経産省の検討会が報告書、サプライチェーンの効率化など要望
経済産業省は4月6日、「物価高における流通業のあり方検討会」が取りまとめた報告書を公表した。
最近の物価上昇を踏まえ、「物価高騰によるコストの上昇分を、最終的な消費者価格にまで十分反映できておらず、したがって小売業を含む流通業はその分の負担を引き受ける形で収益構造が圧迫されている」と指摘。消費者の購買意欲も低下しているほか、店舗の運営についても人手不足を受けた人件費高騰などでコストが膨らんでいると解説、流通業は需要、供給の両面で厳しい状況に置かれていることを明記した。
その上で、流通業が今後目指すべき方向性として、「労働への安易な依存からリソースへの投資・最大限活用へ」と説明。その一環で、世界を大きく変えたインターネットの形を物流の世界で再現し、業務効率化や省人化などを図る考え方「フィジカルインターネット」を広めていくため、官民で作成したロードマップ(工程表)を着実に進めていく必要があるとの見方を明示した。
「Design For Logistics」が鍵を握る
報告書は、今後取り組むべき方策として、
‐リソースを刷新…(1)合理化・付加価値向上に向けたDX
‐リソースをシェア…(2)サプライチェーンの効率化(垂直・水平方向の連携・統合)
‐リソースを価値創造に…(3)消費者・地域のニーズを踏まえた多様化
――と整理した。
サプライチェーンの効率化については「個別最適ではなくあくまで全体最適を目指し、サプライチェーン上に存在する非効率性を取り除くことは、わが国の流通構造の長年の課題であり、かつ、リソース制約によるインフレが起きている現在の状況で、自社だけでなく他社のリソースを含めて活用を検討していく姿勢は本質的な対応として求められるものである」と提唱。
物流拠点や配送車両の共有化など「フィジカルインターネット」の実現を目指していくことを打ち出した。また、「流通構造における複雑性と、メーカーや物流事業者も含めた数の多さを考えた時、鍵となる1つの考え方は、Design For Logistics(DFL)である」と指摘。
「製品・包装等のハード面の設計のみならず、現場レベルにおける目線を中心とし、一連の業務プロセスを含めたソフト面のオペレーションまで、サプライチェーン全体の物流効率化のために見直しを行っていくこと」を考慮すべきだとのスタンスをにじませた。
具体的なDXの事例として、発注・仕入れ業務でAIを活用した需要予測の高度化、売れ行きなどを踏まえて価格を容易に変えられる「電子棚札」の活用といった方策を講じたり、集客・販促業務でAI カメラによる顧客の行動解析・属性視聴分析を活用したりといったことを列挙した。
消費者・地域のニーズを踏まえた多様化に関しては、人手などのリソースが潤沢ではない中、サービス内容が本当に消費者から必要とされているのかどうかを明確に見極めることなどを要望。ECが流行する現在だからこそ、リアル店舗を重視し、地域への貢献など「サステナビリティに配慮した活動を積極的に進め、時代にふさわしい生活インフラとしての姿を追求していくことが期待されている」と強調した。
(藤原秀行)