日本郵船とIHIが世界初、浮体式アンモニア貯蔵再ガス化設備搭載バージの基本設計承認を取得

日本郵船とIHIが世界初、浮体式アンモニア貯蔵再ガス化設備搭載バージの基本設計承認を取得

陸上設備導入より低コストと想定、燃料利用に弾み

日本郵船と日本シップヤード、IHIは1月5日、アンモニアを燃料として使いやすくする設備「浮体式アンモニア貯蔵再ガス化設備搭載バージ(はしけ、A-FSRB=Ammonia Floating Storage and Regasification Barge)」の基本設計承認(Approval in Principle、AiP)を2022年12月26日付で一般財団法人日本海事協会から取得したと発表した。

アンモニアは燃焼してもCO2を排出しないため、地球温暖化対策に貢献する次世代燃料として期待が高まっており、国内ではCO2排出の削減に寄与する革新的な次世代火力発電技術として石炭火力発電所でのアンモニア混焼発電に向けた技術開発が進められている。

その一方、アンモニアを既存の火力発電所で使用する際、貯蔵タンクや再ガス化設備といった新たな陸上設備の用地確保や巨額の初期投資が課題となっているため、3社がA-FSRB開発に乗り出している。3社によると、アンモニアを貨物として取り扱うA-FSRBがAiPを取得したのは世界で初めてという。

A-FSRBは産地から液体として輸送されたアンモニアを洋上で受け入れて貯蔵し、需要に応じてアンモニアを温めて再ガス化し陸上のパイプラインへ送出できる洋上浮体設備。3社は陸上にアンモニア貯留基地を建設するよりも低コストかつ短期間で導入できると見込んでおり、陸上設備の代替としてA-FSRBを活用することで、燃料アンモニアの安定供給を早期に実現可能と想定している。

現時点で貨物をアンモニアとした場合の浮体式貯蔵再ガス化設備に関する国際的に統一された条約や規則などは存在せず、今後はアンモニア特有の要件を設計へ反映することが求められると予想される。そのため、3社と日本海事協会は様々な偶発的事象に対する包括的なリスクを特定し、初期検討段階から技術課題の洗い出しに取り組んできた。

想定される偶発的事故や従来の船舶や浮体構造物との差分に対する今後の技術検討項目を抽出し、日本海事協会からAiP取得にこぎ着けた。3社は今後も主なユーザーになると想定される電力会社と設備の配置・導入や法規制対応の検討、並行して経済性評価に取り組む。


A-FSRBの外観イメージ図(プレスリリースより引用)

3社の取り組み

日本郵船 ・プロジェクトマネジメント
・ベースデザインの決定
・法規対応の検討
・経済性評価
日本シップヤード ・船型開発/機器配置検討
・Utility機器※検討
IHI ・アンモニアの払出/気化プロセス作成
・気化プロセスに必要な機器情報の提供
・必要なUtility機器の情報提供

※プラント設備の運転に必要な電気などを供給する設備

(藤原秀行)

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