「CLO(最高ロジスティクス責任者)はコストコントローラーにあらず、企業の持続的成長の成否左右する機能」

「CLO(最高ロジスティクス責任者)はコストコントローラーにあらず、企業の持続的成長の成否左右する機能」

高度物流人材シンポで官民のパネリストが指摘

国土交通、経済産業の両省は3月6日、サプライチェーンの高度な管理が可能な人材の育成を図るため「第4回高度物流人材シンポジウム」を開催した。

パネルディスカッションの中で、政府が「2024年問題」の対策として一定規模以上の荷主企業に荷待ち時間の短縮などに取り組む「物流統括管理者」の配置を義務化しようとしていることを受け、官民の登壇者がCLO(最高ロジスティクス責任者)設置について言及。国交省の長井総和官房審議官(物流・自動車局担当)は「今回のいろんな施策の中でも一番大事な柱の1つではないか。いろんな意味で物流を変えるいいきっかけになっていただければ、と思う」と意義を強調した。

三菱食品の田村幸士取締役常務執行役員SCM統括は「物流費のコントロールではなくて、企業の持続的な成長の成否を左右する機能だということを(経営層に)どう理解してもらうかが重要」と指摘。花王の田坂晃一SCM部門デジタルイノベーションプロジェクト チーフデータサイエンティストは「サプライチェーン全体でいかに関係している人を巻き込んで、設計していくかということだと思う」と語り、企業内の主要部門と連携していくのが重要な任務だとの見解を示した。

(シンポジウム全体の概要はあらためて掲載する予定)


(オンライン中継画面をキャプチャー)

物流の可視化からまず始める必要あり

政府は2月13日の閣議で、「2024年問題」への対応策などを盛り込んだ物流総合効率化法(物効法)の改正案を決定。この中で、荷物の取扱量が一定規模以上の荷主や物流事業者を「特定事業者」に指定し、荷待ち・荷役時間の短縮や積載率向上のための具体策を列挙した中長期的な計画を策定、監督官庁へ提出するとともに、定期的に進捗状況などを報告するよう義務付けることを盛り込んでいる。

併せて、特定事業者の荷主には、計画を進める上で中心となり企業全体を率いる「物流統括管理者」を選任するよう義務化する方針だ。欧米で普及が進んでいるCLOの配置を後押ししていく狙いがある。

長井氏は「物流の負荷軽減や効率化を今やろうとしているが、そのためにはやはり物流の担当者だけではなく、営業や製造、調達といった部門が協働して取り組まないといけない。横断的に見られるのは経営層、意思決定できる人だから、そういうレベルできちんと物流に対する認識を持っていただいた上で、全社的対応をしていただかないといけないことが背景としてはある」と物流統括責任者配置の狙いを説明。

CLOを担う立場の想定として「物流部門のトップではなく、経営のトップランカーの1人。経営の戦略を立てて実行していく中で物流をどう位置付けていくのか、きちんと考えていただきたい。それがまさにゼロサムの短期的なものじゃなくて、全体の最適化につながってくるだろうという考え方」と解説した。

また、「全体最適と言った時には自社の、他社部門との協働だけではなくて、業界全体、さらには業界を超えたいろんな効率化、取り組みにも高いランカーであれば、より積極的に取り組みを進めていただけると思っている。物流を担当すれば、そういうふうになるんだと見えれば、若い人のキャリアパスにもいい影響が及ぶのかなと思っている」と強調した。

田村氏は「すごく難しい宿題をいただいていると思っている。ちゃんと経営トップがまずこの(物流統括責任者を置く)趣旨をちゃんと理解しなきゃいけないのが一番大きい。荷主企業の多くは物流事業者に仕事を丸投げしており、特に中小のメーカーさんは物流の専門家組織まで置ける余裕がなかったりする。そうすると荷主側はコストが昨年より高いか安いか、ということにしか興味がない会社も少なからずあると思う」と指摘。

「荷主も今、自分たちの商品を積んだトラックがいったいどこをどう走っていて、その積載率がどれくらいで、CO2排出がどれくらいなのか、倉庫内であればどれだけの数の人間が、どういう作業を、どれくらい手間をかけて、自社の貨物を扱ってくれているの、こういうことを認識・把握しなければいけない。たぶん物流管理統括者はそれをまず把握するところが出発点だが、できている会社はそんなにないんじゃないか。物流の可視化が、荷主が荷主の責務を果たすために、最初にやらなければいけないことだと思う」との見方を示した。

田坂氏も物流の現状の可視化が重要と田村氏に賛同した上で、「現場でも高度物流人材がいると思うので、そういう人たちと一緒になって活動する輪を作るというところで本当にCLOがうまく機能するかどうか変わってくる。人材育成とか、それぞれの職の階層で、しっかりとトライすることを継続的にやっていって、最初はスモール(スタート)でもいいと思うが、少しずつレベルを上げていく活動をしなければいけない」と述べ、企業内のネットワーク作りを進める必要性を指摘した。

(藤原秀行)

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