富士通交通・道路データサービスが物流事業者のBCP対応支援拡充
富士通子会社で商用車の安全運行支援などを手掛ける富士通交通・道路データサービス(FTRD、東京)が、事業の柱の1つに位置付けている物流事業者の支援を拡充する。
日々収集している全国のトラックなど商用車約17万台の膨大な走行履歴を生かし、新たなサービスとして特定地点で時間帯ごとに交通量や渋滞状況を再現するとともに、災害が起きた場合に車の行き来がどのように変わるかを事前予測。物流拠点を適正な場所に配置するなど、平時のうちに適切な対策を講じてサプライチェーンの寸断を回避できるようサポートする。
2月28日にサービス内容を正式発表した。昨年に起きた豪雪や豪雨のように、深刻な被害をもたらす災害が頻発しており、BCP(事業継続計画)対応の重要性が高まっている。FTRDは災害時に拠点周辺の道路がどの程度渋滞するかといったシミュレーション結果を分かりやすく顧客に明示し、対策を迅速に進められるよう後押ししたい考えだ。
併せて、高速道路や幹線道路が新規に開通した後の交通量変化についても予測の対象とし、物流の効率化にも引き続き貢献していくことを目指す。FTRDは荷主企業にとっても有益な情報を提供できると期待している。
走行履歴の情報は1兆件超に
FTRDは富士通といすゞ自動車の合弁会社トランストロン(横浜市)が製造した通信機能付きのデジタルタコグラフを使い、トラックなどが目的地に到達するまでに通った経路や速度、急ブレーキの位置、渋滞状況といった詳細なデータを日々集めており、データ数は累計で1兆件を優に超え、国内随一の規模に達している。道路の曜日別、時間帯別の通行量なども全国規模で押さえているため、特定の地点から一定時間内に到達できるエリアを詳細に把握することが可能だ。
FTRDはビッグデータの強みを生かし、2017年からどこに物流施設を開発すれば輸配送の効率を最適化できるかや、テナントにとって魅力ある施設となるかを分析する「FoXYZ(フォクシーズ)」、輸送コストの適正化を図る「SoXYZ(ソクシーズ)」といったサービスを順次展開。大手物流施設開発事業者が相次ぎ利用するなど、着実に成果を挙げている。
新たなサービスは、東京大発のベンチャー、アイ・トランスポート・ラボ(ITL、東京)と連携。FTRDが蓄積している走行のビッグデータと、ITLが開発した世界最先端の「広域道路網交通流シミュレーションモデル SOUND」を組み合わせて行う。将来の交通状況に関する予測は東京大生産技術研究所の大口敬教授を中心としたグループが進めてきた研究の成果を反映させ、精度を非常に高めている。
新たなサービスの用途としては、災害が起きた場合に一定の前提を置いて交通量の変化をシミュレーションし、BCPを重視した物流拠点配置の検討を後押しすることを想定。
さらに、高速道路が開通した後の状況を踏まえ、地価や周辺人口などの条件と突き合わせながら、新たに物流施設開発の適地がどのエリアになるかを探し出すことなどにもつなげられるとみている。
シミュレーションの一致率9割強
FTRDなどが新サービスを開発する過程で、圏央道の境古河IC~つくば中央IC(いずれも茨城)が17年に新規開通した場合の交通量変動を試算。東北道と圏央道を結ぶ久喜白岡JCT(埼玉)から1時間半でどこまで到達できるようになるかエリアを予想した結果、平日の午後11時台に同JCTを出発したケースでは実際の結果とエリアが一致した割合が93・8%に達したという。
シミュレーションの結果(FTRD提供資料より引用)※クリックで拡大
開発に参画した大口教授は「高い再現性を担保できる交通流シミュレーションモデルに、日本全国で長期データの蓄積を誇る商用車プローブデータを組み合わせることで信頼性の高いサービスの実現が期待される」とコメント。
FTRDの島田孝司社長は「実際に道路を走った豊富なデータを分析に使えるのが当社の強み。われわれのデータをエビデンスとして、物流業界の方々がBCPなどの面で正しく判断できるよう、引き続きさまざまな切り口でサポートしていきたい」と意気込んでいる。
(藤原秀行)
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