既に三菱UFJリースからCPDへ人材を派遣するなど、連携体制が稼働している。

 近年は冷凍・冷蔵施設へのニーズが高まっているのを受け、三菱UFJリースとしてもコールドチェーンを支える冷凍・冷蔵設備の整備を支えていきたいとの思いがある。CPDも同様のスタンスだ。

 田中執行役員は「コールドチェーンに関してはこれから取り組みを本格化していくが、リース会社としての経験を十二分に発揮できると感じている」と意気込む。優良な物流施設開発に参画するため、三菱グループ内の多様なリソースをより積極的に生かしていくことも視野に入れている。

(藤原秀行)

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