利根川など無人地帯上空を飛行、将来は住宅街などの「レベル4」移行視野
出前館とエアロネクストは4月5日、茨城県境町で、ドローンなどを活用し地域の物流ネットワークを維持することを柱とした連携協定を締結した。その一環として、ドローンを使った料理の宅配サービスを同日開始した。
町を流れる利根川など、住民や歩行者が通らない無人地帯の上空をドローンが目視外飛行する「レベル3」で実施。住民が出前館の専用アプリを使って注文した料理を、エアロネクストがACSLと共同で開発した物流専用ドローン「AirTruck(エアトラック)」に積み込み、あらかじめ設定した飛行ルートに沿って自動で飛び、受け取り場所として設定しているエリアまで届ける。
出前館のロゴマークが入ったドローン
境町などは、出前の料理は町内で営業している店舗のものを取り扱うことで、町内の経済振興にもつなげたい考え。料金は1回当たり税込み500円と設定している。当日の午前10時までに注文すれば正午から午後1時の間に、午後4時までに注文すれば午後6~7時の間にそれぞれ届ける。
出前館とエアロネクストは今後、有人地帯上空をドローンが目視外飛行する「レベル4」に移行、日本で初めて市街地のエリアでドローン配送サービスを実現することを視野に入れている。
出前館とエアロネクストは「市街地でのドローンによる最速30分以内での配送など、大都市と変わらない利便性の提供を目指す」と説明している。
この日、町内で開催した出発式で、境町の橋本正裕町長が最初のドローン配送サービス利用として、会場から「道の駅さかい」のピザ店舗にアプリからピザを注文。店舗から出発式会場までまず軽車両でピザを運んだ後、ドローンに積み替え、あらかじめ想定していた町内のエリアまで約2.2kmの距離を空輸した。
出発式会場で橋本町長がピザを注文
出発式会場に到着したピザ
ドローンに積み込む
安全に離陸
境町は昨年10月、エアロネクストやセイノーホールディングス(HD)などと、ドローンや自動運転バスといった先進技術を組み合わせて物流網維持を図る「新スマート物流」の実用化に向け実証実験を展開する連携協定を締結していた。今回の取り組みもその一環。
今後はセイノーHDなどとも協力し、ドローンと自動バスを連携させ、その時々で最適な手段を用いて地域内の商店からの確実な商品配送を実現していくことを想定している。
出発式であいさつした橋本町長は「こういった境町の取り組みが他の中山間地などに広がっていくことを期待したい」と表明。初回注文時に使えるクーポンを準備するなど、高齢者でも使いやすくなる仕組みを検討したいとの考えを示した。
出前館の藤井英雄社長CEO(最高経営責任者)は「都市部だけでなく、地域でも高齢者の皆様が購入される商品をお届けし、地域の皆様に愛され、必要とされるサービスにしていきたい」と意欲を見せた。
エアロネクストの田路圭輔CEOは「いずれは皆様のご自宅の裏庭に直接ドローンが届ける時代がすぐに来ると思うので、ますます便利なサービスを目指していきたい」と語った。
ドローン離陸のボタンを押す(左から)エアロネクスト・田路氏、境町・橋本町長、出前館・藤井氏
(藤原秀行)