ボランティアパイロット派遣、医療用品の無償輸送なども展開
米フェデックスは、ニューヨークに拠点を置く眼科医療の国際NGO(非政府組織)オービス・インターナショナル(Orbis International)が展開している社会貢献活動「フライング・アイ・ホスピタル(Flying Eye Hospital、FEH)」を約40年支援している。
FEHは世界で唯一の航空機に搭載された認定眼科病院。様々な国を訪れ、医師に研修の機会を提供することで、医療水準の向上を後押ししている。まさに「空飛ぶ眼科医院」の表現がぴったりと来るユニークかつ意義ある活動だ。
4月21~25日、FEHとして運航している航空機MD-10が初めて日本を訪れ、関西国際空港でメディアなどの関係者に内部を公開する親善ツアーを開催した。フェデックスはFEHの日本訪問に合わせて、FEHサポートの歴史を報告した。
FEHに用いている専用機(以下、いずれもオービス・インターナショナルなど提供)
FEHは手術室、研修室、手術前後のためのケアルーム、VR(仮想現実)をはじめとした最新のシミュレーショントレーニング技術を搭載。日本人を含めたオービスの医療専門家が全てボランティアで参加、訪問先で医師らに最新のノウハウを伝えている。30を超える国から400人の医療ボランティアが集まっているという。
FDHに用いる飛行機は現在のものが3代目。これまでに95カ国以上で活動を展開してきた。
機内の設備
研修の様子
フェデックスは1982年、航空機をオービスに寄付。2000年以降はグローバル・スポンサーとして資金、物流、航空機運航の各面でサポートを継続的に行ってきた。
その一環として、ボランティアパイロットの派遣やパイロットのトレーニングも担っている。今回、関空まで「空飛ぶ眼科病院」のMD-10を操縦したのは、米空軍出身でフェデックスの従業員を経て現在はオルビスに所属しているシンディー・バーウィン氏だ。
バーウィン氏は「FDHを操縦できることは私の人生の中でも大きな喜び。自分の親の声や手の感触を知っていても姿は見たことがない子供がいます。そんな子供が初めて親の姿を目にした途端に見せる笑顔は、喜びだけではなく、親しみや絶対的な愛情にも満ちていて、毎回感動します。オービスにはパイロットは16人しかいないため、このチームの一員であることは私にとって非常に重要なことです」と説明。活動への支援を呼び掛けた。
バーウィン氏
関空はフェデックスの重要な拠点の1つで北太平洋地区ハブとしても運営している。FDH来日に際し、フェデックスの北太平洋地区ハブのオペレーションチームが、機材の積み下ろしや輸送、航空機の誘導をはじめとするグランドハンドリングをサポートした。
フェデックスは2026年までの5年間、オービスとパートナーシップの関係維持を約束している。具体的には、年2回のFEHの実施を後押しするほか、医療支援プログラム実施で必要な医療用品の無償輸送(毎年15万ドル=約2000万円相当)を提供。併せて、2026年までに世界の各地域の眼科医や眼科の専門家10人に対し、医療訓練「FedEx Fellows(フェデックス・フェローズ)プログラム」の実施を支援する。
他にも、年1回の機材の安全点検を含む、定期的なメンテナンスをフェデックスが担うほか、必要に応じて予備の航空機部品を提供する。温度管理が必要な医薬品などを輸送する場合に、貨物の状態をモニタリングすることができるシステム「SenseAware(センスアウェア)」を提供する。
さらに、フェデックス従業員がボランティアとして、FEHのパイロット派遣や航空機の整備などを担当するという。
患者のイメージ
(藤原秀行)