波動対応や配送効率化、アセット有効活用を後押し
倉庫の提供者と利用者のマッチングサービスを展開しているスタートアップ企業のsouco(東京)が、サービス内容拡充に動いている。一定の広さの倉庫スペースを利用するのに加え、個々の貨物単位で倉庫を使いたいという「寄託倉庫」のニーズにも本格的に対応を始めた。
より多様な形態で、希望する期間限定で倉庫スペースを自由に押さえられる環境を広め、メーカーや流通業の波動対応、物流事業者の配送効率化をサポートしていきたい考えだ。同時に、倉庫スペース提供者にも、アセットの有効活用とキャッシュフロー改善というメリットを引き続き積極的にアピールしていく方針だ。
賠償保険や決済までワンストップで担保
同社は2016年創業。空いている倉庫スペースを有効活用したい倉庫事業者が同社のウェブサイトから情報を登録。一時的に利用したい荷主企業や物流事業者と仲介している。賃料や利用可能な期間などを明示し、基本契約書もフォーマットを設定するなど、短期間で利用開始までこぎ着けられるよう配慮している。
併せて、サービスユーザーには東京海上日動火災保険と共同開発した損害保険に加入してもらうことで商品破損などのリスクへ万全に備えるとともに、マネーフォワードグループで企業間の後払い決済・請求代行を手掛けるMF KESSAI(東京)と連携して独自の決済システムを運営。倉庫の提供者には料金の先払い、利用者には後払いを実現しており、新規の取引相手であってもsoucoが与信を引き受ける形で安心してサービスを使えるよう工夫している。関連する手続きをワンストップで提供していることも、利用開始までの期間短縮につながっている。
こうした配慮も奏功して、首都圏を中心に倉庫スペースの登録が広がり、直近では約13万坪に上る。提供者には伝統的な倉庫を運営している事業者に加え、先進的な賃貸物流施設デベロッパーや大手物流事業者も名を連ね、季節波動であふれた商品を一時保管するなどの需要を着実に掘り起こしている。日割りで料金を精算できるため、外部倉庫の変動費化につながるのもユーザーにとって魅力だ。スペース利用に加えて作業の委託も可能としている。
マッチングサービスの概要(souco資料より引用)
「1パレット1日」からスペース提供
これまでは、例えば数百坪を半年借りるといった、倉庫スペースを区画単位やフロア単位などまとまったボリュームでレンタルしたいとのニーズが多かった。ただ、1パレット分といったように小さい単位で倉庫スペースを使う必要がある顧客も多く存在しており、soucoでは「寄託貨物にも本腰を入れて対応していかなければマッチングサービスとしては十分とは言えない」(中原久根人代表取締役)と判断、昨年あたりからシステムを整備するなどして、受け入れの拡充に乗り出している。
寄託貨物は「1パレットで1日」といった極小な単位からの利用を受け付けている。入出庫の荷役作業は倉庫の提供者に依頼する形を取り、提供者サイドが受け入れやすいよう、荷姿はパレットや木枠木箱、かご台車などsoucoが指定したものに限定している。既に利用の申し出が寄せられているという。
寄託貨物の他にも、新たな施策として、首都圏でスペースの利用者に倉庫周辺で荷役を提供できる物流事業者を紹介する取り組みに着手。中原代表取締役は「スペースと荷役の両面でサポートできれば、一時的に倉庫を借りる上で必要最低限の機能を提供可能になる」と狙いを語る。
マッチングの基盤となる倉庫スペースは、面積に加えて、場所の数も増やすことでユーザーがより柔軟な選択をできるよう努めていく。併せて、将来は日割りからさらに踏み込み、時間単位でスペースを賃借できるようにするなど、倉庫をより多様な使途に充てられるようにすることを検討していく考えだ。soucoが使命として掲げている、必要な時に必要な量だけ倉庫を使えるようにして拠点の最適化を後押しする「なめらかな物流」の実現に邁進していく構えだ。
(藤原秀行)