プロに見せたい物流拠点(番外編)きくや美粧堂のセンターから発進する“手作り自社便”

プロに見せたい物流拠点(番外編)きくや美粧堂のセンターから発進する“手作り自社便”

ごみ回収などで付加価値向上、顧客の声を直接聞く機会にも活用

「プロに見せたい物流拠点」シリーズの第2回で登場した美容業界向け専門卸大手のきくや美粧堂。自社運営の物流センターで働く人の満足度を高めると同時に作業の生産性向上も果たそうと、日々さまざまな工夫を凝らしている姿をお届けした。

今回はその番外編として、同社が2017年から展開している独自サービス「自社便」に同行取材した。日頃は物流センター内で商品のピッキングや仕分けなどを手掛けているスタッフが交代で配達担当となり、自社のワゴン車で物流センターから発進して東京都内などを走り回り、シャンプーやトリートメントといった多様な商品を顧客のサロンに届けている。

物流子会社を立ち上げたり専属のトラックドライバーを配置したりせず、物流センターのスタッフが協力し合いながら運営している、まさに“手作り感”満載の自社便だ。顧客の声を直に聞き、サービス改善のヒントをくみ上げる貴重なチャネルとしても機能しており、スタートから約2年で同社にとってすっかり不可欠の取り組みとなっている。


きくや美粧堂の物流センター「East Logistics」が入る東京流通センター(TRC提供)


自社便に用いているワゴン車



自社便によるサロンへの配送。商品を届けるだけでなく、梱包に使っていた緩衝材を引き取るなどの配慮も見せている

“宅配クライシス”で危機感、配送手段確保に動く

同社が自社便を始めたのは“宅配クライシス”と騒がれるようになったことが直接の契機だ。同社サプライチェーン部の松丸忠広物流担当マネージャーは「商品をお客さまに届けられないという最悪の事態を避けるため、外部の物流事業者にお願いするのとは別に、自前で運ぶ手段を確保しておかなければいけないのではないか、との問題意識を持った。いろいろと検討した結果、自分たちでやろうということで今の形に落ち着いた」と回顧する。

同社は機械化投資を積極的に行い出荷の精度とスピードを上げるなど、同業他社と差別化を図る上で物流を重要な要素として活用している。自社便もまさにそんな戦略の一環と位置付けられている。

現状は毎週火、水、木曜の計3回、自社便を展開。週3 日で東京・平和島の物流センター「East Logistics(イーストロジスティクス、EL)」から都内の目黒、世田谷、渋谷、新宿、中央の5区と神奈川県の横浜、川崎両市にある比較的規模が大きめのサロン計70カ所を回っている。

配達の際はサプライチェーン部の社員とELで働くアルバイトやパートタイマーの人たちがペアを組んでいる。社員がハンドルを握って荷物をサロンまで届け、アルバイトやパートはそのサポーター役を務めるという役割分担だ。社員は全員、アルバイトとパートは任意の人がそれぞれ月2回の頻度で配送を担当している。単に商品を配達して終わりではなく、梱包に使われていた段ボールを他社のものでもサロンから引き取るなど、付加価値を高める工夫を凝らしているのが自社便の大きな特徴だ。

社員とアルバイト、パートのコミュニケーションも後押し

目黒や渋谷、世田谷方面を回るコースに密着した。この日タッグを組んだのはサプライチェーン部の若手スタッフ、今関猛徳氏とELで勤務して10年以上というベテランの中村理恵氏。2人はワゴン車でさまざまなサロンを訪ね歩いたが、慣れているだけあって作業はどこも短時間で滞りなく終わった。

今関氏は訪れた美容室で使い終わった梱包の緩衝材を引き取るなど、精力的に配達。いつも使っている道が工事で通ることができず、サロンの近くにワゴン車を付けられないため急きょ台車で運ぶというアクシデントもあったが、2人に特段焦りは見られなかった。




2人組で連携して配送


街中を台車で運ぶ

サロンの経営者や店員らとの意思疎通を心掛けている

今関氏は「自社便の仕事に就いてから実感したが、センターでずっと仕事しているだけではお客さまの声を直に聞くのは難しいだけに、本当に勉強になる。例えばどのような包装にすればお客さまが取り出しやすいか、といったことを考える契機にもなった。センターの仕事に生かせるヒントをお客さまからたくさんいただいている」と自社便の効果を力説。

中村氏も「外に出るのはとても気分転換になる。私たちが働きやすくなるよう普段から配慮してくれていると感じる。自社便以外でも、例えば子供が急に熱を出して休まなければいけなくなっても快くお休みをいただけるので大変助かっている」と笑顔を見せる。2人の言葉は会社側が普段から率先して働き方へ配慮することがいかに重要かを感じさせてくれる。

松丸氏はアルバイトやパートがセンターの外に出て業務に当たることで、自社便を終えてセンターに戻ってもリフレッシュして仕事に取り組めると利点を指摘。さらにサプライチェーン部の社員とアルバイト、パートが組んでいるため「配送する際にいろいろな話をする中で物流センター内の改善してほしいポイントなどを率直に聞けるようになるのも大きなメリット」と説明する。

特に都内はサロンがある路地奥などのエリアで坂や起伏、地面の凹凸が多いのを踏まえ、自社便にはロックブレーキ付きの台車を導入。勝手に台車が動いて商品が落下するといったトラブルが起きないよう先手を打っている。松丸氏は「自社便開始以来、大きなクレームはなく、事故などのトラブルは1件も起きていない」と自信をのぞかせる。

他にも、社内の人事ポストとして自社便担当を設けておくことで、人材の受け皿にしたいとの思いもある。松丸氏は「当面の目標として週5回、1日当たり60件程度を配送できるところまで増やしていきたい」と意気込んでいる。



繁華街を通り抜けてサロンまで丁寧に届ける


ロックブレーキ付きの台車で安全に配慮

(藤原秀行)

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