【独自取材】三菱地所、“個人向け倉庫”サービス成長を後押し

【独自取材】三菱地所、“個人向け倉庫”サービス成長を後押し

サービス運営のサマリーと連携、マンション居住者らに利用働き掛け

三菱地所が不動産以外の新事業創出支援の一環として、個人の品物を一時的に預かる「収納サービス」(セルフストレージ)の分野に着目している。2018年12月に独自のサービスを展開しているスタートアップ企業のサマリー(東京)の第三者割当増資を引き受け、9・4億円を出資。人員も同社に派遣している。

“個人向け倉庫”ともいえる収納サービスは利用が増えており、その中でもサマリーは使い勝手の良さなどから注目度が高い。三菱地所は不動産事業で築いてきた豊富な顧客ネットワークなどを生かし、同社のサービス普及を後押し。自社が開発したマンションの居住者や商業施設のユーザーらにも利用を働き掛け、不動産事業の付加価値向上にもつなげていきたい考えだ。

寺田倉庫と組み物流効率化で低料金実現

サマリーは2010年4月創業。三菱地所のほか、住友商事や寺田倉庫が主要株主を務めている。中核事業として、収納サービス「サマリーポケット」を展開。保管しておきたい衣類や書籍などを専用の箱に詰めて送ると温度・湿度管理を施している倉庫で管理、好きなタイミングで出し入れできるのが特徴だ。

初期費用がなく価格は1箱当たり月額250円から(取り出しは1回につき1箱当たり800円から)と利用しやすい水準に抑えていることや、自分で荷物を運び込むトランクルームと異なり自宅に居ながら発送できること、スマートフォンやパソコンから気軽にサービスを申し込めることなどが好評を博し、スマホアプリをダウンロードしたユーザー数は累計で約10万と、順調に利用者を獲得している。


サマリーポケット専用の段ボール箱(ラージサイズ)

発送イメージ
(いずれもサマリー提供)

寺田倉庫のノウハウを生かし、郊外に立地している賃料が安めの倉庫でサマリーの品物を預かり、箱も規格化して荷姿を統一し保管効率を高めるなど、物流の面で効率化を徹底、利用しやすい料金水準を実現している。

三菱地所の生活産業不動産業務企画部からサマリーに出向している永関元紀氏は「調査するとお使いいただけた方の8割以上がサービスに満足されている。一度預けられると長期間お使いになる方が多い」とユーザーの反応に手ごたえを感じている。

都心部ではマンション価格の上昇で入居者が住戸の面積を抑える傾向が出ていることもあって、自宅外に収納スペースを確保する動きが見られ、サマリーや三菱地所はサマリーポケットがそうした人たちの受け皿になると期待する。

関係者の間では収納サービスの市場規模が16年の約650億円から20年には2割強増え約820億円になるとの予測もあり、永関氏は「今後も発展が期待される事業分野」と展望。サマリーポケットは小型、他のトランクルームなどは大型の荷物といったように、成長市場の中ですみ分けることが可能とみている。

「安心して自宅外に荷物預ける」文化醸成目指す

昨年12月にはソフトバンク系のスタートアップ企業MagicalMove(マジカルムーブ、東京)が提供している早朝・深夜の宅配サービス「Scatch!(スキャッチ!)」を都心10区で試験的に導入(現在は19区に拡大)。朝の6~10時や夜の9~12時に1時間単位で、午前10時~午後2時は2時間単位で集荷時間を指定できるようにするなど、利便性向上にトライしている。

同時に、他社が運営しているさまざまなサービスや施設のユーザーにサマリーポケットをアピール、連携先は約70社に上るという。三菱地所出資前の昨年6月には顧客の会員組織「三菱地所のレジデンスクラブ」へ優待価格で利用できるプランを発表するなど、同社も側面支援に余念がない。

永関氏は課題として、サービスの認知度向上を指摘。「日本では収納サービス利用が広がっているとはいえ、まだまだ自宅の外に所有物を保管することに抵抗を感じている人が多いのではないか。安心して荷物を預けていただけるような文化を醸成できるよう、環境を整えていきたい」と意気込む。

サマリーは今後の展開として、SNSサービス「Sumally(サマリー)」を手掛けている経験を駆使し、個人間(CtoC)の品物売買やシェアリングといった領域への参入を検討。さらに、所有物・資産価値の可視化をサポートすることも視野に入れているという。

永関氏は「例えば、ユーザーがお持ちの資産価値が今いったいどれくらいあるのかをマーケットの取引動向などから分析、提示することが可能になるかもしれない」との見方を示す。サマリーポケットの認知度を高めつつ、“個人向け倉庫”のマーケット発展に注力していこうと今後も知恵を絞る構えだ。三菱地所が今後講じるサポートが注目されている。


サマリーポケットの展望を語る永関氏

(藤原秀行)

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