CBREレポート展望、サプライチェーン分断の経験受け
シービーアールイー(CBRE)は3月8日、「製造業の在庫増加:物流施設需要を牽引するもう一つの要因」と題するレポートを公表した。
製造業の在庫動向を分析した上で、自動車を含む機械・機器製造業の在庫が増えていると指摘。機械・機器製造関連の在庫積み増しの動きが物流施設需要の拡大にも貢献し始めているとの見方を示した。
レポートは財務省の「法人企業統計調査」を引用し、2022年10~12月期は製造業の在庫が前年同期比2割増の63兆円に達し、7四半期連続プラスになったと解説。特に「原材料・貯蔵品」は新型コロナウイルス感染拡大前の2019年末から54%増加したと指摘した。
消費財よりも、自動車や情報通信など機械・機器関連の製造業で原材料在庫の積み上げが顕著になっており、「日本の製造業が(必要なものを,必要な量だけ,必要なときに出す)『ジャスト・イン・タイム』から(万が一の備えを持つ)『ジャスト・イン・ケース』の方針にシフトし、基幹部品などの在庫を積み増している様子がうかがえる」との見解を示している。
コロナのパンデミック(世界的な感染拡大)や米中摩擦など世界情勢の変化によるサプライチェーンの分断が日本の製造業にも打撃を与え、企業は原材料や部品の調達先の見直しを迫られると同時に、事業継続の観点から在庫を多めに確保するようになったと指摘。「サプライチェーンの状況は改善しているが、世界情勢の先行き不透明感を踏まえれば、この傾向は今後も続くとみられる」と展望している。
2022年Q4までの3年間における「原材料・貯蔵品」在庫の増減率
一方、CBREの大型マルチテナント型物流施設(LMT)のテナントデータによると、特に中部圏と福岡圏は2021~22年に竣工した物件の取り扱い荷物に占める「電子・機械製品」の割合がそれ以前の竣工物件の割合と比較して高くなっており、中部圏は79%に達したと説明。
「製造業が集積するエリアでは、機械・機器製造関連の在庫の積み増しが物流施設需要の拡大にも貢献し始めていると言えそうだ。このことが、EC化の進展と並んで、今後の物流施設需要のもう一つの牽引役となるだろう」と締めくくっている。
大型のマルチテナント型物流施設の取り扱い荷物の内訳(竣工年別)
(藤原秀行)※グラフはいずれもCBREレポートより引用