主要デベロッパー、大変革への対応に全力
物流に関する大型展示会「国際物流総合展2023 第3回INNOVATION EXPO」が9月13~15日の3日間、東京都江東区有明の東京ビッグサイトで開かれた。1994年の初開催から2年に1度のペースで実施してきた「国際物流総合展」のスピンオフ企画で、今年が3回目。
トラックドライバーの長時間労働規制強化に伴う物流現場の混乱が懸念されている「2024年問題」を直前に控え、主要な物流施設デベロッパー各社は物流施設の提供にとどまらず、ロボット導入のサポートなどでテナントの物流オペレーションを効率化し、入出荷を迅速にして同問題に対応できるようにする姿勢を異口同音にアピール。
さらに、テナントの脱炭素も後押しするスタンスを強調し、「選ばれるデベロッパー」になるべく奮闘する各社の姿勢が際立ち、大きな変革への対応に全力を挙げていることを強く印象付けた。
会場に設置された巨大なパビリオンがメッセージを繰り返し発していた
「2時間以内に作業完了」実現に貢献うたう
プロロジスは「DERIVERING VALUE BEYOND THE BUILDING」のポリシーを大きく打ち出し、物流施設での再生可能エネルギー利用など脱炭素への貢献を全面にアピール。実質的に100%再エネ由来の電力を使えるようになるポイントなどを訴求した。並行して、センターの立ち上げから庫内自動化まで入居テナントの多様な物流課題に対応するコンサルティング機能についてもPRしていた。
プロロジスのブース
三井不動産は東京23区内で2024年9月に竣工する予定の、日鉄興和不動産と共同開発している大規模物流施設「MFLP・LOGIFRONT東京板橋」を積極的にアピール。三井不動産が得意としている地域一体開発のノウハウを注ぎ込み、水害時に地域住民1000人の避難を受け入れられる高台広場を整備するなど、周辺地域とも共生していくことを強く意識している点を説明した。また、人手不足の深刻化を考慮し、他の開発案件でも、物流施設で働く従業員向けに、ホビールームやフィットネス施設、カフェテリアをスマートフォンから予約できるようにするなど、満足度向上が可能な点を訴えた。
三井不動産のブース
大和ハウス工業は都市圏に加えて地方圏でも着実に開発実績を重ねていることをアピールするとともに、大和物流や大和ロジテック、フレームワークス、Hacobu、アッカ・ネットワークスなどグループとしてブースを構え、開発事業の「総合力」を強調。物流ロボットやトラック予約システムの提供などを通じて自動化・省力化を推し進めた「次世代物流センター」を実現できると来場者に呼び掛けた。政府が2024年問題への対応としてまとめた政策パッケージの関連で、2時間以内に荷受け・荷降ろしなどの作業を完了できるようにするルールの順守にも貢献できると繰り返し主張していた。
大和ハウス工業のブース
三菱地所は、高速道路を活用して首都圏広域をカバーできる神奈川県央エリアで自社ブランドの物流施設を相次ぎ開発していることなどを掲示。さらに、「物流施設に、オアシスを。」のコンセプトに基づき、グループ企業が自然とのつながりを向上させられる「バイオフィジックデザイン」を物流施設でも施していることに言及、従業員満足度向上の点で独自性を発揮できると自信を見せていた。傘下の東京流通センター(TRC)の存在にも触れ、物流施設の適正なアセットマネジメントで強みがある点に言及していた。
三菱地所のブース
東京建物は以前から注力している、屋上での太陽光発電などで環境負荷が低い物流施設を生み出している姿勢を積極的にPR。さらに、物流マテハン機器などを扱うジャロックと共同で展示し、高層ラック向けのピッキング機器などのデモを公開、テナント企業の自動化需要へ着実に対応していくことを来場者にコミットしていた。
東京建物のブース
東急不動産は「LOGi’Q(ロジック)」ブランドの物流施設紹介に加えて、Phoxterと物流施設で次世代高速通信のローカル5Gを生かした物流オペレーションの効果検証に乗り出していることや、東急不がグループの経営リソースを最大限生かしてテナント企業の従業員やパートタイマー確保を後押しするサービスを手掛けていることを報告。労働力確保にも取り組めるとの考えを示していた。
東急不動産のブース
シーアールイー(CRE)は物流施設の機能や開発実績の紹介に加え、グループのAPTやストラソルアーキテクトによる物流改善ソリューションを合わせて展示。APTが手掛けている、形状がスリムなAGV(自動搬送ロボット)による自動倉庫システム、ストラソルアーキテクトのIT面のコンサルティングの実績などを発表。庫内の空間利用効率アップなどを期待できる点を正面に据えた。
CREのブース
住友商事は、デベロッパーの立場からも物流DX実現を図る方針を明示。その一環として、量子コンピューター技術を駆使し、従業員の最適な配置を導き出す機能などを持つ倉庫運営高度化システム「スマイルボードコネクト」を大々的に来場者へ売り込んでいた。併せて、ドローンを使った倉庫内の遠隔点検を実現し、危険作業自動化や修繕コスト低減などを図る計画を進めていることも取り上げた。
住友商事のブース
グッドマンジャパンは、茨城県常総市でこのほど竣工した基幹物流施設「グッドマン常総」を展示の中央に据え、行政や民間と連携した同社最大規模のプロジェクトになったと成果をPR。ビジネスパークを作り上げる大規模な開発にも引き続き、積極的に乗り出す決意を如実に表現した。
グッドマンジャパンのブース
日鉄興和不動産は、開発実績と並び、三井不動産と同じく、同社と共同開発している物流施設「MFLP・LOGIFRONT東京板橋」の竣工イメージなどを大々的に紹介。将来のドローン物流を念頭に置いた技術開発・研究スペースを賃貸用として設けるなど、先駆的な取り組みを施そうとしている点を強調した。
日鉄興和不動産のブース
霞ヶ関キャピタルは、人手不足の深刻化を受け、冷凍自動倉庫を広く展開していく計画を持っている点など独自性をアピール。AIやIoTを取り入れ、トラックの到着時刻に合わせて庫内準備を進められるようにし、ドライバーの待機時間削減につなげていくことなども紹介、2024年問題解決への独自の切り口を発表していた。
霞ヶ関キャピタルのブース
三菱商事都市開発は、「都市の可能性を開く。」のコンセプトを掲げ、首都圏などの物流施設開発状況を詳細に報告。三菱商事グループの連携を生かし、庫内作業自動化などのニーズに対応していると強調した。自社の「サステナビリティ方針」に則り、太陽光発電システムの搭載などを進めていると語った。
三菱商事都市開発のブース
アライプロバンスは、自社開発としては2棟目となる、東京都江戸川区東葛西のマルチテナント型物流施設「アライプロバンス葛西」のイメージを展示。江戸川に接するエリアに立地している特性を生かし、川と調和した機能やデザインを持たせるなど、独立系デベロッパーとして斬新さを盛り込もうとしていることを売り込んでいた。
アライプロバンスのブース
(藤原秀行)