生き抜くには 日東物流・菅原拓也代表取締役
さて、意気軒高な二代目社長は締めくくりに一体何を語ったのか?皆さんにとって道しるべとなりそうな、貴重な言葉、ぜひお見逃しなく! 最後になりましたが、著者と日東物流の関係者の皆様方、そして、お付き合いいただいた読者の皆様方に、厚く御礼申し上げます!
菅原代表取締役(日東物流提供)
ダーウィンは言った、「生き残る種とは…」
えー、今年に入りスタートした本連載企画も、今回が最終回となります(涙)
これまで2代目社長である僕が、運送会社の経営をどのように考え、行動しているかを言葉にして、気ままに筆を進めてきました。アッという間の連載期間でしたが、1人でも多くの方に何らかの刺激を与えられたのであれば、とても嬉しく思います。
さてさて、最終回となる今回は、連載企画の集大成にふさわしく、「生き抜くには」をテーマにお話ししてみたいと思います。
今年の運送業の倒産件数が、例年に比べて非常に増えていることからも分かる通り、燃料費や仕入原価の高騰、最低賃金の上昇や社会保険加入範囲の拡大、人出不足や後継者不足の問題など、まさに企業は、これまで以上に“経営リスク”という強烈な向かい風に吹き付けられています。
特に直近では、“労務リスク”も大きな脅威です。
「2023年問題」(60時間超の割増賃金率引上げ)に関しては、対応出来ていない企業に未払い残業請求をしてやろうと、弁護士さんたちが手ぐすね引いて待ち構えているなんて話も、よく聞きますし、「2024年問題」(残業80時間以内規制)といった、とてつもなくハードルの高い問題についても、仮にギリギリ達成出来ても、過労死ラインが柔軟になってきているので、トラックドライバーのような深夜勤務や不規則な勤務体系、身体的負荷を伴う業務においては、過労死認定される可能性も十分あるわけです。
つまり、未だコンプライアンスもままならない、この業界にも、より難易度の高い対応が求められ、かつ変化に合わせて柔軟な対応が出来なければ、より大きなリスクになるだけでなく、淘汰されてしまう時代なのです。
例えば、拘束時間に問題のある企業の社長が、ドライバーさんたちからブーブー文句を言われながらも、必死の想いで時間短縮に取り組み、「ようやく9割のドライバーさんが293時間以内になってきたな、ふぅー」と嬉しそうな顔で拘束時間の管理表を見ながら一息ついた・・・これは物凄い努力と、強い信念がなければやりきれない事です。が、しかし!2024年には、残業80時間以内に抑えなくてはなりません。拘束時間は284時間以内となりそうですが、休憩時間によっては270時間程度にまで減らす必要も出てきます。
会社のためとはいえ、メロスの如く一生懸命走ってるのにゴールが動き続け、いつまでたっても楽にならないこの感覚、これってめっちゃしんどいんですよね・・・
しかし、それでも会社を継続し、生き抜くためには、時代に合わせて「変化」し続けなければなりません。“進化論”で有名なダーウィンの名言、「生き残る種とは、最も強いものではない。最も知的なものでもない。それは、変化に最もよく適応したものである」は、まさに経営にも通じるものです。
収益や人材確保、コンプライアンスなど、それぞれ企業によって課題も異なりますし、解決のスピードも千差万別です。社会の変化に適応しながらになるので、取り組み方によっては、なかなか成果が出ないこともあるでしょう。でも、だからといって課題に直面した時に、「無理だわー」と投げ出すのではなく、今より少しでも良くなるよう、諦めずに「やり続ける」ことが、基本的だけど一番重要なんじゃないかなって思います。
今日思ったからといって、明日出来るようにはなりません。
でも、今日より早い日はありません。
今日からでも、たった一つの課題解決の為だけでも、自分の出来る範囲で動いてみてはいかがでしょうか。そうすれば、月日が経って振り返ったときに、「あー、あの時動き出してよかったなー」って、思える日が必ず来ると思いますよ。
とまぁ、10回に渡って、いろいろお話をしてきましたが、一番お伝えしたかったのは、“物流クライシス”と呼ばれるほど問題山積の物流業界を変えられるのは、強いリーダーの登場ではなく、業界にいるみんなが時代に合わせて変化し、同じ志を持って協力しあう事だけ、ということです。
今回の僕の連載が、そのための誰かの気付きになっていればと祈りつつ、筆を置く事にします。
長きに渡ってお付き合い頂き、ありがとうございました!
(了)
日東物流twitter:@nittobutsuryu
大学卒業後、大手運送会社などを経て2008年、家業である日東物流に入社。2017年9月、代表取締役に就任。コンプライアンスの徹底や健康経営の実践を通して企業体質の健全化のみならず財務体質を強化させる経営手法が評価され、千葉県の物流企業として初めて、経済産業省の認定する「健康経営優良法人」に選出されているほか、リクルート主催「GOOD ACTIONアワード」を受賞するなど、物流業界で注目を集めている。