消費者庁の意見交換会で表明、物流業界と隔たり大きく
楽天グループの三木谷浩史会長兼社長が代表理事を務める新経済連盟は8月10日、消費者庁が開催した、インターネット通販での「送料無料」表示の見直しに関する意見交換会で、「別の表現への置き換えは様々な理由から困難」との見解を表明、見直しに慎重な姿勢を鮮明にした。
インターネット関連企業などで構成するセーファーインターネット協会も同日の意見交換会で、「『送料無料』表示を見直すことにより、『運賃・料金が消費者向けの送料に適正に転嫁・ 反映される』ことになる根拠などを示していただきたい」などと疑問を表明、新経済連盟と足並みをそろえた。
6月の初会合では、全日本トラック協会が「送料無料」表示に関し、「送料は運送の対価として収受するものであり『無料』ではない」「『輸送にはコストがかからない』という間違った考え⽅を植えつけることになる」などと主張する資料を公表していた。「送料無料」の見直しを強く求めている物流事業者と通販事業者らの意見の隔たりは大きく、歩み寄りには時間がかかりそうだ。
「EC事業者も企業努力でビジネス維持」
この日の会合で新経済連盟は、EC事業者が配送事業者に対して支払う費用は上昇し、BtoBの物流コストも上がる中、EC事業者としても販売事業者間の競争環境に対応する企業努力をしていると強調。
「○円以上の購入で送料無料」や「送料無料」といった表示で、購入単価や売り上げの向上、消費者の満足度アップなどが見込めると説明した上で「宅配便の値上げなどがある中でも、商品価格の見直しやその他のコスト削減など企業努力で送料無料サービスを維持している」と指摘した。
その上で、ECでは消費者の注文時に配送料の実費を確定できないことが多く、「送料別」として別途請求している場合でも、運賃実費とは必ずしも一致しておらず、一部は販売事業者が負担していることも多いと解説。「全国一律送料」として配送地域やサイズに関わらず同一額を送料として請求しているケースを引用した。
EC事業者が「送料別」と説明していても、必ずしも「当社は送料を負担していない」とは言えず、「送料は当社負担」と「送料無料」は違う意味を持つと指摘。「送料込み」の表示に関しても、注文手続き時の表示などでは意味が通じにくいことがあるとの見方を示した。
「荷主のEC事業者は、消費者に対して送料無料表示をしてもしなくても、配送キャリアが提示した運賃を支払っており、その運賃も上昇している」と言及。運賃や物流コストだけでなく、様々なコストが上昇する中、EC事業者は販売価格設定や企業努力で競争しながらビジネスを維持しているとの立場をアピールした。
また、EC事業者から消費者に向けた送料無料表示が原因で物流事業者が適正な運賃・料金を収受できていないことを裏付けるような合理的根拠は示されていないなどと主張した。
最後に、「送料無料」見直しの代替案として、EC事業者を含め関係事業者や行政による、物流環境に関する消費者への周知啓発コンテンツの表示、 再配達削減に向けた具体的施策の実施・拡大、 物流の担い手が重要視されていることや感謝されていることを実感しやすくする施策の実施、 物流の担い手に支払われる賃金の適正化のための調査・調査結果に基づく具体的施策の実施を提案した。
セーファーインターネット協会は「運賃・料金が消費者向けの送料に適正に転嫁・反映されていない事実はあるのか」、「『送料無料』表示により、消費者が運賃・料金が発生していないという誤解をしているとの事実が前提になっているようだが、そのような事実は存在するのか」などと疑問を呈した。
(藤原秀行)