新たな直仕入れスキーム構築目指す、粗利率30%以上の取引拡大図る
紀伊國屋書店と「TSUTAYA」を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)、日本出版販売の3社は6月23日、書店主導の出版流通改革と実現を推進するため、合弁会社の設立に向けた協議を開始すると発表した。6月19日付で基本合意契約を締結した。
3社調印式に参加した(下段左から)CCC・増田宗昭会長、紀伊國屋書店・高井昌史会長兼社長、日販グループホールディングス・吉川英作社長
(上段左から)CCC・高橋誉則社長、紀伊國屋書店・藤則幸男副社長、日販・奥村景二社長
日本全国における書店の数は過去10年間で約3割減少し、全国市区町村のうち4分の1を超える自治体が書店ゼロ市町村となっている(2022年9月現在・出版文化産業振興財団調べ)など、出版と書店をめぐる環境が厳しさを増しているのに対応するため、書店主導による出版流通改革に取り組むことにした。
各出版社が発行していく多種多様な出版物を、書店を通じて全国各地の読者に届け続けるための出版流通サイクルの創出と、そのサイクルを持続可能なものとするための仕組み変革により、業界の成長に加えて日本の文化と社会の発展に寄与することを狙う。
協議を通じて、書店と出版社が販売・返品をコミットしながら送品数を決定する、新たな直仕入れスキームの構築を目指す。粗利率が30%以上となる取引を増やすことで書店事業の経営健全性を高め、街に書店が在り続ける未来を実現させていきたい考え。
また、新たな直仕入スキームの構築に際し、紀伊國屋書店・CCC・日販各社が保有するシステムやインフラストラクチャー、単品販売データ等を活用し、欠品による販売機会の喪失を最小化すると同時に、売り上げ増大と返品削減、環境に優しい流通を実現し、読者・書店・取次・出版社全員のメリットを向上させることを構想している。
さらに、機械学習等のテクノロジー(AI発注システム)を活用した、精度の高い需要予測に基づく適正仕入れや、適時適量かつESGに基づくサスティナブルな流通(環境・働く人に優しい流通)の実現を図るとともに、ユーザー利便性向上による購入者の拡大や購入数の増加に向け、書店横断型サービス・共通アプリなども視野に入れた新たな販売促進施策やレコメンド施策を実施する。
加えて、新たな直仕入れスキームを実効的に推進していくため、紀伊國屋書店・CCC・日販が出資する合弁会社の設立を検討する。3社は「より豊かな未来を築いていくために、私たち3社の志に賛同いただいた他書店様も合流できる、オープンな仕組みを目指していく」と説明している。
3社の担当者による協議を速やかに開始し、他の書店や各出版社にも説明しながら、2023年秋をめどに実行計画の策定と合弁会社の設立に向けた準備を進める。
事業スキーム(いずれも3社提供)
(藤原秀行)