物流関連主要団体・企業の2023年頭所感・あいさつ その2(抜粋)
共に考え解決の糸口を導き出す交流の輪を広げる
日本ロジスティクスシステム協会(JILS)・大橋徹二会長(コマツ会長)
環境変化に加えて、これまでJILSが「ロジスティクスコンセプト2030」や昨年設立30周年に掲げた「メタ・ロジスティクス」において、企業価値の向上と社会課題の解決を目標とするロジスティクスの重要性を、産業構造の変容と企業連携の見地から重ねて言及してきたことを踏まえて、2023年度の活動方針として次の3つを掲げます。
①2024年問題への対応と持続可能な社会の実現
②人的資本経営の実現と企業価値向上
③LX(ロジスティクストランスフォーメーション)のための企業連携の拡充
JILSでは「2024年問題」に対して、展示会、講演会をはじめ、あらゆる機会を通じて、so
の解決のための活動を行うとともに、関連団体や行政機関とも連携しながら、物流の重要性について、普及活動を行ってまいります。また同時に物流、ロジスティクス分野におけるSDGsの現状や課題、取り組み事例の収集や普及啓発を行うことで、SDGsに取り組む企業を増やしていきたいと考えています。
本年度ロジスティクスと経営指標の相関に関する調査を行い、現在その結果を基に経営戦略としてのロジスティクスの重要性を分析しておりますので、結果がまとまり次第普及してまいります。また、各種講座やセミナー等の人材育成事業で培った経験を活かし、産業界の「人的資本経営」への対応を支援してまいります。
連携・共創の場である「オープンイノベーションラボ」の活動をさらに拡充し、高い視座で課題を認識・共有し、共に考えることで解決の糸口を導き出す交流の輪を広げてまいります。また、サプライチェーン、ロジスティクス、物流の各領域における課題に対応するため、SCM ACADEMY of JAPAN(SCM-AJ)や物流現場改善推進のための取り組みに注力してまいります。物流、ロジスティクス関係者が一堂に会する展示会「国際物流総合展2023 INNOVATION EXPO」を2023年9月に、また、課題の解決策を提案し、議論を深める場「ロジスティクスソリューションフェア2024」を24年2月に、それぞれ東京ビッグサイトにて開催いたします。
本年も当協会は、わが国産業活動と国民生活の持続可能な発展に向け、経済産業省ならびに国土交通省等、関係各省庁の施策と歩調を合わせるとともに、産・学との連携を強化し、全力を挙げて課題に取り組んで参ります。
魅力あふれる運送業界への大きな転換点に
全日本トラック協会・坂本克己会長(大阪運輸倉庫会長)
(今年4月に適用開始の)新改善基準告示では、全日本トラック協会からの主張を受けて、厚生労働省による「荷主対策」が盛り込まれております。厚労省による荷主対策の実効性を高めるためには、荷主の実態に関する情報が必要となってまいります。会員事業者の皆様方におかれては、遠慮なく行政に対して荷主情報を申告していただき、実効性の高い荷主対策の実現につなげていただきたいと考えております。
また、新改善基準告示の施行により、ドライバーの健康と安全を確保し、過重労働や過労死を何としても防いでいくために、会員事業者の皆様方におかれては総拘束時間の縮減をはじめとしたドライバーの労働環境の改善に向けて、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。
併せて、トラック運送事業者が「国民生活と経済のライフライン」としての機能を果たし続けていくためには、利用者目線での計画的な道路整備の推進が不可欠です。全日本トラック協会では、高速道路料金の引下げ、物流基盤の整備(高速道路ネットワークの整備・充実、休憩・休息施設、中継物流拠点の整備・拡充、暫定2車線区間の4車線化)など、トラック運送事業者にとって使いやすい道路の実現に向け、道路の環境整備の必要性を強く訴えてきました。
特に高速道路料金について、昨年12月に可決・成立した令和4年度(2022年度)第2次補正予算では、全国のトラック運送事業者の皆様の声が結実し、厳しい財政事情の中、高速道路料金大口・多頻度割引の拡充措置が令和6年(2024年)3月まで延長されました。引き続き、全国道路利用者会議などと連携しながら、トラック運送事業者の生産性向上に資する道路環境整備の実現等に向けて、政府・与党に対して全力で働き掛けを行ってまいります。
トラック運送業界は「安全で安心な輸送サービスを提供し続けること」が社会的使命であり、常に「安全」を最優先課題と位置づけ、環境対策や労働対策などとともに、持続可能な産業として将来に向けた様々な取り組みを進めてきました。その取り組みの一環として、全日本トラック協会では、令和4年度事業計画において「環境・SDGs対策の推進」を掲げ、昨年12月の理事会で「物流の視点から社会に貢献するSDGsに取り組む」と宣言を行いました。
運送事業者がSDGsに取り組むことで、人材採用や定着に直結するとともに、荷主企業や地域社会からの信頼獲得にもつながることから、全日本トラック協会においても会員事業者におけるSDGsへの理解促進とSDGs達成への取り組み推進を図ってまいります。
経済情勢が厳しさを増す中ではありますが、そうした環境下においてもトラック運送業界が一丸となり、業界を取り巻く諸課題の解決に向けて必死に取り組んでいくことで、当業界の健全的な発展に向けての道が大きく開かれるものと確信しております。今年が「魅力あふれるトラック運送業界への大きな転換点」となるよう、新たな気持ちで精一杯取り組んでまいりたいと考えております。
「倉庫税制」の延長措置実現へ正念場
日本倉庫協会・久保高伸会長(三井倉庫社長)
今年の最大の仕事は、何と言っても税制改正です。「倉庫用建物等の割増償却」ならびに「倉庫等に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例」いわゆる「倉庫税制」の延長に加え、軽油引取税の免税の延長も要望する年となっています。しかしながら、「倉庫税制」については、税務当局から強く廃止を求められてきており、まさに正念場を迎えます。極めて厳しい折衝が予想されますが、国土交通省のご指導を得ながら税制特例措置の延長を実現していきたいと考えています。
コロナ禍に加え、様々な課題に取り組みつつ、社会インフラである物流を支えている皆様にあらためて敬意を表します。
「社会を止めない。進化をつなぐ。」
三井倉庫ホールディングス・古賀博文社長
これからの数年間は三井倉庫グループの今後30年、あるいは50年の成長にとって非常に大事な礎になることは間違いありません。そういう意味でも私は「中期経営計画 2022」を非常に強い決意をもってやり遂げようと考えています。とは言え特別なことを皆様に求めているわけではありません。一人ひとりがそれぞれの持ち場で、これまで通り真面目に、そして変化を恐れず成すべきことを整理し、行動することをお願いしたいと思います。
取り巻く環境の変化は想像もつかないほどの速さと規模であらゆる社会活動に影響を与
えています。そして物流業界においては競争がますます激化しているところです。そのような状況ではありますが、これまでの皆様の取り組みとその成果を以ってこの競争に勝ち残っていきたいと考えております。
「社会を止めない。進化をつなぐ。」 この私たちの PURPOSE(パーパス)に込められている意味を考え大切にし、これからも物流サービスの提供を通じたより良い社会と自らの成長の実現を目指し、この新たな年、新たな時代を、共に進んでまいりましょう。
改革にとどまらず「変革」も
近鉄エクスプレス・鳥居伸年社長
昨年の近鉄グループホールディングス(GHD)によるTOB(株式公開買い付け)により、当社は近鉄GHDの100%子会社になりました。しかしながら、当社自身の方針に何ら変わりはありません。今後も当社が世界の市場で存続し、成長をしていくためには、まずは自力で、目標に掲げた取扱物量に向けて事業を拡大し、収支数値目標を達成していくことが必須条件です。
この物量拡大とともに不可欠となるのが、経営計画2027に掲げている通り、グループ全体の体制の強化であり、前中期経営計画で取り組んできたミドルガバナンス体制を完成させ、APLLを含む各関係会社、各本部、そして各海外現地法人が「One KWE」として一体感を強め、かつグループとして機能していくことであると考えます。当社グループの持つ強みを生かしながらさらなる高みを目指すには、「One KWE」としてグループ全体の機能強化を図るため、組織のバックボーンとなる統一のプラットフォームの確立が必要であり、現状を改善するための大規模な「改革」が待ったなしの状況で迫ってきていると感じます。
これは改革にとどまらず、「変革」にまで及ぶ部分があり、時間と工数、そして一部では痛みを伴うかもしれませんが、当社グループ組織の機能強化の対応については着実に行っていきます。
2年間で蓄えた資本を損益悪化への備えと成長投資に活用
商船三井・橋本剛社長
2023年の事業環境ですが、昨年末に中国がゼロコロナ政策の見直しを表明しましたので、約3年におよぶ新型コロナウィルスによる混乱は収束し、世界の経済・社会は徐々に正常化に向かうと思います。直近の2年間は、海運市況の高騰を背景に好業績となりましたが、昨年からの世界的なインフレの進行、高金利とそれに伴う景気悪化の影響により、来期の業績は、2021年、22年度に比べ減益となるだろうと予想しています。
今年は欧米各国のインフレ対策の効果が表れ、一時的に大きな景気の落ち込みがあるかもしれませんが、中国経済の正常化や米国の金利上昇ペースの鈍化など、そう遠くないタイミングで緩やかな景気拡大基調に復帰することを期待しています。私たちは、この2年間で蓄えた資本を、損益悪化に対する備えと将来の成長のための投資に、有効に活用していく1年にしたいと思います。
私は社長就任以来、「商船三井グループをあらゆる面で優良企業とイメージされる存在にしたい」と述べてきました。具体的にはサステナビリティー経営、提供するサービスの質、収益力、人財の質の高さ、高度な技術力などあらゆる面において、全てのステークホルダーから信頼され、高い評価をいただける企業グループになるということです。これは、当社グループの全役職員が、誇りと責任感をもって働くことができることを意味します。
当社グループは、地域戦略に沿って海外での事業開発を積極的に進める方針であり、また従来の海運業にとどまらず、海洋事業、物流事業、不動産事業、クルーズ事業など、非海運業の強化を進めています。Rolling Plan 2022および来期からの新経営計画にしっかりと取り組み、グループの成長と企業価値向上を通じて、優良企業を目指していきましょう。
何が起きてもスピード感と信念をもって対応できるよう経営の足固めを推進
川崎汽船・明珍幸一社長
足元の事業環境に目を向ければ、長期化するロシアによるウクライナ問題やその影響に伴うエネルギー資源価格の高騰、加熱したインフレに対応した金融緩和措置の見直しや急速な金利引き上げ、中国のゼロコロナ政策の行方など経済活動に大きな影響を与えかねない様々な不透明でかつ不確実な状況が出現し、需要の先行きを見極めることは大変困難な状況が続きます。このような不確実性の高い現状を過度に悲観的に捉える必要はありませんが、当社のさらなる飛躍のためには、全役職員一人ひとりが鋭く社会情勢の変化を感じ取り、当社グループの強みや海運業として求められるものは何かを常に念頭に置きながら、当社グループならではのサービスや技術を磨き上げて、お客様に選ばれるよう新たな価値を創出するという強い気持ちで臨まなければなりません。
社会のインフラを支えるサプライチェーンとしての重要な役目を忘れず、慢心することなく、何が起きてもスピード感と信念をもって対応できるよう、経営基盤の足固めをしっかりと行い、将来の成長に目を向けて一丸となって企業価値向上に取り組んで参りましょう。
輸送の範疇を超えたサービス提供しお客様と接点増やす
西濃運輸・小寺康久社長
昨今、情報通信技術の目覚ましい発展により、産業構造が大きく変わりつつあります。このような流れの中、「金融サービス」「人材派遣」「保険サービス」など輸送の範疇を超えたサービスを提供し、お客様との接点を増やしていきたいと考えています。
4月1日には関東西濃運輸・濃飛西濃運輸・東海西濃運輸と統合します。4社が1つになることで幹線ダイヤを再編し、運行効率の全体最適化を進め、より良い輸送品質を提供できる体制を整えていきましょう。また、電動車普及に向けたエネルギーマネジメントシステムの構築、社会実装に参画するなど、脱炭素社会の実現に向けた取り組みも行っていきます。
本年は、持っている可能性を大きく伸ばし発展していくために、スローガンを「伸展」としました。われわれが行っていくのは、お客様の総合窓口となりノーストレスな価値を提供していくことです。卯年は、これまでの努力が実を結び、勢い良く成長し飛躍するという伸展にふさわしい年。SEINO LIMITの精神で、開かれたプラットフォームによって他社ともつながり、共創を進めることで、持続可能な未来に向かって大きな一歩を進めましょう。
厳しくても「これまでの努力が花開き、実り始める」頃合い
第一貨物・米田総一郎社長
干支は癸卯(みずのと・う)。「癸」は順序で言えば最後にあたり、物事の終わりと始まりを意味するほか、「揆(はかる)」という文字の一部であることから「種子が計ることができるほどの大きさになり、春の間近でつぼみが花開く直前である」という意味、「卯」はもともと「茂」という字が由来といわれ「春の訪れを感じる」という意味。この 2 つの組み合わせである癸卯は、「これまでの努力が花開き、実り始めること」といった縁起のよさを表している、とのことです。
翻って当社の足元の状況は大変厳しい状況ですが、われわれはこの 5 年程度にわたり、情勢が目まぐるしく変化ないし悪化する中でも、これしかないという道を選択し、やるべき事を徹底的にやり、撒くべき種は着実に撒いてきています。また、新東京支店の新築移転を含む、足掛け6年間にわたった東京プロジェクトも無事完遂しました。われわれはここ数年やって来た事に自信を持って良いと思いますし、「これまでの努力が花開き、実り始める」頃合いだと思います。今年をさらなる飛躍に向けた始まりの年となるように挑戦していきましょう。
(藤原秀行)