これが現実? 大学生の半数近くが物流企業「1社も名前挙げられず」

これが現実? 大学生の半数近くが物流企業「1社も名前挙げられず」

インタツアー調査、関心の低さをあらためて裏付け

学生の就職活動支援などを手掛けるインタツアーは12月13日、2023~26年に大学を卒業する予定の学生を対象とした「業界別イメージ調査 物流業界編」の結果を公表した。

就職先としての物流業界のイメージについて意識調査したところ、学生の物流業界に対するプラスイメージに「社会貢献度が高く安定している」などが挙げられた一方、「作業的」「全国転勤がある」など、肉体的に負荷の高い仕事というマイナスイメージを抱いていることが明らかになった。

また、物流業界の選考を検討する学生は25.2%にとどまったほか、知っている物流企業名を聞いたところ半数近くが答えられず、全般的に関心度が低い現状を浮き上がらせた。

同社は「EC事業の拡大などで物流の需要が増えている一方、それを支える物流業界への意識はあまり高くない傾向がうかがえる」と指摘した。物流業界にとっては深刻とも言える実情があらためて示された格好だ。

物流業界のプラスイメージで最も回答が多かったのは「社会貢献度が高い」で35.4%だった。新型コロナウイルス禍で物流需要が増加したとニュースで取り上げられることが増えたため、社会に必要な仕事と認知されている割合が高まったとみられる。

次いで「安定している」(24.3%)、「グローバル化が進んでいる」(20.0%)と続いた。インタツアーは「AIが進化してもなくならない仕事、世界的なサプライチェーンとつながっている仕事というイメージが大きいと思われる」と分析している。

回答が少なかったのは「ワークライフバランスがとれる」(3.6%)、「ステータスが高い」(2.6%)、「先進的」(2.3%)など。社会に必要とされる仕事ながら、働きやすい仕事、技術革新が進んでいる業界、といったイメージを持つ学生は少数にとどまった。

プラスのイメージについて自由回答で尋ねると、「安定しており、高収入が望める」「自分で時間を管理できる」といった「稼げる仕事」のイメージのほか、「インフラを支えていて必要不可欠」といった回答がそろった。同社は「社会維持に必要な仕事というイメージが強いことが分かる」とみている。

「ものを運ぶ」以外のイメージ乏しく

半面、物流業界のマイナスイメージでトップは「作業的」(39.7%)。検品やピッキングなどの物流作業を行うイメージが強いとみられる。「全国転勤がある」(23.3%)も多く、全国規模の物流企業で遠方の配属先に異動するイメージを抱かれている可能性を示唆した。

他には「ワークライフバランスが取れない」(19.3%)、「給料が低い」(18.8%)が目立った。

自由回答でマイナスのイメージを尋ねると、「力仕事で体力的に大変そう」「忙しい、激務」といった回答が非常に多かったという。その他、「単調な作業」「休みがとりにくい」といった回答も散見された。

また 、設問1で「安定している」という回答が多かったのに反して、「将来が安定しなさそう」「人が必要なくなりそう」といった業界の将来について不安を感じている回答も見られた。

物流業界の具体的な仕事のイメージについて聞き、自由回答からキーワードを集計したところ、「ものを運ぶ」が圧倒的に多く、50.5%と半数を占めた。しかし、それ以外の具体的な仕事についての記述は少なく、「倉庫などで商品の管理」(12.8%)、「トラックを運転する」(11.0%)などが例に挙がった。

同社は「これまでの業界別イメージ調査ではもっと多くの種類の回答が挙がる傾向があったが、物流業界については非常に大まかなイメージの回答が多くなった。『わからない』(7.4%)より多い回答が4種類しかないことから、多くの学生が物流業界の具体的な仕事のイメージについて、解像度の高い情報を持っていないことがうかがえる」との見方を示した。

物流業界の企業の選考を受けるかどうかについて、「受けようと思っている(受けた)」はわずか5.1%で、「受けるかもしれない」(20.1%)を加えても25.2%にとどまった。「受けるつもりはない(受けなかった)」学生は4分の3程度に達し、他の業界と比較しても志望度があまり高くない結果だった。

同じタイミングで実施した「業界別志望度・関心度調査」でも、物流業界は82.1%の学生から「無関心」(プラス・マイナスともに関心を持たれていない)といった結果が出ており、業界自体への関心が低いことが、志望度の低さにつながっているもようだ。

物流業界を「受ける」「受けるかも」と答えた学生に対し、その他に志望している業界を確認したところ、最も多い回答は「メーカー」で45.6%と半数近い学生が選択肢に入れた。近年のメーカーの業界人気は常に上位にランキングされており、同社は「メーカー志望の学生が『物流業界も』選択肢に入れていると考えた方が自然」との厳しい見方を明らかにした。

その他の業界では「商社(総合)」(26.6%)、「IT・ソフトウェア・情報処理」(22.4%)、「金融(証券・保険)」(21.9%)などとなった。

物流業界で知っている企業名を3社挙げてもらったところ、「ヤマト運輸」(36.7%)、「佐川急便(SGホールディングス)」(24.5%)の宅配大手2社の認知度が高く、物流業界を代表する存在の日本通運(NXグループ)や海運最大手の日本郵船の認知度は比較的低かった。

また、1社も回答できない学生が47.0%に上り、「社会貢献度が高い」と回答した一方で実際の仕事を担う企業については関心が低いことが浮き彫りとなった。

調査概要

(藤原秀行)

資料ダウンロードはコチラから(インタツアーホームページ、名前などの登録が必要)

雇用/人材カテゴリの最新記事