長距離飛行など民間企業の技術・運用ノウハウに期待
陸上自衛隊東部方面隊とドローン(小型無人機)の製造・販売などを手掛ける自律制御システム研究所(ACSL、千葉市)は2月20日、陸上自衛隊朝霞駐屯地(埼玉県朝霞市など)にて大規模災害発生時におけるドローンを活用した応援に関する協定を締結した。
災害時に自衛隊員が立ち入ることができない危険性の高い現場などを上空からドローンで撮影。より早く正確な被害状況の把握と平素からの訓練などを通じて迅速・円滑な救助活動につなげることを目的とする。
協定内容の概要は災害発生時における相互協力、訓練の実施、情報管理。対象地域は東京、神奈川、埼玉、山梨、千葉、茨城、静岡、群馬、栃木、長野、新潟の1都10県にわたる。
陸自東部方面総監部の嶋本学情報部長(1等陸佐)は協定調印後の質疑応答で、民間企業のACSLと単独協定を結んだ理由について「ACSLさんの製品は災害に対して大変強いと聞いており、その分野に特化した技術・知見も保有されていると思う。加えて純国産のドローンメーカーということで、個人をはじめさまざまな情報の保全においても有利かつ信頼性がある」と説明。
ACSLの太田裕朗社長は「2017年に発生した九州北部豪雨では内閣府からの要請を受けて災害現場でドローンを運用した。国にも納入しており引き続き防災用ドローンの開発を進めている。今協定を機に真の防災用ドローンを作れるよう頑張っていきたい」と決意を新たにした。
協定に調印した嶋本部長(右)と太田社長
協定調印後の撮影に応じる陸自、ACSL双方の関係者
24時間稼働可能な防災用機体の製品化・実用化にも意欲
ドローンの有用性について嶋本情報部長は「やはり災害発生当初は情報に空白ができる。そうした中でドローンによってさまざまな形で情報が収集できることは救助活動で非常に役立つだろう」と展望。
今後のポイントとして「企業や業界団体との協定を通じた取り組みをいかにして実現・実行へと結び付けていくかが重要。平時から情報を伝達・共有できる連絡体制の整備・構築、また訓練などによって実際の動きをシミュレーションするといったことが大きな課題となる」との見方を示した。
太田社長は陸自との連携による技術・運用面に関するブラッシュアップの可能性について、福島県内で日本郵便、楽天とそれぞれ行ったドローンの目視外飛行実証を一例に挙げ「人では行くことが難しい場所に入るという点でドローン配送と災害時の初動は考え方が近いと思う。長距離飛行など最新の実証結果を共有することで自衛隊としての運用ステップに進むお役に立てれば」と積極的に協力していく考えを表明。
また今回を契機に技術開発をより一層推進し、世の中には存在しない24時間稼働可能な防災用ドローンの製品化・実用化にも意欲を見せた。
(鳥羽俊一)