「今回は第1ステップ、冷凍・冷蔵などにも対象広げる可能性」

「今回は第1ステップ、冷凍・冷蔵などにも対象広げる可能性」

郵政&ヤマトグループ協業発表会見詳報(中編)

ヤマト運輸・鹿妻明弘専務執行役員
「協業の目的は大きく3つあり、最初にお客様の利便性向上。ここを起点として、われわれがいろいろな、外的なチャレンジに向けて、2つ目が2024年問題緩和への貢献。3つ目が環境問題、カーボンニュートラルへの貢献。物流の2024年問題でセンセーショナルなデータを1つ取り上げると、21年の運送事業者1人当たりの年間労働時間は2514時間。しかし、全産業と比較すると2112時間で、約402時間の差がある。20%ほど労働時間が長い。やはり、いろいろな工夫をしていかないと、なかなか全産業の時間には追い付かないのではないか。もう1つ、環境問題は2019年の実績が10億トンCO2。これを30年までに約40%削減の6億トンに変えていかないといけない。普通にやっているとなかなかできない目標と認識している」

「そういう中で、今一度、両グループのネットワークという観点での強みを比較した時に、簡単に言うと、これまでのネットワークは2t、4tのトラックのネットワーク。全国に約3万5000台を配置している。その約95%にクールの設備、これは約2000リットルの冷蔵庫を中に兼ね備えている。家庭用冷蔵庫は大型4台分くらい」

「これに対し、日本郵政グループさんの非常に大きな強みが、2輪、軽4輪のネットワークを日本全国に張り巡らせている。全国に2輪の設備として8万2000台、軽4輪で約3万台のネットワークを配備している。ここをうまく、オートバイから計4輪、2t、4t、そしてクールという、われわれ、日本に存在するリソースをどう組み合わせればベストになるのか、ということを考えたときに、われわれが出した答えが、まず最初にここをやってみようということで、投函事業ということになる」

「われわれの仕事そのものは、お客様から荷物をお預かりして、その後は宅急便センター、あるいは郵便局に持ち込み、それを全国に配送するために、ターミナルと言われるところに持っていっている。日本全国に向けて発送する。ここの発送局から、到着側の大きな郵便局から郵便局に移り、その後にラストマイルをやる。お客様からの集荷は引き続き、ヤマトがやり、発送郵便局、引き受け地域区分局、ここから日本全国に幹線輸送するところから、日本郵政グループさんのリソースを使って仕事を進めることを考えている。クロネコゆうパケットも同様。2023年10月から段階的に、24年度末に向けて徐々に数を拡大する予定。投函事業を、双方のリソースで新しい流し方を計画している」

「今回の協業は第1ステップと考えている。いろいろなところが展開の可能性としてあると思う。先ほど、2000リットルの冷蔵庫を備えているとのお話をしたが、ここを利用していただいて冷凍・冷蔵をもっと拡大していく、お客様の利便性をもっと拡大していくというところに取り組んでいったり、日本全国いろんなところに郵便ポストが張り巡らされているが、このポストのもっと有効的な活用であるとか、あるいは飛行場でのカウンタービジネスとか、あるいはゴルフ(宅急便)、あるいは郵便局の受け取りサービスでの協業、あるいは引き続き連結トラック、幹線輸送で、どんどん協業を拡大していくというところも考えている」

「非常に投函ビジネスということで第一歩を進めたが、非常に夢のある協業だと認識しているので、ここの部分はぜひ期待していただきたい」

「自社の経営資源をいかに有効活用するかを検討」


会見場に並ぶ各社幹部(日本郵政提供)

【質疑応答】
――協業の最も大きな目的は。収益貢献へのインパクトは。
日本郵政・増田社長
「冒頭のお話からも2つ申し上げたが、まず両者にとってのそれぞれの事業の成長に資する。これが目的としては一番大きい。プラス、2024年問題、環境問題、ということになる。事業の成長ということで申し上げると、やはりこれからeコマースは大変成長市場だが、大変ニーズのある商品、今のヤマトのネコポスなどだが、これをわたくしどもの方で委託を受けて、受託してお客様のお手元に2輪や軽4輪でお届けする。大幅な委託料による増収が見込まれる。そしてこれは鹿妻氏からもご説明があったが、今後に向けて、両社のリソースを掛け合わせると、どういうお客様向けサービスにつなげていけるか、これを両者でよく相談して、今後の事業の成長に生かしていきたい」

――どういった経緯で協業に至ったのか。
日本郵政・増田社長
「両者は実は、2020年の12月に基本合意して、先ほどのDM便だが、一部の北海道、山形などでヤマトのDM便を取り扱っている。ただ、もちろん今回とはだいぶ中身が変わっていて、最後にお届けするところだけ日本郵便が受けるというものだったが、今年に入って、もう一度合意書を見直し、両者としてより成果が出るような、進めるものがないかということで、今回の2つの商品について、合意に至った」

ヤマトHD・長尾社長
「経緯は、今お話しした通り。やはり、当社としても1997年からクロネコメール便ということで、投函領域のビジネスを展開してきた。ただ、やはり主力は2tのネットワークになる。その当社としての経営資源をいかに有効に使うかということを検討していく中では、やはり、この投函という領域の中では最もそのビジネスを得意とされているネットワークにお願いしていくのが、最も自然ではないかという考えに至った。もちろん、目の前に迫り来ている2024年問題を含め、それ以降もやはりわれわれ物流事業者にとって、いかに経営資源を有効活用するかというのが最大の経営マターと考えている。その上で、いい座組みができて、そして前向きなコミュニケーションが取れて、今回の合意に至ったというのは非常にポジティブな話だと考えている」

――両者の経営に与える影響は。
日本郵政・増田社長
「日本郵政グループ、日本郵便について言うと、荷物の量が2020年をピークにして少し減っていたゆうパック、ゆうパケット、そしてそのトップラインを引き上げるということが大きな経営課題になっていた。DM便、ネコポスは大変大きな量になっていた。私どもが狙っているトップラインの引き上げ、そしてわれわれが得意とする2輪、軽4輪でのポスト投函に資する商品としてわれわれが取り扱うことができる、ということで非常に経営にプラスの影響があると思っている。両者の委託料や価格などの協議はこれからまた、十分に行っていくので、経営に与える数字的なものは、今この場で明らかにするのは差し控えるが、いずれにしても成長に大きく資すると思っている」

ヤマトHD・長尾社長
「直近の年度でもDM便は扱いが8億冊近く。ネコポスはeコマース向けサービスとして主に商品輸送に使われているが、直近では4億冊を超え、非常に毎年、高い伸びを示している。ただ、この2つのサービスはやはり、当社としてサービス提供していく上でそれなりの経営資源を使っていることは否定できない。この経営資源をどこに向けていくかという判断になるんだろうと思うので、これから当社の品ぞろえとして引き続き投函商品を維持しながら、両者がパートナーシップを組むことで、旧来に比べてさらに良いサービスを構築できる可能性があると思っている。そういう意味では当社にとってまだまだこの領域のビジネスを広げていく上での、強いパートナーと一緒にやっていけるという意味では、いい材料と言えるのではないか。今期業績の影響は、これから順次、およそ2年間かけて稼働させていくので、あまり大きな影響はないとみている」

日本郵便・美並義人専務執行役員
「数字を補足する。DM便の売り上げは500億円を超える。ネコポスは4億個で800億円弱。両方合わせて1200億円。受託料でわれわれに出るので、契約は今後の話だが、1200億のうちのある程度がわれわれの収益増になる。個数も日本郵便の個数になる。段階的な拡大ののち、2025年のころには全体がわれわれ受託することになるので、かなりの影響になると思う」

(後編に続く)

(藤原秀行、安藤照乃)

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