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【独自取材】「物流テック」で日本を変革する⑤セルート

【独自取材】「物流テック」で日本を変革する⑤セルート

アプリが“隙間時間で配送”後押し、ラストワンマイルの救世主に・松崎晋也DIAqプロジェクトリーダー

人手不足をはじめ課題満載の物流業界を先端技術で変革しようとする動きが広がっている。ロジビズ・オンラインはそうした潮流を継続してウオッチし、プレーヤーたちの熱い思いを随時お伝えしている。

第5回は、配送したい荷物と運び手を結び付けるマッチングアプリ「DIAq(ダイヤク)」を展開するセルートを取り上げる。荷物を運ぶ仕事がしたいと希望する人たちの“隙間時間”を有効活用し、トラックドライバー不足に見舞われているラストワンマイルの現場を救おうと日々奮闘。「宅配クライシス」と呼ばれる窮状を打開できる救世主となるかどうか、物流業界から熱い視線が注がれている。


DIAqの配送イメージ(Facebook公式ページより引用)

運び手の仕事ぶりを評価・公表

1984年設立でバイク便大手のセルートは、新規事業として2017年8月にダイヤクのサービスを開始。アプリ上で業務の受発注から集荷、配送、決済までの一連の手続きをスマートフォンやパソコンで済ませることができるのが大きな売りだ。既存の宅配便などと異なり、集配センターを経由せず送り手から受け手へ直接届けるため、迅速な配送が可能となっている。受領サインはスマホの画面に記入してもらう形を取っており、紙の納品書や受領書を省略している。

運び手として登録しているのは現在約5000人。同社はラストワンマイルという最後の頼みの綱であるとの思いを込めて「アンカー」と呼称している。プロのトラックドライバーだけでなく、自転車で通学する学生、主婦、飲食店の出前担当者、バイク便や自転車便のライダーといった多種多様な人たちが参加。輸送経験のない人でも業務を担えるよう、基本的にビジネスの書類や書籍、弁当といった重量物ではなく、特殊技能を必要としないものを扱っている。

サービスの立ち上げから携わってきた松崎晋也DIAqプロジェクトリーダーは「隙間の時間をお金に換えたいと考えている人が想定より多く存在していた」と振り返る。ダイヤクを始めようと準備を進めていた当時は、海外で「ギグワーカー」と呼ばれる、自分の空き時間をうまく利用して好きな仕事を引き受ける人たちの存在が認知されるようになっていた。

一方、日本では宅配現場の人手不足や長時間労働といった深刻な実態が明らかになり、「宅配クライシス」との言葉がメディアで取り上げられていた。「宅配便は非常に優れた仕組みではあるが、人口が減少局面へと入っていく中、さすがに無理が生じてきている。代替策を考えなければ日本のラストワンマイルが危ない」。松崎氏らセルートメンバーの危機感が、海外の自由な働き方を参考にした新たな仕組みづくりの原動力となり、最初の企画立案から1年余りでサービスのリリースまでこぎ着けた。「当社内でも経営層をはじめ、おおむね新しいことに挑戦してみようという好反応だった」と松崎氏は言う。

中軸のバイク便事業を展開する中で、個人事業主との連携の仕方などのノウハウを新規事業に投入できたのは強みだった。現行法規などを踏まえて順守すべき点も押さえていた。配送の仕事をやりたいという人たちの思いをすぐに実現できるよう、アンカー希望者と同社が直接対面しなくても身元を確認し、契約に至る仕組みを確立した。

「ラストワンマイルを日々担っているプロの個人事業主だと当たり前のことでも、一般の方にとっては必ずしもそうではないため、アプリの説明を見れば仕事内容をすぐに把握できるようサービスの形態や取り扱う荷物の種類などを極力シンプルにした」と松崎氏は強調する。

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さらに、アンカーが自分で料金を設定したり、仕事をするエリアをその時々の都合で選べたりするようにしている。アンカーが配達中に誤って商品を壊してしまった場合に備え、損保ジャパン日本興亜が独自に設計した損害保険を提供するなど、配達の未経験者が安心して働ける環境整備に余念がない。

その一方で、配達を依頼する側に対しても、スマホを介して自分の近くにいるアンカーをすぐに確認できるほか、各アンカーの仕事に対する評価や配達件数の実績などをスマホからチェックし、気に入った人に仕事を発注できるようにするなど、使い勝手の改良に努めている。


取材に応じる松崎氏

物流以外の役割分担も視野

やはり最大の懸念は「素人の運び手で問題はないのか?」という点だろう。ダイヤクではそうした疑念をできる限り払拭するため、実際の仕事内容を踏まえて配達を依頼した人に各アンカーの働きぶりを評価してもらい、アプリ上で公開することで配達の正確性や迅速さを高めようとするインセンティブにしようと努めている。他にも必ず実名で登録してもらうことなどで安心・安全を担保しようと工夫している。

松崎氏は「接客の部分まで含めれば、アンカーに登録されている一般の方がより丁寧に、真摯に対応されていてプロより評価が高くなることもある。一般の方だから必ず問題があるというわけでは決してない」と力を込める。運ぶ難易度がそれほど高くない荷物を“隙間時間”で運ぶようにすれば、プロの運び手はその分、難易度が高い荷物に集中できる、ということにもなるだろう。

アンカーが着実に増えているのに伴い、ダイヤクが担う業務の範囲も広がり続けている。スポットの配送は忘れ物を届けたり、贈答品を送ったり、出前に活用したり、レンタルサービスで貸し出していた機器を回収したりと用途が多様化。さらに、小売りや通販事業者とタッグを組み、ECの商品配送を担うケースも増加している。大手の宅配事業者もダイヤクのオリジナルなラストワンマイル配送網に強い関心を示しているという。サービスエリアも東京23区と大阪、横浜と都市部で徐々に広がりを見せている。

ラストワンマイルのメッシュを拡充することと併せて、その先のサービス展開も視野に入ってきている。松崎氏は「サービスの現状のスキームではどうしても都市部が中心になるが、人手不足などの問題の深刻さは都市部より地方が強い。当社として、お困りごとの解決に応えられないかという課題はある」との持論を展開。将来の検討課題として、買い物代行といった新たな業務を手掛けることも念頭に置いているようだ。

「人口が減っていく中で、がちがちにこの人は配送だけ、みたいに役割を固定してしまうと物流が成り立たないのではないかと真剣に思っている。少なくともラストワンマイルは手分けしてやりませんか、もう少し効率良くやりませんか、ということはこれからもご提案し続けていきたい」と語る松崎氏。ラストワンマイルの配送を空いた時間で共有して展開することに併せ、配送以外の役割を担うことにもなれば、ダイヤクの持つ社会インフラとしての役割はさらに重要度を増していく。そんな日が来るのは案外近いのかもしれない。


スマホからアンカーを選択可能(DIAq公式ウェブサイトより引用)

(藤原秀行)

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