プロロジス・モガダムCEO、物流施設開発でインド再進出を表明

プロロジス・モガダムCEO、物流施設開発でインド再進出を表明

日本法人・山田氏は2024年問題対応で「中継拠点」促進

プロロジスのハミード・モガダムCEO(最高経営責任者)と日本法人の山田御酒会長兼CEOは10月25日、東京都内で記者会見した。

新型コロナウイルス感染症拡大の影響で4年ぶりの来日となったモガダム氏は、コロナ禍の影響でeコマースの利用が引き続き伸びていることや、サプライチェーンの混乱を受けて企業が在庫を厚めに持つようになったことなどから、今後も欧米や日本などの主要市場で先進的な物流施設の需要が見込まれると展望。グローバルでは経済成長が続くインドに再進出する方針を明らかにした。

また、物流施設のテナント企業が抱えるサプライチェーン運営効率化や脱炭素、人材育成などの諸課題解決を支える姿勢を強調。商用車両の電動化へ2040年までに充電インフラ整備へトータルで約209兆円を投じる考えを示した。

山田氏は、トラックドライバーの長時間労働規制強化に伴う物流現場の混乱が懸念されている「2024年問題」への対応として、長距離輸送の中継地点となるエリアで物流施設開発に注力する構想を表明。既に盛岡、中部の東海、岡山の3件の開発を打ち出しているのに加え、今後は静岡や九州、北海道、日本海側の各エリアで開発を検討していることも明かした。


会見後の撮影に応じるモガダム氏と山田氏


会見するモガダム氏

マルチ型の冷凍・冷蔵倉庫、引き続きトライ

モガダム氏は、事業開始から2023年で40周年を迎えることに関連し、今年9月末時点で世界19カ国に5559棟・約1億1400万㎡の物流施設を運営し、賃借している企業は約6700に及ぶなど、積み上げてきた成果をアピールした。

米国の状況について、特に2020~23年はコロナ禍でECの需要が増加、EC化率が3割弱に迫るまでになり、さらに今後5年間にわたって毎年平均1%増加する見込みと説明。ECでは多品種の商品を保管する必要があることや、返品対応も重要なことなどから、従来型店舗と比較して約3倍の物流施設面積を使用しているとあらためて指摘。コロナ禍のサプライチェーンの混乱を受けて企業の在庫保管率が上昇傾向にある点や、サプライチェーン全体に占める施設賃料のコストが低い点を踏まえ、「今後長期にわたって物流不動産需要の追い風になる」と期待を示した。

物流施設のテナント企業が抱えている課題を「運営」「エネルギーとサステナビリティ」「モビリティ」「雇用と自動化」の4つの領域に分類し解決をサポートしていくサービス「プロロジス・エッセンシャルズ」を拡大させていく方針を強調。テナントの商用車両のEV化を後押しするため、充電設備の整備を加速させる姿勢をアピールした。

併せて、施設の建設・運営時の温室効果ガス排出削減、物流業界への就労促進のための職業訓練プログラム継続なども図っていく考えを表明した。

グローバル展開では、インドについて「実は2006年ごろに参入の検討をしたが、労働集約型の市場で州を移動するだけで国内の関税が掛かるため資材の運び込みなどが困難な上、事務手続きがなかなか進まないなどの理由で保留にしていた」と説明。しかし、その2年後には現地の大手不動産開発会社と手を組み、子会社の設立に踏み切ったことに言及し、「来年にはわれわれも物件の開発を進める予定だ。インドでの物流施設の展開は非常に楽しみにしている」と述べた。


会見場

山田氏は、物流施設開発に多くの企業が参入し、供給量も過去最大級となっていることについて「(プロロジスが開発する物流施設の)希少性は依然高いと考えており、老朽化施設の更新需要や全世界に比べてEC化率の伸長余地が高いことから、国内の需要は底堅い」と前向きな見方を示した。

今後の開発の方向性として、都市部で保管・入出荷以外の機能も持たせることが可能な「プロロジスアーバンシリーズ」の物流施設を引き続き開発していく考えを明らかにし、現時点で2~3棟を計画していると設営。2024年問題の関連で、長距離輸送の中継拠点となるエリアでの開発を推進するスタンスを明示した。

一例として、今年11月に岩手県矢巾町で竣工予定の「プロロジスパーク盛岡」を引用。東北エリアの配送シミュレーションでは、在庫センターがある仙台市と配送センターがある青森市をつなぐ場合の走行距離は片道180kmとなり1人のドライバーでは1日で往復できないが、プロロジスパーク盛岡を配置することで中継地点を経由できるため1人のドライバーが1日で往復可能になると説明した。

かねて表明している、マルチテナント型の冷凍・冷蔵倉庫についても「BTS型より展開は非常に難しいが今後もあきらめることはない」と語り、引き続き開発機会を探る意向を見せた。

建設コストの上昇が続いていることに対しては、発注時期や建設方法の見直しでコスト高騰と人材不足を補えるよう建設業界と協議していくとの従来姿勢をあらためてPR。テナント企業などへのコンサルティングサービスは自動化機器の導入や倉庫の立ち上げ支援の実績が22年は20年に上ったと説明。「プロロジスを身近に感じてもらうことで今後の縁を期待する」と語り、今後も注力していくことを明言した。


山田氏

(写真・中島祐 本文・安藤照乃、藤原秀行)

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