【現地取材】ESRが川崎・東扇島で竣工の国内最高層物流施設を公開

【現地取材】ESRが川崎・東扇島で竣工の国内最高層物流施設を公開

34.9万㎡、トータル48テナントが入居可能な設計に

ESRは5月23日、川崎市川崎区東扇島で3月末に竣工した、物流施設としては国内最高層の地上9階建て(倉庫は8層)、全高約70mの巨大なマルチテナント型物流施設「ESR東扇島ディストリビューションセンター(DC)」のメディア向け内覧会を開催した。

東棟と西棟で構成し、トータルの延床面積は34万9003㎡を確保。自動車メーカーの関連施設跡地約7万7725㎡を活用した。同社で開発した案件としては、兵庫県尼崎市の「ESR尼崎DC」(約38.8万㎡)」に次ぐ規模となっている。最大で各フロア6テナント、トータルで48テナントが入居可能な設計を採用している。

大規模な物流施設を最大限有効かつ安全に使えるよう工夫しているのが大きな特色だ。BCPや環境負荷低減にも尽力している。

ESRは同一エリアで、「東扇島DC」と同規模の延床面積約30万㎡の物流施設をもう1棟開発する準備を進めており、着工は2025年、竣工は28年以降の見通し。


施設外観(ESR提供)

スプリンクラー使い防火区間を3000㎡に設定

首都高速道路湾岸線の東扇島ICから約1km。川崎港に隣接し、羽田空港まで10km、横浜港まで15kmと国際物流にも対応可能な立地となっている。2028年には近隣で川崎港臨港道路東扇島水江町線が開通する予定で、川崎内陸部へのアクセスが飛躍的に改善される見通し。

機能面では各フロアに中央車路を通し、トラックやトレーラーが敷地内に入ってから一方通行で走行、荷積み・荷降ろししてそのまま敷地から出られる設計を採用。トラックバースは計565台分設けるなど、大規模な物流施設を最大限有効かつ安全に使えるよう工夫している。

1階は冷凍冷蔵ニーズに対応できるよう、有効高は6.5m、床荷重は1㎡当たり2tを確保。2~8階は最近の物流施設の標準的なスペックの有効高5.5m(8階は最大8.5m)、床荷重は1㎡当たり1.5tを持たせている。


8階の倉庫スペース


一方通行の中央車路

また、5~8階は乾式のスプリンクラーを採用し、防火区画を3000㎡で形成。将来のロボット導入などで広くフロアを使いたいとのテナントニーズに配慮している。6~8階のトラックバースは行政上の要件を満たせば駐車場として使うことも可能にしている。ドッグレベラーが将来対応も含めて各フロアで12基まで取り付けられる。

現時点で1、6、7階の一部で3PL事業者2社が入居を決めており、全体の20%程度が埋まっているという。

オフィススペースも都心の中規模ビル並み確保

倉庫以外のオフィススペースも各フロアのトータルで約1万㎡と、東京都内の中規模オフィスビル並みに確保しているという。カーテンウォール(ガラスの壁)も取り入れている。

BCP対応としては、免震構造を採用しているほか、臨海部に位置していることを踏まえて1階のトラックバースと倉庫はともにハザードマップで想定している津波の高さを上回る床レベル高を確保。非常用自家発電設備も採用している。24時間・365日の有人管理で、顔認証セキュリティなどを取り入れる予定。

環境負荷低減のため、全館LED照明の導入、ランプウェイの壁面緑化などを実施。屋上では2.5MW規模の自家消費型太陽光発電設備を稼働させる予定。日本品質保証機構(JQA)によるグリーン電力発電設備認定を受け、ESR独自でグリーン電力証書発行システムを運営していく。


オフィススペース。カーテンウォール越しに東京湾が広く望める

(藤原秀行)

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