【現地取材】イケア・ジャパン、サステナビリティ確保へEV投入やモーダルシフトを拡大

【現地取材】イケア・ジャパン、サステナビリティ確保へEV投入やモーダルシフトを拡大

メディア説明会開催、「全ての輸送をゼロエミッションにしたい」と決意表明

イケア・ジャパンは5月25日、埼玉県三郷市の大型店舗「IKEA新三郷」で、同社グループが日本を含むグローバルで展開している事業と、イケアグループを取り巻く社会や環境の両方でサステナビリティ(持続可能性)を高めていくための具体策に関するメディア説明会を開催した。


「IKEA新三郷」の外観

イケアグループ全体として同日公表した2022年版「サステナビリティレポート」と「クライメートレポート」を踏まえながら、取り組みの進捗状況と今後の方向性を報告。グローバルの目標として、事業を成長させながら2030年までにバリューチェーン全体で排出している温室効果ガスの量を、16年の実績より50%削減することなどを掲げている点に言及した。

その実現に向け、店舗に太陽光発電設備を導入し、使う電力を再生可能エネルギーで賄ったり、不要になった家具を引き取って再販する「サーキュラー(循環型)マーケット」を広げたり、店舗のレストランで出しているメニューに、ミートボールの代わりにえんどう豆由来のたんぱく質などを使っている「プラントボール」を採用したりしていることなどを紹介した。

物流の面では、日本を含む世界の各エリアで、2025年までにラストワンマイルのゼロエミッション(温室効果ガス排出実質ゼロ)配送100%を実現することを目指しているとあらためて表明。日本では顧客へのラストワンマイルの商品配送にEV(電気自動車)の導入を進めているほか、海外から輸入した商品を各大型店舗まで輸送する際、トラックの代わりに鉄道貨物や内航海運を利用するモーダルシフトにも注力していることを明らかにした。

また、商品配送時の「置き配」提供や、大型商品を購入者が自ら都合の良いタイミングで受け取ることが可能な「商品受け取りセンター」の拡充を進めていることも引用。物流面でのサステナビリティ強化に照準を合わせている姿勢をアピールした。


ラストワンマイル配送に使っているEV。日本ではパートナーの運送会社保有分を含め現状は計8台を運用している

大型車輸送も「100%ゼロエミ」に

説明会に出席したイケア・ジャパンのペトラ・ファーレ社長兼CSO(最高サステナビリティ責任者)は「サステナブルな行動は私たちの暮らしをダウングレードさせるものだと捉えられてはいけない。サステナブルな商品や暮らしはプレミアムな価格が付いてもいけないし、より多くの方々にとって手ごろな価格でなければならない」と述べ、環境負荷の低い商品も手ごろな価格帯で提供するスタイルを堅持していくことに強い決意を示した。

また、「個人的には、日本は文化として『もったいない』という言葉があるように、サステナビリティに取り組む姿勢があると思うが、サステナビリティや気候変動、不平等の問題に対して知られていないところがまだあると感じている」と語り、サステナビリティの具体策の周知により注力していきたいとの思いをにじませた。


ファーレ社長兼CSO

イケア・ジャパンの平山絵梨Country Sustainable Manager(カントリー・サステナビリティ・マネジャー)は、温室効果ガスの排出削減について、グローバルの22年実績は16年実績比で12%カットまでこぎ着けられたと成果を強調した。日本の店舗では太陽光発電設備導入などで100%再生可能エネルギー由来の電力に切り替えており、そのうち自ら生み出している割合は10%に上ると説明した。

商品についても家具は分解、再組み立てが容易な設計とすることで寿命を延ばせるようにしていることを明かした。


平山氏

物流領域については、日本など各エリアでラストワンマイル配送に加えて、事業活動で使う中・大型車両をEVや製造時に温室効果ガスを生み出さない「グリーン水素」を使ったFCV(燃料電池車)へ100%転換していく国際的な活動「EV100+」に加盟しているのを踏まえ、2040年までに温室効果ガスの排出ゼロの大型車輸送100%への切り替えも公約していくと語った。

平山氏は船舶燃料についても同様の取り組みを進めることで「全ての製品輸送をゼロエミッションでやっていきたい」と述べた。

イケア・ジャパンでは2009年ごろから大型トラックによる長距離輸送を、鉄道貨物や内航海運にモーダルシフトしていると解説。2024年に群馬県でオープン予定の北関東初となる大型店舗「IKEA前橋」についても、愛知県の物流拠点から製品輸送していく際、一部は内航船を使い、環境負荷が低い輸送を目指すことを明らかにした。

この日は併せて、「IKEA新三郷」店内で、実際に講じているサステナビリティの取り組みを紹介。商品輸送時の固定に用いたストレッチフィルムを100%再生し、再びストレッチフィルムとして使っていることや、使用済み家具を再販売するサーキュラーマーケットを展開していることなどをメディアにPRした。


充電池や水筒として使えるボトルなど、日常生活のサステナビリティ向上に生かせる商品を集めたコーナー


キッチンなど住まいからサステナビリティを高められる提案をしているコーナー


段ボールは圧縮し、購入した商品の梱包材に加工して店舗で提供


使用済み家具を再販売


ストレッチフィルムは100%リサイクルをスタート


太陽光発電設備で店舗用電気を供給

(藤原秀行)

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