「急速な利上げは困難の見方大勢」
米系不動産サービス大手JLL(ジョーンズ ラング ラサール)の日本法人は1月19日、東京都内の本社で、メディア向けに国内の不動産市場動向に関する説明会を開催した。
河西利信社長は不動産投資活動に影響を及ぼす金利動向について、海外投資家の間では日本銀行が急速に利上げするのが難しい状況に変化はないとの見方が大勢と紹介。日本のオフィスビルや物流施設などへの海外投資家の関心度は引き続き高いとの見解を示した。
河西社長は「日本は巨大な国債の債務があり、金利が上昇すれば政府の負担が大幅に増すし、国債価格の下落にもつながる。海外のように短期間で大きく金利を上げるのは難しく、上げるにしてもできるだけ時間を取って、市場の安定性を見据えながら進めていくのではないかとみている海外投資家が非常に多い」と説明した。
また、昨年12月に日本銀行が長期金利の指標となっている10年物国債の利回りの許容変動幅を見直したのに伴い国債が売られ、金利が上昇しているものの「短期のオーバーナイトの金利はほとんど上がっていない」と分析。「投資家の大多数は日本の変動金利の低さに着目している。私の感覚的には7~8割の海外投資家は(資金調達に)変動金利を採用しており(今回の金利上昇でも)ほとんど負担は増えていない」と指摘した。
説明会に同席したJLL日本法人リサーチ事業部の大東雄人シニアディレクターは、市場参加者の期待として、金利が今後1%程度まで上昇することが織り込まれているとの見解を表明。その上で「(オフィスビルなど不動産の)キャップレート(期待利回り)と10年物国債の金利のスプレッド(差)は十分担保されている。仮に金利が緩やかに上昇しても、投資家に大きな影響、問題はないのではないか。日本の不動産市場は依然魅力的だろう」と解説した。
22年の国内不動産投資額は21年より縮小したものの、大東氏は背景について「今後日本でも金利が上がっていくことを前提として、投資家が今の低金利環境を担保するために資金を借り換え、(保有物件の)売却をためらうということもあった」と説明。「23年に入って売却案件が出てくれば、投資ボリュームが活発化するのではないか」と予想した。
(藤原秀行)