中国の日本産水産品全面禁輸、食品関連700社超に影響

中国の日本産水産品全面禁輸、食品関連700社超に影響

帝国データ調査、国内市場や代替輸出先の確保急務と指摘

帝国データバンクは8月25日、東京電力福島第一原子力発電所からの「ALPS処理水」放出を受け、中国政府が日本の水産品全面輸入停止に踏み切ったことに関する影響の調査結果をまとめた。

中国へ直接・間接的に輸出を行う食品関連企業は、対中輸出している全9270社のうち、1割弱の700社超に及び、1社当たりの取引における中国向けの割合も50%を超える企業が多いなど、「最大の得意(販売)先」として中国市場の存在感が大きいことが分かった。

帝国データは「国内の食品輸出業者に加え二次・三次取引などを含めたさらに多くの企業で甚大な影響が及ぶとみられ、国内市場や代替輸出先の確保といった措置が急がれる」と指摘した。

対象は、帝国データバンクの調査報告書データから判明した中国国内の企業(現地法人など)と直接取引している企業。中国本土のほか「澳門(マカオ)」「香港(ホンコン)」の両特別行政区も対象に加えている。

在中国の企業に製品やサービスなどを販売(提供)する、対中国への輸出を直接・間接的に行う日本企業は今年8月現在で国内に9270社存在しており、前回の2019年調査時点で判明した5045社から83.7%増加した。このうち、香港向けに輸出を行う企業は2639社で、19年から81.3%増えた。

中国への輸出企業を関連産業別に分類すると、最も多いのは自動車や家電など電化製品、製造機械など「機械・設備」で、全体の約4割を占めた。中国の最終組み立て工場へ向けた部品供給などのほか、中国市場への完成品輸出・販売などが多く見られた。

次いで、漁業や農業など一次産業から、食品加工・販売までを含めた「食品分野」が7.8%で続き、このうち鮮魚卸や水産加工など水産品関連を主業とする企業の割合が1.8%だった。取り扱い品目は、和牛や日本酒、健康・美容系飲料など清涼飲料水、生鮮食品など多岐にわたり、水産品では干しナマコやホタテなど多様な食品の取り扱いが見られた。

自社の販売額のうち中国向け販売(輸出)が占める割合は、全産業平均(対象:約2000社)で1社当たり42.8%に上った。近年の日本食ブームを背景に中国向けの販売が伸びる食品産業では1社平均で50%を超え、「機械・設備」など他産業に比べて割合が大きいほか、全業種に比べても高く、中国向けへの比重が高い傾向が浮き彫りとなった。

日本産食品への高い知名度や購買力などを背景に食品の輸出先として重視される香港では、食品産業の占める割合が12.0%・316社と1割を超えた。このうち、水産品関連を主業とする企業は香港向け輸出企業全体の2.1%・56社と少ないものの、販売額のうち香港向けが占める割合はいずれも大きかった。

(藤原秀行)※いずれも帝国データバンク提供

経営/業界動向カテゴリの最新記事